ユーロ2008でグループリーグ敗退という期待外れの結果に終わったフランスだが、レイモン・ドメネク監督の続投が3日、フランス・サッカー連盟(FFF)の理事会で決まった。

 フランスが敗退した直後は、理事会メンバーの間でも、2010年まで契約の残るドメネク監督の続投について賛否が分かれたが、2週間の「冷却期間」を経て、「契約の遵守」という「道義的」な面を重んじたエスカレットFFF会長の主張にメンバー全員が説得された形となった。理事会に出席した議決権をもつ19人のうち、賛成が18人、わずか1人が棄権という結果(採決は挙手)に表れている。

 翌日のレキップ紙は、反対者ゼロという結果について、「当初の主張を貫く勇気が欠けていたか、連盟の内部危機を恐れたか、おそらくそのどちらかだろう」と分析している。

 意見が分かれなかった背景には、プラティニUEFA会長(FFF副会長を兼任。今回の議決権をもつ理事のひとりだが欠席した)と、代表のテクニカルディレクターを務めるジェラール・ウリエ氏(フランス代表、リバプール、リヨンの監督を歴任。議決権はもたない)の意見が大きく作用した模様だ。唯一、賛成に手を挙げず棄権した理事は、「反対することもできたが、ウリエ氏の介入で思いとどまった」としている。

 今回の留任には、主に5つの条件が付けられた。これもウリエ氏の意見が大きく取り入れられたと見られる。1つは、2010年W杯に向けた監督の諮問機関とも言うべき「クラブ・フランス2010」の創設。これはリーグやクラブの代表者、あるいはサッカー界外部から招く識者ら8〜9人で構成される。監督のみに決定権を委ねない方針となる。

 また2つめとして、プログラムや運営、ロジスティックを統括する事務局長が任命される。とくに先のユーロでは、監督の方針で練習を非公開としたことが報道陣から厳しく非難された。ここでも監督ひとりに権限が集中しないよう配慮されている。

 さらに、さまざなま“挑発的”な発言で波紋を呼んだドメネク監督に「フランス代表のイメージ悪化」につながった責任の一端があるとして、発言に注意するよう勧告がなされた。監督だけでなく選手にもこの注意が与えられる。

 プレーの面でも注文が付けられた。ドメネク監督には、これまでの守備重視の方針を転換し、攻撃の強化が求められた。

 以上の4つに加え、FFF会長は、今後3試合の結果次第でドメネク監督との契約を見直す可能性がある、ということも明言した。なお、ドメネク監督が任命したテクニカル・スタッフの中には、解任される者が出てくる可能性もある。

 次期監督の有力候補に挙げられながら、結局起用を見送られたディディエ・デシャン氏(元フランス代表主将、前ユベントス監督)は、レキップ紙にコメントを求められ、「役員が決定したこと。何も言うことはない」と携帯電話のメッセージで答えたのみ。しかし今回の“敗者”は、デシャン氏ばかりではない。続投と引き替えに、前述の条件すべてを受け入れざるを得なかったドメネク監督も“勝者”とは言えまい。最大の“勝者”は、メンツを保ったエスカレット会長の陰で、会長を上回る影響力を示したウリエ氏だと見て間違いないだろう。