日本では行列が絶えず、写真を撮りたくなる店としてすっかり定着しているスターバックス。その日本事業が、いま売却の検討対象になっているという。利益は数年連続で過去最高を更新し続けているというのに、なぜ手放すのか。好調な事業をあえて売りに出すという話には、どこか引っかかるものがある。
 
この話題を取り上げたのが、脱・税理士の菅原氏だ。絶好調の日本事業がなぜ売却されようとしているのか、その裏側にあるアメリカ本社の事情とあわせて読み解いていく。
 
世界全体で見渡すと、店舗の多くはアメリカに集中している。一方で日本の店舗数が占める割合はごくわずかだ。それでも売上への貢献度は店舗数の比率を大きく上回り、稼ぎ頭と呼んで差し支えない存在になっている。ここまで結果を出している事業を、なぜ売りに出すのか。菅原氏が示す答えは、身構えていた分だけ拍子抜けするほど単純な一言に集約されていく。
 
背景にあるのは、アメリカ本国や中国市場での苦戦だ。低価格帯の競合に押される地域もあれば、店内の混雑や労働問題に揺れる地域もある。世界のスターバックスが足踏みするなか、日本だけが別物のように独自の進化を遂げてきた。その理由として、丁寧な接客や「サードプレイス」という発想、さらには日本人ならではのある心理にまで、菅原氏は一歩ずつ分け入っていく。日本のスターバックスが今の形にたどり着くまでには、ある日本企業が育て上げてきた知られざる歩みもあった。
 
では、数千億円規模ともいわれる事業を、いったい誰が買うのか。過去に世間を驚かせた大型買収の事例と照らし合わせながら、買い手の現実味が冷静に語られる。加えて、アメリカ発祥でありながら日本で独自に花開いたブランドの数々が、売却後の行方を占う手がかりとして次々に並べられていく。見慣れたあのブランドの名前も、そこに含まれているかもしれない。
 
好調な事業をあえて手放すという一見不可解な判断。その奥には、規模が大きい企業ほど避けて通れないある経営の鉄則が潜んでいる。その正体に触れたとき、毎朝立ち寄るあの店の風景が、これまでとは少し違って見えてくるかもしれない。