練馬、世田谷、杉並もじつは「安心できない」…首都直下地震で「ホントはヤバい」東京・神奈川・埼玉の「街の実名」

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「災害に弱い街」はここにある

今年の元日に発生した能登半島地震では、半島の先端に位置する石川県珠洲市の沿岸全域を津波が襲った。だが、市の南部では海岸から300〜400mもの広範囲が浸水したのに対し、北部ではほとんど津波の被害がなかった。

両者の違いは「海抜」の差だ。能登半島北岸地域は、南岸よりも標高が高い。さらに北岸が地震動で隆起したため、津波が到達しなかった。

能登半島地震を上回る規模の首都直下地震と、南海トラフ地震が向こう30年で起きる確率は、どちらも70〜80%とされる。そのとき、この海抜こそが街の運命を分けることになる。

「どちらの地震でも津波が直撃する危険が高い街は、神奈川県鎌倉市、茅ヶ崎市、平塚市です。これらの市街地は太平洋沿岸部にあり、海抜10mを下回るエリアが多い。特に鎌倉は、川に沿って形成された狭い扇状地に街が広がっているため、波が侵入したときに逃げ道がありません。

室町時代に発生した明応地震では、高徳院の大仏の近くまで津波が来たという記録も残されています」(不動産・相続コンサルタントで財営コンサルティング代表の山崎隆氏)

遠くない未来に、また日本が大災害に見舞われるのは間違いない。命を守るには、自分が住む土地の「強さ」を知る必要がある。本誌は今回、地盤解析専門企業「地盤ネット」の協力のもと、通常は法人向けに提供している全国の「地盤が弱い地域」のデータを特別に分析することができた。

まずは、いつ大地震に襲われてもおかしくない東京だ。同社の提供するハザードマップでは、皇居の東側や南部沿岸のほぼ全域が「危険」を示す赤色で塗られている。具体的には大田区、港区、中央区、江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区だ。

「これらの地域は地盤が緩いため揺れやすく、低地のため浸水の危険も大きい。特に隅田川以東は広範囲が海抜0メートルとなっています」(地盤ネット株式会社副社長・技術管掌の伊東洋一氏)

東京で地盤が弱い場所の「実名」

海から遠い内陸であれば大丈夫―と考えるのは早計だ。江戸時代、東京の大部分は湿地帯だった。加えて、今は陸地となっている場所にも、かつて川が通っていて地盤の弱いところが点在している。

「じつは、徳川家康の時代まで利根川は江戸を通って東京湾へ注いでいました。現在、葛飾区や江戸川区を流れる中川が旧利根川ですから、中川沿いの地域は特に注意が必要です」(前出・山崎氏)

都内だけでなく、埼玉県の八潮市越谷市も中川の流域だ。特に越谷は元荒川や新方川などの河川も流れており、地盤が不安定とされる。

一方、東京23区の西側、特に練馬区杉並区世田谷区は「地盤が強い」とされているが、前出の伊東氏は「油断してはいけない」と警告する。

「一見して地盤の強そうな住宅地でも、その下にはかつての川や谷筋が血管のように通っています。そのようなところに盛り土や埋め土をした場所は、地震で揺れやすく崩れやすいのです」

前述した「地盤ネット」のマップでは、練馬区の石神井川沿い、杉並区の妙正寺川・善福寺川・神田川沿い、かつて川が流れていた世田谷区の経堂八幡山などが危険地帯となっている。

首都圏の人気エリアでも、とりわけ注意が必要なのが多摩川沿いの街だ。川崎市中原区武蔵小杉駅周辺や、その上流側対岸に位置する世田谷区の二子玉川が該当する。これらの地域では、'19年秋の豪雨でタワーマンションが浸水し大混乱に陥ったことが記憶に新しい。

「神奈川県は全域で地形の高低差が大きく、谷筋が多い特徴があります。さらに、その上に堆積した土も柔らかく不安定なのです」(前出・伊東氏)

後編記事【30mの超巨大津波が来る…!?「南海トラフ大地震」で明暗が分かれる、中部・関西「安全な街」「危険な街」の実名】ヘ続く。

「週刊現代」2024年7月13日号より

30mの超巨大津波が来る…!?「南海トラフ大地震」で明暗が分かれる、中部・関西「安全な街」「危険な街」の実名