「小池知事」に敗れても問題なし…都知事選に出馬表明した「蓮舫氏」に用意されている「保険」の内容

写真拡大 (全3枚)

6月18日に東京都知事選へのマニフェストをぶつけ合った小池百合子知事(71)と蓮舫氏(56)。3期目の当選を目指す小池知事は「東京大改革3.0」を掲げ、午前10時開始のオンライン会見でこう述べた。

「この度の東京都知事選に出馬いたします。これからも都民のため、都民とともに、都政を爆速で進めます」

それに対し、都知事選初挑戦となる蓮舫氏は、同日の午後2時に赤坂の会議室で「あなたと次の東京へ。7つの約束」と掲げ、こう語った。

「本物の徹底した行財政改革を行います。小池さんも予算の見える化はしてきました。前進しました。率直に評価します。でも私ならもっともっとできます。どの事業を見直したのかはブラックボックスです。どういう行革か財源根拠がわからない。私は徹底して見直し、予算を若者支援に回します」

共にキャスターから政界へと駒を進め、抜群の知名度を誇り、今回の東京都知事選は小池知事、蓮舫両氏の一騎打ちになると目されている。蓮舫氏が小池知事の会見に自身の会見をぶつけ続けたのも、そう考えているからだろう。

出馬宣言から5日後の6月1日に蓮舫氏が都庁前で行った生活困窮者への食糧支援の視察でもその姿勢は見て取れた。

2年間で約48億円もの税金が投入される「プロジェクションマッピング」が行われる場所で、763人の生活困窮者が集まったところを視察に来たのだ。

「都庁の足元で食料支援を受ける方がいる。ここに視点が向いていないのは本当に不思議だ」

視察を終えた蓮舫氏はそう語り、こうも述べた。

「数の多さに驚きました。700人を超えていると聞いたので。普通に街にいる身なりの人たち、子連れもいる。高齢者ばかりでなく、若い人たち、子育て世帯の間で生活困窮者が増えているというのは本当に衝撃でした。

プロジェクションマッピングは365日毎日照らすほうがいいのか、期間限定で集中したほうが観光インバウンドの効果が高いんじゃないか。予算を削減できるなら余剰を足りない部分に付け足していく。それが行革。私が行ってきた行革は切る、壊すだけでなく、予算の付替え、振り分け。知事になったらすぐに考えていきたい」

民主党政権時代、事業仕分けで話題となり、“必殺仕分け人”と呼ばれた頃を彷彿させる言動をみせた。

知名度のある蓮舫氏は都知事選への出馬が何度も取りざたされてきた。今回も当初は蓮舫氏の出馬はない、と目されていた。そんななか、今回出馬することをうけて、都幹部職員はこう語る。

「出馬は正直驚きました。検討はしているけれど、首を縦に振らなかったと聞いていました。4月の衆院3補選での全勝、静岡県知事選、目黒区の都議補選で立憲民主党の公認または推薦候補の当選が続いたことに勢いを感じたのでしょう。

ただ、庁内では、軽んじられている雰囲気があります。『東京が2番になっちゃうよ』『うちの部署が仕分けられる』と面白おかしく扱われています。5月29日も都議会各会派への挨拶回りとして、議員控室に来ていましたが、共産党の控室で大ハシャギし、呆れられていました。庁内で蓮舫さんを推す声はほぼなく、勝つとは思われていません」

蓮舫氏の直近の選挙は’22年の参院選東京選挙区で4位の67万票。初当選した’04年の約92万票、’10年の約171万票、’16年の約112万票と比べると大幅に落ち込んでいる。

都知事選は現職が圧倒的に有利で、これまで現職で敗れた候補はいない。さらに小池氏は抜群の知名度を誇り、4年前の選挙で366万票を集め、得票歴代2位の記録を持つ。苦しい戦いが予想される蓮舫氏だが、敗れた際の“保険”が用意されているという。立憲民主党の中堅議員が語る。

「ジリ貧の参議院議員から衆院への鞍替えを考えている。26区が濃厚で、その下準備だとも。知事選への出馬で名前は浸透するし、衆院選への弾みとなる。大負けしなければいいだけで、小池さんにはカイロ大学卒業疑惑が再燃しているので番狂わせもあるかもしれない」

「次の就職先」と目される東京26区は選挙区定数「10増10減」に伴いかつての3区が新3区と26区に分かれ、新設された選挙区だ。

旧3区で8期の実績がある松原仁元拉致問題担当相(67)の出馬意欲は満々だ。松原氏は立憲民主党として26区の支部長を熱望していたが、新3区を提示され、離党騒動にまで発展した。

「26区が本命で、都知事選でどれくらい票が出るかわかるので世論調査の意味もあるでしょう。対抗として1区の出馬も考えられている。海江田万里衆院副議長(75)は引退含みで、その後継を狙う。維新の会の音喜多駿参議院議員(40)が鞍替えを表明していますが、蹴散らせるとみているようです」(同議員)

一方の小池知事は焦りが見え隠れする。これまで自身で退路を断ち、“身を切る姿”を見せ、政局を仕掛け、“敵役”に対峙することで注目を浴びてきた。

だが、今回は蓮舫氏の電撃的な出馬宣言で機先を制されてしまい、「自民党に寄り添っている」と評され、小池知事が対峙すべき敵役にされかねない。都民ファーストの会所属の都議がこう語る。

「都議会開会日2日前の5月28日、都内の区市町村長の有志52人が3選を目指して出馬するように要請に来ました。それを受ける形で翌29日の都議会開会日の所信表明で出馬宣言のはずだったんです。それなのに、蓮舫さんが前日の27日に出馬会見をした。新宿区長のスケジュールを抑えてあるから28日は動かせないことを逆手に取られて、議会開会日の出馬宣言を急遽辞めざるを得なかった。その後も蓮舫さんが小池さんの会見や視察に抱きつくかのように会見をかぶせ、平静を装いつつも苛立っています」

小池氏には学歴詐称疑惑が再燃している。マニフェスト発表同日の16日、かつての側近で元東京都特別顧問の小島敏郎氏(75)が刑事告発した旨の会見を行った。

小池氏は最終学歴の表記がネックとなっている。仮に書かなければ、なぜ書かないのか、という意見が出てくることは明らかだ。

「まともな人がいないから」

6月3日、元迷惑系YouTuberのへずまりゅう氏(33)がX(旧ツイッター)でそう出馬宣言を行った。SNS上で「お前が言うな」とツッコミが入るも、まるで的外れな指摘ではないのかもしれない。

都知事選には小池知事と蓮舫氏の他にも、元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)や広島県安芸高田市の石丸伸二市長(41)、タレントの清水国明氏(73)など20人以上が立候補を表明している。

小池知事と蓮舫氏の対決を軸に、選挙戦は間もなくはじまろうとしている。

取材・文・PHOTO:岩崎 大輔