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『ミッション:インポッシブル』シリーズにおいて、主演のトム・クルーズは命懸けのスタントを幾度にわたってこなしてきた。その度にスタッフたちは肝を冷やしてきたわけだが、シリーズ初期作である『ミッション:インポッシブル2』(2000)では、とあるスタントをめぐってトムと監督による攻防戦が繰り広げられていた。

そのスタントというのが、劇中冒頭に登場する崖でのフリークライミング。このシーン、実はトム自らが行っているものなのだ。作品のファンにはよく知られたこの逸話、実施までにはかなりの紆余曲折があった。2023年、ジョン・ウー監督は米とのインタビューで同スタントシーンの壮絶な裏側を振り返っている。

「私たちには、3人のスタントダブルがいました。全員が優れたクライマーでした。私はこう言いました。“よし、ここからあそこまでのジャンプは一本のケーブルだけでやろう”と。そしたらトムが“いやいや、僕にやらせてください”って言うんです。“なぜだ?危険すぎるからダメだ。保障がないんだ、失敗したらどうする”と言いましたよ。」

ウー監督の必死の説得に、トムはこう返したという。「ダメだ、ジョン。僕を信じてくれ。僕ならできる」。監督によれば、その時のトムは「目に涙を浮かべながら懇願する」ほどだったとか。

最終的に根負けしたのは監督のほうだった。「彼はスタントダブルなしでやってのけましたよ」とウー監督。「彼はこうも言いました。“スタントだったら、観客は気づいてしまう。体の動きが僕のとは違うんです。後ろからでも、僕じゃないと気づくでしょう”って」。

監督は、映画が公開された2000年にもトムとの攻防戦について。この時のウー監督はより一層の臨場感をもって当時を振り返っている。

「彼がやりたがっていたことに、私はすごく怒っていました。彼を止めようとしたんですよ。でも止めきれなかった。怖すぎて汗かきまくりでした。撮影の時なんて、モニターを見れませんでしたよ。」

思わず目を逸らしてしまったという監督だが、これがまた皮肉である。なぜなら、一発撮りに失敗してしまったというのだ。「フォーカス具合に問題があったんです。だから何度も撮り直さなければいけませんでした。でもトムはこう言ってくれました。“ジョン、僕は大丈夫だから心配しないで。もう一回やりたいです”って」。

同作の後も、6分間の息止め潜水アクションや高速で離陸する飛行機に身一つでしがみつくアクション、ドバイにある世界一高いビルでの宙吊りアクションなど、度肝を抜くスタントに挑んできたトム。その命懸けの姿勢は変わらず、直近の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023)では、崖に向かってバイクで突っ込み、そのままダイブする超危険スタントを8度もやってのけた。

現在、トムは最新作『ミッション:インポッシブル8』の撮影に挑んでいるところ。出演者のシェー・ウィガムによれば、劇中ではトムによる衝撃的なシーンがというが、今度はいったいどんなスタントに挑戦しているというのか……。

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