あの時、彼を選んでいれば…。20代を棒に振った女が立ち上がる「お姫様のリベンジ」全話総集編
誰にだって、失敗はある。
そして誰にだって、やり直す権利がある。
過去に自分が下した、愚かな恋の選択だとしても。
高校時代、学校の“お姫様”としてチヤホヤされてきた杏奈は、当時1番人気の男子を恋人にした。
29歳という大人になった今、当時見向きもしなかった男子たちが『ハイスペ男』に成長しているのを目の当たりにし…。
「男性選びをやりなおしたい」
そんなお姫様の挑戦は、果たして完遂されるのか──。
第1話:高校の同窓会。さえなかった男たちのハイスペ化を見た29歳女は…
「これ、名刺。もしよかったら今度飲もうよ」
「ありがとう。ぜひ誘って。私、彼氏と別れたばかりだから…」
「え、杏奈さん、今フリーなの?ということはチャンス?」
29歳となった今も変わらぬ、同級生たちの色めき立った反応。杏奈はその、変わることのない自身の地位に酔いしれる。
変化したのは…男子生徒たちの現在地だけだ。
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第2話:女は、口説かれる気満々で行った2軒目のバーなのに…。男のアプローチが失速した理由
高校卒業後、京都の同志社大学へ進学した高濱とは、二人きりで話すのは初めてだ。
高濱はほとんどの高校時代の同級生とは疎遠になったけれど、直人とは地元に帰るたびに会っており、“カノジョ”の話は聞いていたという。
「杏奈さんとサシで飲めるなんて、あの頃の自分では考えられないよ」
カウンターの席につくなり、高濱は照れくさそうに頭をかく。その笑顔で、杏奈は完全に彼の記憶をよみがえらせた。目立つ直人の隣で、穏やかに佇む当時の彼の姿を…。
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第3話:食べ終わったら即解散…。カウンター鮨デートで、29歳美女がやらかしてしまったこととは?
― 彼こそ、高濱くんとの恋の練習台として、デートするのにピッタリの相手かもしれない。
だが、“ひろたん”という表示名にはピンとこなかった。アイコンは、グランドキャニオン辺りの赤土大地に大の字で立つ男だ。拡大しても、蟻のような小ささで、顔の判別がつかない。
「まぁ、いいか。下手な先入観が入るよりはね」
海外の恋愛ドラマで見たブラインドデートなるものや、お見合いやアプリでの出会いのようで、ドキドキ感がある。知っている人のはずなのに。
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第4話:「はい、これ○○代」食事会で盛り上げ役になった29歳女子に、男が差し出したお金の意味
デートではなく、食事会の誘いということに疑問はあったが、きっと最初から1対1だと照れくさいのだろう…と自身を納得させる。恋愛テクニックにまったく自信がない杏奈としても、大人数の方が安心だ。
それになにより、場所に指定されたのは“会員制のバー”。会員制、という響きが、杏奈の好奇心をくすぐった。このような秘密めいた雰囲気の場所は、芸能人やセレブだけが行くものと思い込んでいた。もちろん、訪れるのは初めてだった。
― 内装も暗くておしゃれ。さすが、業界人…。
暗証番号を押して店に入り、薄暗い照明の中を須賀の背中を頼りに歩く。たどり着いたのは店内でも奥まった位置にある、『VIP』と掲げられた部屋だった。
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第5話:「俺みたいな男、やめた方がいいよ」美女のお泊まり希望を断った男が、裏で密かにやっていたこと
もしも松崎と交際したら、きっと自分の価値まで高めてくれるだろう。それに…。下世話な話にはなるが、松崎の年俸は、これまでデートした男性たちの何十倍もあるはずだ。
― 「とにかく、次よ、次!」
ふと、そんな麻沙美の声が聞こえたような気がした。杏奈の心に火が灯る。
男性のせいで生じた心のモヤモヤは、男性との良い経験で払拭するしかないのかもしれない。そう自分を鼓舞した杏奈は、無事撮影を終えたその夜、松崎にSNSからメッセージを送った。
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第6話:商社マンとの食事会。29歳女が男性に会った瞬間「来なきゃよかった」と思ったワケ
― 全員、どうなのかな…。
1人目は、明らかに40歳オーバーだ。下手したらアラフィフかもしれない。2人目は、高校時代のタンクのような…すなわち、いわゆる巨漢だ。
3人目は、アラフィフでも巨漢でもないけれど。細身でなで肩の、見るからに冴えないメガネ男子…。
皆、会社帰りなのだろうか。揃って同じようなグレーのスーツを着ているが、それでも溢れ出る“個性”に、杏奈は言葉を失った。
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第7話:年上の男と初デート。会計を「割り勘ね」と言われた29歳女が放った意外な一言とは
「じゃあ、アキくん。そろそろお会計してもらいましょうか」
食事が終わるまで、しばらく仕事の話に付き合ったが、もう限界だった。お酒が空になったのをきっかけに、杏奈はお開きを切り出した。
しかし、店員からお会計ホルダーを受け取った白倉は、耳を疑うような言葉を杏奈に告げるのだった。
「2人で13,620円だから、1人6,810円だね」
「はい?」
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第8話:29歳で、突然モテなくなった美女。狙っていた男に「君のここがダメ」と指摘された欠点とは
カップルたちでにぎわうダイニングバーで、ひとり呑む杏奈に声をかけた男性は…高濱だった。
― そういえばこのお店、高濱くんがオーナーだと言っていたお店だ…。
今まで何度か来店した際も、高濱の姿を見かけたことはなかった。高濱の店だということは杏奈の頭からはすっぽり抜け落ちており、だから、今夜のこの再会は狙ったわけでなく、本当に偶然だった。
「杏奈さん、ひとり?今ちょうど手が空いたところなんだ。よければ隣、いいかな?」
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第9話:元カレをSNSでこっそり検索。女が驚愕した、彼が載せていた“ある画像”とは
― 私ったら、30近くにもなって何しているんだろう。こんなんじゃ幸せになんかなれないよ…。
温かくて甘いラテを口にし、心身共に落ち着かせる。それでも胸の中の空虚は埋まらなかった。そんな時、麻沙美からのメッセージ通知がスマホにポップアップしてきた。
「あれ…、久しぶりじゃない」
麻沙美とは、例の食事会以来だ。叱られて以来音沙汰もなく、杏奈からも連絡しづらくなっていた。ふいの連絡に、杏奈は気持ちを奮い立たせる。
恐る恐る通知を開いてみると、そこに書いてあったのは、思いがけない知らせだった。
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第10話:気になる男性が既婚だと知った29歳女。でも、彼に会いに行き、ある“お願い”をしたら…
「ちょっと、お話、いい?」
杏奈の意味ありげな視線に何かを感じたのか、高濱は杏奈を他の客やスタッフから死角となる店の奥のカウンター席へ誘導する。
「ど、どうしたの。また何かあった?」
「今日来たのは…この前、色々話を聞いてくれてありがとう、ってお礼と」
「お礼と…?」
杏奈の顔を覗きこむ高濱の喉仏が、ごくりと鳴る。緊張感が二人の間を包んでいた。
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第11話:早稲田に合格した高3の2月が、人生のピークだった。仕事も続かず海外に逃亡した29歳男は…
訪れたのは、ずっと憧れていたインドをはじめ、中国、モンゴル、東南アジア。西アジアや中南米にも足を伸ばし、見るもの触れるものすべてが刺激的だ。
…でも、そんな中でも、杏奈のことを忘れた日は一日たりともなかった。
そりゃ、好きで11年も交際していたんだ。そう簡単に忘れられるものじゃない。
「やっぱり、諦められないな…」
ふと窓から、東京の夜景を眺めた。
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