男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:狭過ぎる港区コミュニティ。お食事会で“二度目まして”の相手がそこにいて…




「真琴ちゃん、僕たち付き合わない?結婚もちゃんと視野に入れて」

デートを繰り返して約2ヶ月。美容外科医として活躍している譲からの突然のオファーに、私はただただ首を縦に振る。

「もちろん…!」

譲が住んでいる六本木のタワマンの窓からは、東京タワーと開発が進む虎ノ門の高層ビル群の夜景が輝いている。

今は大手美容クリニック勤務だけれど、いつかは「独立したい」とも話している譲。そうなれば、推定年収はもう想像もつかない。

「…譲さん、今『結婚も視野に入れて』って言った?」
「うん。もちろん」

28歳の冬、急に人生の勝ち組になった私。

でも別に私はただの一般人で、女優でもモデルでもなければインフルエンサーでもない。

― 私のどこが良かったんだろう…?

この2ヶ月のデート中、私は何をしたのだろうか。


Q1:出会いのシーンで女が良かった点は?


譲と出会ったのは、女友達から誘われて顔を出したホムパだった。

美容外科医と聞いていたのでもっとギラギラした人が来るのかと身構えていたけれど、みんなとてもいい人だった。

男女8人の会でみんな家主に群がっているなか、家主の後輩である譲は、ひとりでワインを注いだりグラスを片付けていた。

そんな彼が気になり、私から声をかけたのだ。

「あの。何か手伝えることはありますか?」
「大丈夫だよ、真琴ちゃんは座っていて」
「でも…。せめて、譲さんの飲み物取ってきます!ワインですよね?」
「うん、ありがとう」

こうして、なんとなくキッチンでグラスを持ちながら二人で話す感じになった。




「真琴ちゃんも、あっち行って話してきたら?」
「いや、私はここがいいです。実はちょっと人見知りで」
「そうなんだ。真琴ちゃんは、お仕事何をしているの?」
「私は事務職です。譲さんも、皆さんと同じ職場なんですよね?」
「そうそう。男性は基本的にみんな一緒。ひとりだけ病院違うけど」

結局この日は23時前に解散となったけれど、帰り際に譲からタクシー代を渡されそうになった。見渡すと、各々男性は女性にタクシー代を渡している。

「1万円で足りる?お家どこだっけ?」
「家は三宿なんですが…」

タクシー代はもらえるならもちろん欲しい。でも、まだ電車もある時間だし、今日は少し歩きたい気分でもあったので、私はやんわりと断った。

「ありがとうございます。でもまだ電車があるので、私は電車で帰ります」
「本当?わかった」

― タクシー代素直に受け取っておけばよかったかな…。

そんなことを思いながら、私は冷たい夜風に当たりながら駅を目指した。




翌日。お礼も兼ねて個別で譲にLINEを送ると、食事に誘われた。

そこから食事やドライブデートを重ねて、私たちは交際することになる。


Q2:男が結婚を意識して交際しようと思った理由は?


初デートは、西麻布にあるフレンチを予約してくれていた譲。

「真琴ちゃんは、いつもどの辺りで食事しているの?」
「私は…恵比寿とか渋谷界隈が多いですね。女友達と遊ぶのは表参道とか。オフィスが渋谷なので。譲さんは?」
「僕はこの界隈が多いかなぁ」

こうやって正面から見ると、身長はそこまで高くないものの、端正な顔立ちをしている譲。涼しげな、切れ長の目が印象的だった。

「真琴ちゃんって、肌綺麗だよね」
「そうですか?そんな、プロの方に言っていただけると嬉しいです」

肌だけは昔から強くて、特に何もしなくても綺麗なほうだと思う。「親に感謝だな…」と思っていると、急に譲が照れくさそうな顔をした。

「実は、真琴ちゃんの顔すごいタイプで」
「えぇ〜ありがとうございます」

いきなりそんなことを言われて、驚く。

今日のデートで気がついたけれど、譲は饒舌というより寡黙なタイプ。そんな彼が急に褒めてくれたので、私はますます嬉しくなる。




「譲さんも、素敵です。そもそもお医者様という時点ですごいですけど」
「いやいや、別にそんな大したことないよ。周りにもたくさんいるでしょ?」
「全然いないですよ。私、あまりお酒が強くないから夜も出歩かないですし。家でのんびりしている時間が一番幸せなんです」
「そうなの!?意外。この前いた女性陣、みんな華やかだったのに」
「周りは華やかなんですけどね、私はそんなことないです。譲さんも、華やかな毎日送ってそうですよね」
「僕?全然だよ。仕事がある前日は極力飲まないようにしているし。ゲームが好きだから、意外に引きこもってる(笑)」
「そうなんですか!?意外すぎます」

― この人、素敵だな。

柔らかな雰囲気に、優しい笑顔。二人きりで食事をすればするほど、私は譲に惹かれていった。

でも、譲本人は「遊んでいない」と言っているものの、周囲が華やかなことだけはたしかだ。

ホムパの家主だった譲の先輩は、港区界隈ではプチ有名人で芸能人やモデルなど交友関係も広いらしい。

譲もそういう華やかな会に呼ばれているだろうから、目も肥えていると思う。それに、33歳で独身の譲は婚活女子たちから最高のターゲットになっている。

― 私は、ただのデート相手のひとりに過ぎないんだろうな。

私たちは、二度ほど食事へ行った後、昼間からドライブデートをすることになった。

譲が、高級外車で家の下まで迎えに来てくれた。




「すごいお車ですね…カッコイイ。内装まですごいですね」
「そう?ありがとう!実は結構こだわりがあって。この革は…」

車が好きなのか、嬉しそうに内装や塗装のこだわりを語っている譲。普段物静かなのに、車のことになるとまるで少年のような顔をしている。

「車、お好きなんですね」
「あ…ごめん、話しすぎた?」
「全然です!車の話、聞いているだけで楽しいので。もっと聞かせてください」

この日はお台場まで行き、映画を観てから解散した。

そして次の4回目のデートの帰り際、譲が家に誘ってきたので付いていった。そこで交際を申し込んできたのだ。

付き合うことになったのは本当に嬉しい。彼ほどのハイスペなお医者様と交際できること、そして何より結婚まで視野に入れてるなんて、もう人生上がったようなものだ。

でも初対面のホムパの他に、二人きりでのデートは合計で4回。

このたった4回の間、超ハイスペ男子の譲は私のどこを見ていたのだろうか…?

▶前回:狭過ぎる港区コミュニティ。お食事会で“二度目まして”の相手がそこにいて…

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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ハイスペ男子を落とせた女の勝因は?