政府が「ライドシェア導入」へ! 24年4月解禁で「何が起こる」!? 乗員「人手不足」の切り札となるのか
「路線バス減便」など事態はすでに深刻化! 「人口減」対策は待ったなしだ
日本版「ライドシェア」が2024年4月に解禁されます。2023年12月26日に開催された政府の規制改革推進会議で、岸田文雄総理が明らかにしました。
果たしてこの施策は、「タクシー」や「バス」などの公共交通が直面する「ドライバー不足」という課題に対する大きな切り札となり得るのでしょうか。
岸田総理の発言は、規制改革推進に関する中間答申に沿ったものです。
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中間答申は、規制改革推進会議・地域産業活性化ワーキング・グループが2023年11月から12月にかけて行った議論をベースに国がまとめました。
こう聞くと「ついに日本もアメリカのように、ライドシェアがこれから一気に普及するのか」と思う人がいるかもしれません。
ところが、この中間答申の中身を見ると、2024年4月に解禁されるのは、アメリカ型のライドシェアではなく、タクシー事業者と連携して既存の法律を改善する形を目指すことが分かります。
それにしても、なぜ今、日本版ライドシェア解禁が必要なのでしょうか。
答申によれば、最大の要因は日本で今後起きることがほぼ確定している、急激な人口減少です。
2020年から2050年までの30年間に約2割が減少すると予想されているのです。
そのうち、15歳から64歳までの生産年齢人口は、総人口の約3割にあたる約2000万人が減ってしまうといわれています。
そうした大きな社会変化に直面している日本にとって、日常生活における公共交通機関についても、バス運転手の高齢化や成り手不足、またバスや鉄道の収益悪化などにより、バスや列車の減便や廃止がすでに社会問題になっているところです。
こうした厳しい地域交通の実情を踏まえて、近年ではAI(人工知能)を駆使したオンデマンド交通や自動運転の社会実証、また社会実装が徐々に進んでいます。
一方、ライドシェアについてはこれまで、社会実証を含めた議論があったものの、本格的な運用に向けた、一歩踏み込んだ議論が行われないままでした。
しかし、コロナ禍となったことで、在宅勤務や在宅医療など、多くの人がDX(デジタルトランスフォーメーション)の有効性を実感したといえます。
こうしたなかで、データに基づいた地域交通のあり方を再確認した上で、海外ですでに実用化されているライドシェアの日本導入を、国として議論したというわけです。
「日本版ライドシェア」の大きなカギは「規制緩和」と「制度改善」
では、今回の中間答申を受けて解禁される、日本版ライドシェアとはどういうものなのでしょうか。
全体としては、大きく2つの流れがあります。
1つは、既存の地域交通に対する規制緩和と制度の改善です。
規制緩和は、タクシー事業について実施します。
例えば、第二種免許の取得について、1日の教習時間をこれまでの3時限から4時限に増やすことで、最短で5日と1時限で教習を終えることができるようになります。
また、在留外国人の第二種免許取得を後押しするため、試験問題例を20言語に翻訳し、地域によっては外国語での試験の実施を可能とします。
さらに、カーナビが普及している今、その必要性が疑問視されてきた地理試験も廃止します。
このほか、タクシー事業者のよる新しいビジネスモデルの構築などによって、コロナ禍以降に急減したタクシードライバー数を増やした上で、都心、地方部、中山間地域などでの需要にマッチするタクシー事業の改善を目指すとしています。
次に、自家用有償旅客運送の制度改善です。
これは、すでに全国各地で使われている、普通免許所持者が自家用車を使ってタクシーのような行為を行うものです。
言うなれば、すでに存在する日本版ライドシェアです。
ただし、自家用有償旅客運送を実施するためには条件があります。地域交通が極めて不便な地域(交通空白地域)、または福祉を目的とすることが条件です。
しかも、タクシーやバスなどの事業者や住民の代表者など、地域交通に係る関係者が地域公共交通会議を開いて実施に向けた議論を深める必要があり、このプロセスがかなり長期間にわたることが珍しくありません。
こうした自家用有償旅客運送の仕組みを今回、改善するというのです。
例えば、交通が不便という定義には、人気観光地でタクシー待ちの長い行列ができるなど、タクシー不足が社会問題になっている場合も含まれます。
タクシーやバスの供給が需要にマッチしない地域、またスノーリゾートや海水浴場など時季によるケースや、繁華街の夜遅い時間帯なども、交通の不足地域と解釈し、自家用有償旅客運送の実施を可能とします。
そうした考え方のもと、2025年の大阪・関西万博の期間中も、自家用有償旅客運送を実施する予定です。
このような自家用有償旅客運送については、タクシー事業者が運用の管理責任を持ち、事故に対応する保険の取得や、一般ドライバーに対する安全運転に向けた指導を徹底するとしています。
議論は始まったばかり! 難航が予想される今後の状況
気になる利用料金については、タクシーの約8割を目安として、需要と供給の状況によって運賃が変動するダイナミックプライシングの可能となるようです。
以上が、2024年4月に解禁される日本版ライドシェアの全体像です。
アメリカでのUber(ウーバー)やLyft(リフト)のライドシェアと比べると、かなり縛りが強い印象です。
その上で今回の中間答申では、「タクシー事業者以外の者によるライドシェア事業のための法律制度についての議論」(令和6年6月措置)という記載があります。
これは、アメリカや欧州などで実施されている、様々な形式のライドシェアを参考にした、新種の日本版ライドシェアの導入を考えようということになります。
日本版ライドシェア、まずは第1段階が解禁され、その先の新法の議論については各方面の意見の取りまとめが難航すること予想されます。
今後の動向を注視していきたいと思います。