中国・江蘇省太倉の動物保護施設で暮らす救出された猫(2023年11月1日撮影)。(c)Rita QIAN / AFP

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【AFP=時事】中国・上海在住のハンさん(33)は昨年、自宅から飼い猫を連れ去られる被害に遭った。猫を取り戻そうと捜索に乗り出したハンさんが目にしたのは、中国に広がる違法猫肉売買の闇だった──。

 中国でも大半の人は猫肉を食べない。しかし動物愛護団体「ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(HSI)」によると、広東(Guangdong)省や広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)などの違法な市場で、毎年推定400万匹の猫が食用として殺されている。

 ハンさんは多くの費用と時間をかけ、国内の猫肉業者を追跡。上海一帯に、都市部の野良猫と外飼いのペットを狙う供給網があることを発見した。

 行方不明になったペットの猫を捜すうちに、ハンさんは広東省の猫肉処理場に行き着いた。皮を剥がれた死骸が木箱の中に山と積まれ、毛皮は袋に詰め込まれていた。

 村の食堂の中には、猫肉を出すと堂々と宣伝しているところもある一方で、羊やウサギの肉だと偽って販売している悪質な業者もいた。

 ハンさんはAFPの取材に対し、「私の猫はもういないのだと悟った」と声を詰まらせた。「あの子は食べられてしまった」

 他の猫を同じ目には遭わせないと決意したハンさんは、警察に通報し、窃盗犯を追跡し、広東省当局に請願書を提出した。

 その活動は危険を伴い、猫肉業者から殺害予告を受けたこともある。昨年12月には、高速道路のサービスエリアに駐車した際、男が故意に車で突っ込んできたこともあった。

「怖くなり、見て見ぬふりをしようかとも思った」というハンさん。「でも私が活動をやめて口をつぐんだら、いったい誰が(猫たちを)この惨めな状況から救えるだろうかと考えた」

■法制化を求める声

 ハンさんは、広範で体系的な動物愛護管理法がない中で犬猫の虐待と闘おうとする、固い意志を持った数少ない一人だ。

 ハンさんら活動家は10月、上海近郊の張家港(Zhangjiagang)市で、地元警察の協力を得て多数の猫を積んだトラックを捕まえた。竹製のかご数十個に約800匹が詰め込まれていた。

 救出された猫たちは、上海から1時間ほどの太倉(Taicang)市の施設に緊急保護された。

 中国では、屋外を自由に出歩いているペットを捕まえても窃盗には当たらない。一方で、猫肉食は法律で禁じられている。ただし動物虐待罪ではなく、食品安全基準法違反で罰金刑の対象となる。

 活動家のみならず、国営メディアのコメンテーターの間でも、現行法では摘発できない抜け穴をふさぐために、動物虐待禁止法の制定を求める声が強まっている。

 ハンさんも「私は一般人。自力でできることは限られている」と訴えた。

【翻訳編集】AFPBB News

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