資産18億円87歳現役トレーダーが投資歴70年で気づいた「好決算でも買っちゃダメな株」銘柄選定の完全攻略法を暴露

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 「好材料が出ても、買いに行ってはいけない株がある」と話すのは、87歳現役トレーダーの藤本茂氏。どうすれば「買ってはいけない株」を見分けることができるのか、藤本氏の実際の売買から解説する。 

※本稿は『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイアモンド社)から抜粋・再構成しています。 

上がるはず、でも買わない 

 好材料が出ても、チャートと照らし合わせて「買わない」という選択をすることもあります。たとえば、ニデックの例を挙げたいと思います。 

 ニデックは、京都に本社を置く電機メーカーです。2023年に社名を変えましたが、私にとっては「日本電産」のほうがなじみ深い名前です。 

 ニデックは第1四半期の決算で、 EV(電気自動車)向けのモーターなどの事業が黒字に転換し、売上高・最終利益ともに過去最高を記録したと発表しました。これはもちろん、かなりいい材料です。 

 同社の永守重信会長は、間違いなくカリスマ経営者です。ただカリスマ経営の企業は、最終的に自分たちが利益を得るような株価操作が上手なので、個人投資家としては注意も必要なんです。 

 決算発表の翌日、朝起きてすぐに「ニデック過去最高益」との報道を見て、ニデックの銘柄を見にいくことにしました。 

 まずは決算です。売上高は前年同期比4.8%、営業利益は34.7%、税引前利益が51.0%。売上高がそこまで上がっているわけではありませんが、営業利益と税引前利益はなかなかの上昇率です。 

 この数字は第1四半期の決算ですから、次に年に換算するため、ここで出た数字を4倍します。第1四半期の売上高が566億550万円ですから、その4倍すると年間売上高は2兆2662億円ほど。通期予想が2兆2000億円ですから、予想と大きくは乖離していないということになります。ただし、これは前年同期比マイナス1.9%で、1株利益は287円に上ります。 

 次に四季報を見て、過去の売上高や1株利益を確認。2023年3月決算で営業利益や税引前利益が落ち込んでいるものの、順調に伸ばしていることがわかります。 

 投資対象としては悪くないということで、購入を検討するためにチャートを見に行くわけです。 

テクニカルで「買い場」「売り場」判断 

 まずはローソク足を日足に変え、価格別売買高とRSI(相対力指数)、MACD(移動平均収束発散法)を見ます。 

 RSIは買われすぎか、売られすぎかを判断するための指標で、数値は0~100で表されます。一般的に70~80%以上で買われすぎ、20~30%以下で売られすぎと判断されます。 

 MACDは、短期の移動平均線と中長期の移動平均線を使用することで、買いと売りを判断する手法です。 

 前日の終値は7784円。RSIは56%。ここで買えていれば、いい数字とはいえませんが悪くもありませんでした。 

 ただし、決算発表を受けてその翌朝のADR(米国預託証券)では8300円台まで上がっている。8300円台だとするとRSIは明らかに高い。 

 次に一目均衡表と新値3本足で見ます。しかし、ここでも「買い」と判断できる情報は出てきません。 

 そして週足でRSIなどを見直します。日足から週足に変えると、チャートの形は少し変わってきますからね。ここで見ても、それなりの高値圏です。 

 最後に銘柄情報を見ます。PERは27倍。一般的にPERは15倍くらいが平均的とされていて、それ以上は割高、それ未満は割安だと考えられます。なのでPERは高すぎる。一方、配当利回りは0.83%と低い。 

その売買に根拠はあるか 

 ADRの値段を参考に、おそらく当日中に8300円くらいまでは上がる可能性は十分にあるだろうと考えました。ただ8300円は、いまのチャートから見ると「高すぎる」数字です。 

 そこで前日が7784円で、かつ前日までに出ていた売り注文が朝一番で消化されるはずということを加味し、「8050円までであれば買うけれども、それ以上なら買わない」と判断。市場が開く前に「8050円」の指値で注文しました。 

 決算はいいですし、それ以上上がる可能性も高いと考えましたが、私の売買基準に外れる投資はしないと決めているのです。 

 結局買いが相次ぎ、寄り付きは8200円のスタート。そのまま値を落とすことなく、引け時点で8592円の値を付けました。 

 寄り付きの8200円でも買っておくと儲かったでしょうが、「悔しい」とか「買っておけばよかった」とはまったく思っていません。 

 今回はたまたま上がりましたが、自分のなかで根拠を持たずに好決算だと思って飛びつくとやられるからです。 

 ちなみに案の定、その後1か月もすると株価は7300円台まで下がりました。自分の基準をしっかり持っておくことが、長い商いにつながるのです。 

実力を見抜く目で約7000万円をゲット 

 余談ですが、ニデック関連ではこの決算が発表されるわずか1週間ほど前に大分儲けさせてもらいました。というのも、ニデックが工作機械メーカーのTAKISAWAを株式公開買い付けにより買収(TOB)すると発表したのです。 

 工作機械事業を新たな成長の柱に据えるニデックが、さらなる成長のためにTAKISAWAの旋盤技術をとり入れようとした形です。 

 公開買い付け価格は1株当たり2600円。公開買い付けとは、株主に対して買付価格や機関などを公表し、保有している株式を売ってくれるよう勧誘する仕組みです。つまり、「1株2600円」が確約されているということです。 

 TOBが発表される前、同社の株価は1400円ほどでした。しかしこの発表を受けて株価は2500円ほどまで上昇しました。 

 私は1200円ほどで買った同社の株を、実に4万9000株保有していました。(2600円- 

1200円)✕4万9000株と計算すると、そのまま持っているだけで6860万円の儲けになります。 

 これは嬉しい誤算ではありましたが、そもそもTAKISAWAの実力を高く評価していたからこそ、これだけの株を保有していたのです。「株価が安い」だけを理由に株を選んでしまうと、このような幸運にもなかなか巡り合えないでしょう。

『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイアモンド社)