本連載の第221回では「プロジェクトが乱立していませんか」という話をお伝えしました。今回は多すぎるプロジェクトの整理の仕方についてお話します。



改善意欲の高い組織では、常に何かしらのプロジェクトが走っているものです。そのような組織では1人で複数のプロジェクトを掛け持つことも珍しくなく、人によっては4つや5つ掛け持ちしているというケースもあります。

プロジェクトは明確な目標と期日、アウトプットが決まっているため成否が目に見えやすく、またプロジェクトに携わる人には相応の負荷がかかることも多いため、やっている側からすると充実感や達成感を覚えるのではないでしょうか。

しかし、組織の中には無計画にプロジェクトを増やし過ぎているケースがあります。そのことによるデメリットについては前回のコラムでお話したとおり、「プロジェクトが効果検証に至らない」「やろうとしていることがプロジェクト間で重複してしまう」「プロジェクト間で効果を相殺してしまう」ことがあります。※詳しくは前回のコラムをご覧ください。

その上で、乱立したプロジェクトを整理するにはどうしたらよいのか、以下ではその手順を説明します。

1. プロジェクトの全貌を見える化する

そもそも今、どのようなプロジェクトがどこでいくつ走っているのかが分からなければ、整理のしようもありません。自社、或いは自部門など対象の組織単位で見たときに、いったい何のプロジェクトがどこでどれだけ走っているのかを調査し、その全貌を明らかにするところから始めましょう。

なお、調査した結果、いくらプロジェクトの数が多かったとしても何ページにもまたがって資料を作るのはお勧めしません。まずは一目で全貌を把握できるよう、PowerPointやExcelなどで1ページに収まるように記述しましょう。

その際、お勧めなのは長方形のオブジェクトにプロジェクト名を書いて、それを並べてみることです。そして、似通ったプロジェクト同士は近くに寄せて置いてグルーピングしておくとよいでしょう。

2. プロジェクトの目的を明記する

そのプロジェクトはいったい何のためのものなのか、各々のプロジェクトについて目的を確認して記述しましょう。それによって、目的が近いものや関連しているもの、相反するもの、或いは全く無関係なものなどを識別できるはずです。

なお、確認する中でプロジェクトの目的が不明確なものが見つかるかもしれません。何のためにやっているのか分からないプロジェクトがあったら、その時点で中断や休止などを検討してもよいでしょう。

3. プロジェクト間の繋がりを図式化する

各プロジェクトの目的が分かったら、その情報を基にプロジェクト間の繋がりを図で表しましょう。あるプロジェクトのアウトプットが別のプロジェクトのインプットになったり、同じ目的を達成するために複数のプロジェクトが別の角度からアプローチしていたり、或いは互いに効果を打ち消し合っていたりといった関係性を一目でわかるはずです。

なお、図で表す時に使えるのが最初にご紹介したオブジェクトです。プロジェクト名や目的を記述したオブジェクト同士を矢印や直線で結んで、関係性を表します。それを見ながらディスカッションすることで、関係者間での共通認識を醸成することが容易になります。

4. 不要なプロジェクトを特定し、終了する

プロジェクト間の繋がりを可視化したら、プロジェクトの断捨離に取り掛かります。あまりにプロジェクトの数が多い場合には、ほぼ確実に不要なものが混じっているはずです。それを炙り出せたら、当該プロジェクトの責任者や当事者に説明し、たとえ道半ばであっても終了させることを検討しましょう。

きっと「せっかくここまでやってきたのだから、最後までやりたい」という反発が生まれるのは免れないでしょうが、そもそも不要なプロジェクトを最後までやり切ったところで何の意味もありません。それどころか、本来もっと有意義なところに割くはずの社内や組織の貴重なリソースを浪費してしまっている状態とすら言えます。

もちろん当事者のやるせない気持ちを蔑ろにすべきではありませんが、会社や組織全体のことを考慮すれば、尊重しつつもプロジェクトを終わらせることが大事です。

以上、乱立しているプロジェクトを整理する方法をお伝えしました。職場で走っているプロジェクトが多すぎるのでは、と少しでも思ったらぜひ、本稿の内容を基に整理してみましょう。

相原秀哉 あいはらひでや 株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役 慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。著書に『リモートワーク段取り仕事術』(明日香出版社)がある。 この著者の記事一覧はこちら