AIと人間がマンガを共創「TEZUKA2023」AI第2弾は「ブラック・ジャック」の新作を今秋に公開

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AIと人間のコラボレーションでマンガの神様・手塚治虫に挑み、新作「ぱいどん」を生み出した 「TEZUKA2020」から3年。その後も、プロジェクトメンバーであった慶應義塾大学栗原聡教授と手塚眞氏、手塚プロダクションが中心となり、「AIと人間の共創マンガの実現」に取り組んで来た。
そして「TEZUKA2023」として今年誕生50周年を迎えた「ブラック・ジャック」の新作制作に着手し、2023年秋に公開予定となったことが発表された。
●クリエイターとAIのインタラクティブなやりとりがポイント
前作「ぱいどん」の制作過程で、クリエイティブ分野においてはインタラクティブ性の高い共創型AIサポートシステムの存在が、人ならではの能力である創造性の発揮につながることに着目。研究を重ね、今回の「ブラック・ジャック」新作制作においてはクリエイターとAIのインタラクティブなやりとりがポイントになっている。
新たな局面に入った AIと人間が手を取り合うことで、手塚治虫が礎を築いた日本の「マンガ文化」はさらなる発展の転換期を迎えることが出来るのかに注目が集まっている。
●「TEZUKA2023」プロジェクト概要
手塚プロダクションのクリエイターと「ブラック・ジャック」を学習したAIのインタラクティブなやりとりにより、「ブラック・ジャック」の新作を制作するもの。
本プロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務で開発している技術を活用している。公開時期2023年秋予定掲載秋田書店「週刊少年チャンピオン」主なメンバー栗原聡(慶應義塾大学 理工学部教授)手塚眞(手塚プロダクション 取締役)村井源(はこだて未来大学 システム情報科学部教授)橋本敦史(慶應義塾大学 理工学部特任講師)石渡正人・日高海 (手塚プロダクション)
●「TEZUKA2023」プロジェクト経緯
2019年「TEZUKA2020」プロジェクト発足手塚治虫作品を学習したAIとクリエイターによる新作制作を目指す2020年2月新作「ぱいどん」発表※「TEZUKA2020 プロジェクト」終了2020年7月栗原教授、手塚プロらが中心となるチームにて研究継続「インタラクティブなストーリー型コンテンツ創作支援基盤の開発」としてNEDO 「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」に採択2023年5月「TEZUKA2023」プロジェクト発足「ブラック・ジャック」新作制作決定
●手塚治虫作品 「ブラック・ジャック」とは?
秋田書店「週刊少年チャンピオン」で1973年11月~1983年10月まで連載された手塚治虫の代表作。
無免許の天才外科医ブラック・ジャックが活躍する医学ドラマ。 今年誕生50年を迎える。
●栗原聡教授と手塚眞がコメントを寄せる
「TEZUKA2023」プロジェクトとして「ブラック・ジャック」新作に挑む慶應義塾大学教授の栗原聡氏と手塚プロダクション取締役の手塚眞氏がコメントを寄せている。

栗原聡(慶應義塾大学 理工学部教授)
「TEZUKA2020」に参画したことで、クリエイティブなタスクへの AI サポートの可能性を強く感じたものの、同時に人の創造力に対してまだまだAIの力量が足りないことを痛感しました。
この経験が現在の「AIとマンガの共創の可能性」を追求する、NEDOに採択された研究プロジェクトの立ち上げに繋がったのですが、研究を進める中、絶妙なタイミングで我々の研究プロジェクトにとって大きな追い風となる ChatGPTのような生成 AIが登場したことは極めて幸運なことでした。今回、私たちはインタラクティブなやりとりを通してクリエイターの創造的作業をサポートする、GPT-4を基盤とするAIのコンセプトを提案しております。
無論、素晴らしい技術には、今多方面で議論されている負の面に対してもしっかり考える必要があります。この研究プロジェクトを通して、さらに進化していく AIと人・社会がどのような関係を構築することが、今後のあるべき人間社会の実現のために必要であるのかという、根元的な問いへのひとつの答えに辿り着けるのではないかと思います。
まずは、「TEZUKA2023」により、どのような作品が完成するのか自分自身楽しみです。手塚眞(手塚プロダクション 取締役)
「TEZUKA2020」では、「ぱいどん」というマンガを制作しましたが、そのときAIはまだマンガ初心者で、慎ましい関わり方でした。
それから3年。AIは飛躍的に進歩しています。もう初心者とは言えないということで、ハードルを一気に高くして、手塚治虫の代表作である「ブラック・ジャック」(BJ)の新作に挑戦します。
「BJ」はエピソード数も多く、あらゆるジャンルを含み、手塚治虫のエッセンスが凝縮されている作品。そして、コロナ後の今の時代が一番渇望しているコンテンツと言えます。
今回は様々なクリエイターが実際にAIと共同制作することで、コンテンツ作りの新たな方法論を生み出せるでしょう。日本のマンガ文化が、また新しい未来を手に入れるのかもしれません。


●「TEZUKA2023」プロジェクトメンバー
・栗原聡(慶應義塾大学 理工学部教授)・手塚眞(手塚プロダクション 取締役)・橋本敦史(慶應義塾大学 理工学部特任講師)・石渡正人、日高海 (手塚プロダクション)・蛭田興明、畠山太郎、北川峻(キャラクター生成チーム学生)・川村天、小林伶央、有井知真、伊藤亮史、渡邉謙吾(ストーリー生成チーム学生)