by Prachatai

2022年1月にMicrosoftが大手ゲームメーカーのActivision Blizzardを買収すると発表しました。この買収に対してはアメリカの連邦取引委員会(FTC)が反トラスト法(独占禁止法)に基づく審査を行っています。一方で日本の公正取引委員会はMicrosoftによるActivision Blizzardの買収に関する審査結果を公開し、買収計画を承認すると発表しました。

(令和5年3月28日)マイクロソフト・コーポレーション及びアクティビジョン・ブリザード・インクの統合に関する審査結果について | 公正取引委員会

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/mar/kiketsu_230328m.html



マイクロソフト・コーポレーション及びアクティビジョン・ブリザード・インクの統合に関する審査結果について

(PDFファイル)https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/mar/kiketsu/230328_ma.pdf

日本の公正取引委員会がマイクロソフトによるBlizzard Entertainmentの買収を承認

https://jp.ign.com/games/66852/news/blizzard-entertainment

Japan’s competition regulator has approved Microsoft’s acquisition of Activision Blizzard | VGC

https://www.videogameschronicle.com/news/japans-competition-regulator-has-approved-microsofts-acquisition-of-activision-blizzard/

Microsoftは2022年1月に、Activision Blizzardを687億ドル(約9兆5000億円)で買収すると発表しました。日本では、MicrosoftおよびActivision Blizzardから公正取引委員会に対して、独占禁止法の規定に基づいた株式取得および合併に関する計画届出書が提出され、審査が行われてきました。

2022年6月には今回の買収に関する第三者からの情報や意見の募集が行われています。





公正取引委員会は2023年3月10日に第1次審査を開始。2023年3月28日には審査結果を発表し、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとはいえないと認められたので、当事会社グループに対し、排除措置命令を行わない旨の通知を行い、本件審査を終了しました」と発表しました。





今回の公正取引委員会が行った審査における視点としては「MicrosoftのActivision Blizzard買収により、市場での競争に大きな影響が生じる可能性があると考えられる、コンソール向けゲームの独占販売等について、関連市場における競争を実質的に制限することとなるか」でした。

決定を説明した公正取引委員会の文章の中で、公正取引委員会は「PC向けゲーム開発・発行事業と、ゲームサブスクリプションサービス」「コンソール向けゲーム開発・発行事業と、ゲームサブスクリプションサービス」「PC向けゲーム開発・発行事業と、クラウドゲーミングサービス」「コンソール向けゲーム開発・発行事業と、クラウドゲーミングサービス」の4つの観点で、Microsoftが競合他社へのゲームの供給拒否を行った場合を想定して、市場の独占につながる可能性を検討しています。



・PC向けゲーム開発・発行事業と、ゲームサブスクリプションサービス

日本国内におけるPC向けゲーム開発・発行事業の市場シェアは以下の表の通りです。Microsoft・Activision Blizzardともに5%未満で、MicrosoftがActivision Blizzardを買収したとしても市場シェアが高い競争事業者が複数存在します。仮にActivision Blizzardを買収したMicrosoftが他企業へPC向けゲームの供給を行わなくなったとしても、ユーザーは他の大手メーカーのゲームを遊ぶことができるため独占は起きないと判断されました。



また。MicrosoftのPC・コンソールを含めたゲームサブスクリプションサービスの国内シェアは5%未満のため、今回の買収による、PC向けゲームサブスクリプションサービス市場の競争に与える影響は限定的と判断されています。



・コンソール向けゲーム開発・発行事業と、ゲームサブスクリプションサービス

日本国内におけるゲームコンソール向けゲーム開発・発行事業の市場シェアは以下の表の通り。2021年においてコンソール向けゲームの国内シェアはMicrosoft・Activision Blizzardともに5%未満です。そのため、Microsoftがゲームを他社に供給しなくなっても、国内で独占が起きることはないと判断されています。



また、前述の通りゲームサブスクリプションサービス市場においてMicrosoftの国内シェアは限定的です。そのため、もしもMicrosoftが自社のサブスクリプションサービスでサードパーティーの開発事業者が作成したゲームを配信することを拒否しても、企業は別のゲームサブスクリプションサービスでゲームを配信することができるため、今回の買収により市場の閉鎖性や排他性に問題は生じないとされています。

・PC向けクラウドゲーミングサービス

クラウドゲーミングサービスの国内シェアをまとめたのが以下の表です。Microsoftが提供するクラウドゲーミングサービスの国内シェアは約10%と低く、MicrosoftがPC向けゲームの供給を停止しても、ユーザーは大手クラウドゲーミングサービスに乗り換えることが可能です。



また今後、Microsoftが供給拒否を行った場合でも、ユーザーは他のクラウドゲーミングサービスや買い切り型の販売に切り替えることが可能であるため、市場の閉鎖性や排他性に問題は生じないとのこと。

・コンソール向けクラウドゲーミングサービス

前述の通り、国内におけるMicrosoftのクラウドゲーミングサービスのシェアは限定的です。また、Activision Blizzardの世界的に人気の高いゲーム「コール オブ デューティ」についても、日本国内では「ポケットモンスター」や「スプラトゥーン3」をはじめとするより人気の高いゲームが存在するため、Activision Blizzardを買収したMicrosoftが競合他社のクラウドゲーミングサービスへの供給を拒否しても、その影響は限定的だとされています。



上記の理由から、公正取引委員会は「MicrosoftによるActivision Blizzardの買収に伴う市場での競争を、実質的に制限することとなるとはいえません」と判断しています。また、今回の買収は独占禁止法に規定されている「垂直型企業結合のセーフハーバー基準」に該当していると認められ、「MicrosoftおよびActivision Blizzardに対し、排除措置命令を行わない通知を行いました」と発表しています。

一方でアメリカ連邦取引委員会は「MicrosoftがActivision Blizzardを買収した場合、ゲームサブスクリプションサービスおよびクラウドゲームサービスにおいて、競合他社を抑圧できるようになってしまいます」と述べ、買収を阻止するためにMicrosoftを提訴したことが報じられています。

MicrosoftによるActivision Blizzard買収を阻止するため連邦取引委員会が提訴 - GIGAZINE