OpenAIの大規模言語モデル・GPT-4や画像生成AIのMidjourneyなどのジェネレーティブAI技術は急速に発展し、実際に文章や絵画を作成するケースが爆発的に増えています。アメリカ著作権局が2023年3月16日付けで、AIが生成した素材を著作物として認める場合を明確にするガイダンスを発表しました。

Federal Register :: Copyright Registration Guidance: Works Containing Material Generated by Artificial Intelligence

https://www.federalregister.gov/documents/2023/03/16/2023-05321/copyright-registration-guidance-works-containing-material-generated-by-artificial-intelligence

Authors risk losing copyright if AI content is not disclosed, US guidance says | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2023/03/us-issues-guidance-on-copyrighting-ai-assisted-artwork/

著作権局は2022年2月に「AIが作った芸術作品に著作権はない」という判断を示し、AIが作成した絵画に著作権を認めるように求めた申請を却下したことを明らかにしました。

「AIが作った芸術作品に著作権はない」とアメリカ著作権局がAIの著作権を拒否 - GIGAZINE



さらに2023年2月には、「画像生成AIを使って制作されたグラフィックノベルは著作権による保護を受けない」と宣言しました。ただし、グラフィックノベルの文章やコマ割などの構図については、AIではなく人間のアーティストの著作権を認めています。

「AIで作成したコミックの絵は著作権で保護されない」とアメリカ著作権局が宣言、作者は「素晴らしいニュース」と歓迎 - GIGAZINE



アメリカ著作権局が新たに発表したガイダンスでは、「プロンプトのみによって生成されて修正が加えられていないAI作品」に関して、「AI技術は人間からのプロンプトのみを受け取り、それに応じて複雑な文章や絵、あるいは音楽作品を生成します。『伝統的な作家性の要素』は人間のユーザーではなく、技術によって決定・実行されます。現在利用可能なジェネレーティブAI技術に関する当局の理解に基づくと、AIがプロンプトを解釈して作品を生成する方法では、ユーザーは究極的に創造的な制御を行使しません」と述べ、「AIの創作物は人間の著作物ではないので、著作権登録はされません」と論じています。

一方で、上記のグラフィックノベルのように、ジェネレーティブAIの作品を人間が特定の順番で配置した場合、その配置が「十分に創造的」であれば、一連の画像に著作権が認められる可能性があると、アメリカ著作権局は述べています。これは、画像を並べるだけではなく、AIで生成した画像に「著作権保護の基準を満たすような修正」が加えられている場合、その修正を加えた者の著作権が適用されるとのこと。



by Steve Jurvetson

アメリカ著作権局は「著作権保護の基準を満たすような修正」の具体例として、「PhotoshopでAI画像を修正すること」「AIが生成した音声をギターのエフェクターを使ってひずませること」などをあげています。

ただし、アメリカ著作権局は「最終的に『AIが生成したもの』なのか『AIが生成した作品を人間が考案したもの』なのかについては、ケースバイケースで判断することになります。最終的には制作状況、特にAIがどのように動作して最終的な作品を作成するためにどう使用されたかによって判断されます」と述べました。

さらに、アメリカ著作権局は「著作権登録のために提出された作品にAIで生成されたコンテンツが含まれているかどうかを開示する義務」についても言及し、自身の著作物を登録する際には申請書で「作品にAI生成コンテンツが含まれているか」という部分にも触れておくことを推奨しています。また、すでに申請中のアーティストや作品登録済のアーティストに対しては補足登録を提出することも勧めており、AIについて正確に登録していない場合は「著作権登録のメリットを失いかねません」としています。



by Otto Rapp

アメリカ著作権局は、今回のガイダンスはあくまでもAI生成作品と著作権についての議論の初期段階であることを認めており、「AI学習における著作物の使用とそのAIによる生成物を法的にどう扱うべきかを含めて、追加の法的あるいは政治的な議論に関してパブリックコメントを2023年後半に求める予定です」としています。