「仕事ができる人」が身につけているコミュニケーションのコツとは(写真:Greyscale/PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」
の大野萌子です。

「仕事ができる人」とはどんな人でしょう。レスポンスが早い、効率良く仕事がこなせる、判断・決断力がある、企画力がある……。こうした仕事に対する能力やスキルはもちろんですが、さらに、共通するのがコミュニケーション能力の高さではないでしょうか。

そんな「仕事ができる人」が無意識的、または意識的に身につけているコミュニケーションの事例について、拙書『「感じがいい人」の行動図鑑』から一部抜粋、再構成してお届けします。

ネガティブな言葉をポジティブに変換できる

会話はコミュニケーションの第一歩。それだけに発する言葉によって、その人の印象は大きく変わります。例えば、あなたが「感じがいいな」と思う人の言葉を思い出してみてください。


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前向きで、ポジティブなワードが多くありませんか。他人とのコミュニケーションが上手な人、感じのいい人というのは、マイナスと思われる言葉も、プラスのイメージに言いかえることができるので、周りの人にいい印象を残せるのです。

この言いかえは、物事の視点・枠組み(Frame)を、ちがう角度から捉えて組み直す(Re)テクニック「リフレーミング(Reframing)」を意識すれば、誰でもまねできます。リフレーミングは「相手の立場に立つ」「相手を理解する」「相手に共感する」といったアプローチから始まる心理学用語で、モチベーションアップや人間関係を良好にするなどの効果が期待できるとされています。

性格表現を例にとってみましょう。

怒りっぽい、せっかち、優柔不断、頑固、空気が読めない……これらはいずれも、一般的に「短所」と捉えられるネガティブな性格表現です。では、リフレーミングを使って、受け取る側がうれしい、気持ちいいと感じるポジティブな言いかえをして、「長所」と受け取れる性格表現への変換を試してみましょう。

怒りっぽい→正義感が強い、感受性が豊か
せっかち→決断が早い、積極的
優柔不断→慎重、思慮深い
頑固→意志が強い、信念がある
空気が読めない→無邪気

このように、イメージが一変することがわかります。一見コンプレックスに思いがちな短所や欠点も、リフレーミングを行なうことで、逆に強みに感じられるようになるのです。

否定発言を肯定形にチェンジ

前向きな言葉への言いかえは、性格表現だけに限りません。例えば、人は「〜しないで」と「否定形で指示」されるより、「〜して」というように「肯定形で依頼」されるほうが受け止めやすいもの。つい使いがちな否定表現も肯定形に変えるだけでも好印象に変わります。一例を紹介します。

×  △日までに納品してもらわないと困ります
○  △日までに納品していただけると助かります

×  そのやり方でうまくいくはずがありません
○  やり方を変えればうまくいくと思います

×   今週は忙しいからダメ!
○  来週なら時間があるので付き合えますよ

どうでしょうか。同じ内容の発言でも、それぞれ後者のほうが好意的に受けとめられますよね。簡単なテクニックですが、こうしたちょっとした言葉の選び方、使い方が、より良い人間関係を築く第一歩となるのです。

特に日本人は、謙遜を美徳と考えるのか、自分のことを悪く言う人が多いですし、さらになぜだか悪いほうへ悪いほうへ、わざわざマイナスの言葉に言いかえてしまう人も少なくありません。それだけに日頃から意識して、ポジティブワードを使うように意識することが大切です。

「だって」「どうせ」「私なんて」が口ぐせになっていませんか。思いあたるところがあれば、即刻止めましょう。日本には古来より「言霊」という言葉があるとおり、言葉には魂が宿ると信じられてきました。実際、人は自分が発した言葉に少なからず、影響を受けているものです。自分が発した言葉にとらわれて、自分を卑下したり、否定したりしまうのは精神衛生上も好ましくありません。

マイナスの言葉はマイナスの空気や感情を生みがちです。そんなネガティブワードは避けて、できるだけ前向きな言葉を選ぶよう努力してみてください。自分の発する言葉ひとつで、相手の気持ちや考え方は変わりますし、周りも変わってきます。何事も肯定的に捉えられる人のほうが一緒にいて楽しいもの。できるだけ良いことに目を向けることで生まれるプラスのコミュニケーションは、その環境にも、人間関係にも良い影響を与えます。

前向きな表現を心がけて

例えば、あなたが自分の仕事で忙しい時、上司から急な用事を頼まれたとして、「今すぐにですか」とか、「できなくはないですけど」といった後ろ向きな返事をしたことはありませんか? 自分の仕事の期限が迫っていて、どうしても受けられない時は、その旨を説明してきっぱり断るのも問題ありませんが、もし引き受けると決めたなら、イヤイヤ受けるのではなく、「何とかできると思います」「お手伝いさせてください」と言った前向きな返事でやる気をアピールすることです。そうすればお互い気持ちよく仕事ができますし、上司からの信頼も得られます。


ネガティブなやり取りが多い職場は、心理的側面からも負のオーラに引っ張られがちです。他人の悪口や陰口も同様。言っている本人は何気ないほんのジョークやユーモアのつもりで、悪気はなかったとしても、その輪には決して加わらないことです。そしてもし職場で悪口を言い始める人がいたら、その場から離れて関わらないようにすること。もし何か理由があって離れづらい場合は、貝のように口を閉ざすのがいちばん。間違っても「そうだよね」などと相づちを入れたり、うなずいたりしたら、その時点で同罪になってしまいます。同意や意見を求められても「〇〇さんは、こう思ってるんだよね」とあくまで相手の気持ちとして関わることに徹し、「私にはわからないな……」「どうなんだろうね」と穏やかに対応しましょう。

組織の中で働いている以上、人の関わりをなくすことはできません。何よりせっかく縁あって知り合った者同士、気持ちよく付き合える関係を築きあげ、モチベーション高く働ける職場づくりのためにも、プラスの表現をぜひ意識してみてください。

(大野 萌子 : 日本メンタルアップ支援機構 代表理事)