約4年ぶりのトップ10入りを果たした横峯さくら、記者が感じた復活の気配とは【写真:Getty Images】

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国内女子ツアー第3戦・Tポイント×ENEOSで4年ぶりのトップ10入り

 国内女子ゴルフツアー今季第3戦・Tポイント×ENEOS最終日は20日、鹿児島高牧CC(6419ヤード、パー72)で行われ、堀琴音(ダイセル)が通算9アンダーでツアー2勝目を飾った。地元鹿児島県出身でツアー通算23勝の横峯さくら(エプソン)は、通算4アンダーで9位。2018年ヨコハマタイヤPRGRレディスカップの3位以来、約4年ぶりのトップ10入りを果たした。昨年2月4日に第1児の長男・桃琉(とうり)くんを出産。主戦場を米国から8年ぶりに日本に戻した36歳が、復活の気配を感じさせた。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 最終日1番パー5の第1打。横峯は、同組で飛ばし屋の岩井明愛、野澤真央に約10ヤード置いていかれた。だが、第2打をフェアウェーウッドで残り60ヤードまで運び、第3打はバックスピンでボールをピン側に。楽々とバーディーを奪った。昨年12月のツアー最終予選会(QT)では、21位で通過しても「いい時に比べると40%」と話していたが、今大会では「65〜70%ぐらいまで戻りました」。その言葉に説得力を持たせるプレーだった。

 横峯のことは、彼女が高3の頃から取材をした。同期の宮里藍に対抗する「天才ゴルファー」と呼ばれ、父・良郎氏との二人三脚が話題だった。だが、その独特なスイングは幼少期に自身で編み出したもの。父から「プロゴルファーになれ」と期待されていた姉2人と練習場に行き、ほったらかしにされていた。そして、重いクラブをどうすれば振れて、遠くに飛ばせるかを考えてたどりついたのが、トップでヘッドを顔の下まで垂らし、遠心力をつけることだった。

 アプローチも秀逸で、グリーンまで約40ヤードのバンカーショットも砂を取らずにクリーンに打って寄せることができた。良郎氏も舌を巻き、「あれは『さくら打ち』と言って、さくらしかできんのよ。俺は手造りの練習場を作ったり、改造バスで移動させたり、練習法は伝えたけど、そんなに指導はしていない。うまくなったのはさくら自身なのよ」と話していた。

 その言葉通り、横峯は誰にも教わることなく、09年には賞金女王になり、15年に主戦場を米女子ツアーに移した。しかし、16年から長いスランプに入り、練習を重ねても、一時的にコーチをつけても感覚は戻らなかった。そして、たどり着いたのが夫・森川陽太郎さんとのスイング解析。パットのラインも一緒に読むようになった。

 出産を経て「日本に戻ってプレーする」と決めた後も、その共同作業を続けてきた。今大会も、グリーンが見えない場所からのショットの際、距離と風向きを把握した上で、横峯が「ハーフ、フルのどっちで?」と聞き、夫が「ハーフ(ショット)で」と返す場面があった。そんな感覚も夫婦で共有できていることに驚かされた。

蘇ってきた天才は強い、思えた「横峯ならやってのける」

 蘇ってきた天才は強い。体のコンディションも上向きで、「QTの頃はラウンドが終わると、『しんどい。帰りたい』でしたが、今は『練習して帰りたい』と思えるようになりました。ショットが戻ってきたので、パットを気にする段階にもなってきました」と明かした。

 今大会は、地元での有観客開催で声援を受け、クラブハウス内の医務室で、桃琉くんを母・絹子さんに見てもらえた「安心感」も大きかっただろう。表情が明るくなってきた横峯は、最終日に言った。

「たくさんの方にパワーをもらえたので、コロナじゃなかったらサインもしたかったです。ありがとうございました。今週のようなゴルフができれば、そのうち、(優勝の)順番が回ってくるかなと思います。ママで優勝したいですね。頑張ります」

 かつての膨大な練習量で体に染み込ませた感覚は、試合を重ねる中で研ぎ澄まされるだろう。優勝は14年11月の大王製紙レディスが最後で約8年遠ざかっているが、「横峯ならやってのける。『あと7勝して永久シード権獲得』の目標も現実になるでは」と思えてきた。若手が席けんする現在のツアーでも、横峯は再び大きな存在になるだろう。その過程はしっかりと見ていきたい。

(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)