CBとして吉田の隣に置いておくだけではもったいない。たとえば4-3-3のアンカーとして起用すれば、守備陣全体に高さが生まれる。吉田(189センチ)、冨安(188センチ)に加え、板倉滉(186センチ)等、高さのあるCBをもう1人置くことができる。相手が後半、高さのある選手を送り込んできたとき、この戦術的交代は使える。

 右SBとしては、たとえばこんな使い方が考えられる。1-0でリードした試合の後半、アタッカーを1人削り、冨安がプレーしていたCBに、板倉など、別の選手を送り込む。冨安は玉突きで右SBに移動。それまで右SBでプレーしていた酒井宏樹(あるいは山根視来)は、右ウイングのポジションに、これまた玉突きで移動する。これで、右SBを右ウイングとして使う、守備固めの布陣が完成する。

 他のポジションもできる冨安がCBに居座り続けると吉田、冨安は不動になる。動かせなくなると言ってもいい。すると23人枠で戦うなら、少なくともあと2人いるCBのサブは、出場機会を失うことになる。単発に行われる試合ならそれでいいが、先述したようにW杯本大会では、選手をローテーションさせ可能な限り多くの選手を使っていかないと、途中で戦力的に力尽きる。5試合目までチームの総合力を保てない。出場時間を23人でシェアしていかないと、東京五輪のようなことになってしまう。

 2018年ロシアW杯に臨んだ西野ジャパンもそうだった。4試合目(決勝トーナメント1回戦で)で、ベルギーに勝利しても、中3日で準々決勝を満足に戦うことができる選手は11人いなかった。

 こうした事態を避けるためにも多機能型選手は不可欠なのだ。幸い、日本にはチーム一の中心選手が多機能性を備えている。このメリットを森保監督は知るべきだし、活かすべきである。「次を見越してやることはできない。日本が世界の中で勝っていくためには1試合1試合、フルで戦いながら次に向かうことが現実的」という認識は、直ちに改めていただきたい。