男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「女が突然結婚に対して躊躇し始めた理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:入籍一週間前に、突然彼女から婚約破棄を言い渡された男。背後にあった本当の理由は…




マリッジブルー、という言葉がある。結婚自体に漠然と不安を抱いてマリッジブルーになる子もいるようだが、私の場合それとは少し違ったと思う。

― 私、本当にこの人と結婚していいのかな…。

色々なことが進むにつれ、不安が大きくなっていく。

「太郎ちゃん、私たち本当に結婚するのかな?」
「ん?どういう意味?」
「太郎ちゃんと結婚して、うまくいくのが自信がなくなってきちゃって…正直、籍を入れること、迷ってる」

そう彼に伝えると、とても驚いていた。別に誰も悪くはない。

でもこのまま結婚して、家族になっていくイメージが抱きづらくなっていた。

結局私の不安は拭えぬまま、私たちは入籍を“延期する”という道を選んだ。

だがこの選択が、私としてはかなり正しかったと思っている。


「この人、大丈夫かな…」女が不安になった理由は?


A1:仲の良い家族だな、くらいに思っていた。


太郎ちゃんと出会ったのは、食事会だった。

当時私は26歳で、彼は29歳。お互い交際当時から結婚を意識していたけれど、私が29歳になったとき、彼はようやく結婚を決意したらしい。

「綾奈、結婚して欲しい」
「うん…!!」

行きつけの店でされたアットホームで愛の溢れるプロポーズに、胸がいっぱいになった。

だがこのときの私は、気がついていなかった。ただの“恋人”同士だったから。

いざ婚約し、それぞれの実家へ挨拶に行き、すべて順調に進んでいるように見えていた私たちの関係。

しかしその仲が深まるにつれて、私はとても大きな疑問を抱くことになる。




それは、ある木曜日の夜だった。

「綾奈、今週末忙しい?両親が綾奈とランチしたいんだって」

太郎ちゃんからの問いに、私は頭の中でスケジュールを確認する。幸い、今週末は何も予定がない。

「私と?もちろん!太郎ちゃんも来るんだよね?」
「うん、行くよ〜」
「実家が近くて羨ましいなぁ。京都だと、帰ろうと思っても新幹線に乗らないといけないし」
「そうだよね」

― 実家が近いの、羨ましいなぁ。

そう思っていた。私の実家は京都にあるため、頻繁に通える距離ではない。その一方で彼の実家は自由が丘にあり、恵比寿在住の太郎ちゃんを羨ましくも思う。

「手土産、何がいいかな?」
「なんでもいいよ。強いていうなら、親父は和菓子が好きかな」
「わかった!なにかいい和菓子探して、買っていくね」

結婚の挨拶へ伺ってから、すぐに呼ばれたご実家でのランチ。少し緊張しつつも、彼のご両親は温かく迎え入れてくれた。

「綾奈さん、ありがとう。気を使わなくていいのに」
「いえいえ、ほんの気持ちばかりですが」
「この子、掃除とかちゃんとできてる?まったく家事ができないから、よく家に行って手伝ってあげていたんだけど…。綾奈さんがいてくれて、安心だわ」

実は、太郎ちゃんはまったく家事をしない。

それに苛立つことは何度もあったけれど、さすがに義母の前で息子の文句を言うわけにはいかない。

― そうか。ひとり暮らしの家が綺麗だったのは、お母様が家に来て掃除とかしていたからだったのか…。

30歳を過ぎた息子の家に、甲斐甲斐しく通って掃除をしてあげるのもどうなのだろうかと心のなかでは思ったが、これも言えない。

「いえ、太郎さんはよくやってくれていますよ!」
「綾奈さんさえよければ、いつでも遊びにいらしてね。太郎なんて、毎週末ご飯だけ食べに帰ってきてるから」
「ありがとうございます!」

この時はまだ、「優しいご両親でよかった」くらいにしか思っていなかった。


「え?嘘でしょ?」女が驚き、疑心暗鬼になった出来事とは!?


A2:自分の親のことを蔑ろにされている気がしたから


婚約した当初は、とても幸せを感じていた。でも日が経つにつれて、少しずつ綻びが見え始めてきたのだ。

「太郎ちゃん。両家の顔合わせ、いつにする?」

お互いの家には行けたものの、コロナのこともありまだ両家の顔合わせができていなかった。

「そうだよね…。どうしよう。もう少し状況が落ち着かないとできないよね」
「でも結婚するわけだし、うちの両親がちゃんと挨拶がしたいって言っていて」

うちの親は、太郎ちゃんの両親への挨拶ができていないことをとても気にしていた。だが太郎ちゃんはそこまで気にしてはいないようだった。

ただ驚いたのが、この発言だった。

「そうだよね。でも僕の両親が結構コロナ気にしてるから、東京からは動けないかも。だから顔合わせをするなら、綾奈のご両親に来てもらうしかないよね」

― え?

私も太郎ちゃんも、そして太郎ちゃんのご両親も東京にいる。たしかに、私の両親が東京に来たほうが話が早いのかもしれない。

たしかに今は外での食事会が主流だけれど、「嫁ぐ側(名字が変わる側)」となる私の実家のある場所に、太郎ちゃんの家族が挨拶に来るのが筋だ、と私は考えていた。

それなのに、自分たちはコロナが怖いから移動するのが嫌。でも相手の親の移動は気にしない…。

遠回しに、自分の両親を蔑ろにされている気がして悲しくなった。

そして当然のことながら、この話を私の両親に伝えるとひどく驚いていた。

だが「可愛い娘のためならば、どこへでも行くよ」と、東京まで来てくれることになった。

しかし後日。再び太郎ちゃんとこの件について話し合うと、彼はさらに驚くことを言い放ったのだ。

「やっぱり、うちの両親も東京がいいって。綾奈のご両親、来てくれそうかな?」

― 一家そろって、常識がないの?それとも、私の親なんてどうでもいいのかな?

「うん、結婚なんだしちゃんと挨拶に行くって」

モヤモヤが募っていく一方だった。




結局、変異株の影響で、顔合わせは延期になった。でも私のなかで、プツンと何かが切れた。

「顔合わせは延期になっちゃったけど、仕方ないね。ちなみに太郎ちゃん、結婚式はどうする?いつがいいかな」
「う〜ん。結婚式、必要かな?時期的な問題もあるし、式はしなくてもいいかなと思ってる」

別に、結婚式をやりたくないのはしかたない。そこを責めるつもりはない。

「綾奈は式やりたいの?」
「そりゃウエディングドレス着たいもん。私がしたいということもあるけど、親のためにやってあげたいかな」

自分のためというよりも、父にバージンロードを歩かせてあげたいと思っていた。

でも、太郎ちゃんはとても冷たくこう言い放ったのだ。

「親のためだったら必要ないんじゃない?僕たちの結婚なんだし」

― それはそうかもだけど…。少しは私の親の気持ちも考えてくれてもいいのに。

だから私は粘った。太郎ちゃんの考えが、少しでも変わればいいなと思ったから。

「まぁね…。でもせっかくだったら、小さくてもいいから挙げたいな」
「でもお金もかかるしね。綾奈がやりたいなら、もちろんするけど」
「そんな無理にはしなくてもいいけど…」
「一旦、親にも確認してみるね」

ずっと渋い顔をしていた太郎ちゃん。

しかしその数日後。私は耳を疑った。

「綾奈。やっぱり結婚式やろうか。うちの親がやってほしいんだって」

― 私の親がやりたいと言っている時はNOだったのに、自分の親が「結婚式をしてほしい」と言ったら、そこはすぐにYESなの??

太郎ちゃんもご両親も、悪気がないのはわかっている。

だからこそ問題だった。

埋められない、価値観の違い…。

私は太郎ちゃんのご両親も、家族になる以上大切にしようと思っていた。

でも彼には、そんな気持ちにはならない…いや、そんな発想すら一切ないようだ。

「そうなの?じゃあ太郎ちゃんも結婚式する気になった?」
「まぁ親が言うなら仕方ないよね。とりあえず、来年の春くらいで考える?」

私は、ちゃんと自分の親も大事にしてくれる人と結婚したい。

そう思い、入籍を延期することにしたのだ。

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毎回22時半に帰る女