栗剥き歴40年の農家直伝!生栗のきれいな剥き方と正しい保存方法【栗を楽しむ 前編】

農家直伝!自宅できれいに生栗を剥く方法

秋の味覚の代表ともいえる、栗。秋になるとスーパーでも生栗を見かけるようになりますが、剥くのは大変そうだからと、瓶詰めや剥き栗を買う方も多いのではないでしょうか。

しかし栗は、鮮度が命!剥きたて・ゆでたての味は格別ですし、すでに火が通った栗を材料に使うと、せっかくの形が崩れてしまいがちです。そこで本記事では、自宅でも簡単&きれいに生栗を剥く方法を栗農家の箱田さんに教えていただきます。

栗剥き歴40年の箱田さん。多いときでは、1日に8kgほど栗を剥くんだとか。「箱田農園」のある茨城県笠間市は、栗の名産地というだけあり、栗関係のお店が豊富にあります。箱田さんが剥いた栗は、JA(農業協同組合)に納品したのち、市内の有名な洋菓子店で使用されることもあるそうです。取材陣が剥いているところを見せていただくと、あっという間にきれいな形の剥き栗に。

達人技とも言える栗の剥き方をさっそく教えていただきましょう。栗のおいしさをキープする正しい保存方法もご紹介します。

用意するもの

・水
・ボウル
・指サック(事務用のものでOK・親指に合うサイズ)
・包丁(ペティナイフや文化包丁など使いやすいものでOK)
・栗

道具のポイント

特別なものを用意する必要はありませんが、一番のポイントは指サック。両方の親指にはめることで、すべりを防ぎます。農業用もありますが、事務用のもので問題ありません。怪我防止のためにも、必ず用意しましょう。

包丁は、果物ナイフや文化包丁など普段使っているものでOKです。ただし、鬼皮剥きと渋皮剥きでは別の包丁を使うほうが良いそう。

「硬い鬼皮を剥くと刃が欠けますし、刃が欠けた包丁で渋皮を剥くと剥きづらいのはもちろん、酸化が進み味が落ちる原因になります。

私達は専用の栗剥き包丁(写真中央・片刃の和包丁)という、切れ味の良い包丁を使います。包丁の切れ味は栗のおいしさにも繋がりますから、ご自宅でもよく研いだ包丁を使ってくださいね」

栗をきれいに剥く方法

下準備

ボウルに栗を入れ、浸るまで水をはります。最低でも30分~ひと晩、栗を水に浸しましょう。

「水に浸すことで、皮がやわらかくなり剥きやすくなります。熱湯なら10分ほどでやわらかくなりますが、栗が傷みやすくなるので、なるべく水かぬるま湯にしましょう」

1. 鬼皮を剥く

“座” と呼ばれる底面から頭に向かって、鬼皮を剥いていきます。座の境目に刃を当てたらグッと刃を食い込ませ、少しめくれた鬼皮を親指と包丁で挟んだら一気にむしり取るようにはがします。

側面の鬼皮をすべて剥いたら、最後に座の部分を包丁で取り除きます。

「栗は、表面の硬い鬼皮と、実を覆う薄い渋皮と2種類の皮を剥かなければなりません。硬さの異なる皮をいっぺんに剥くことはむずかしいので、順番に正しい手順で剥くことが大切ですよ」

2. 頭から一周するように渋皮を剥く

鬼皮が剥けたら、頭→側面→座→側面と一周するように渋皮を剥きます。包丁は動かさず、栗を回しながら剥きましょう。

「実は栗の形は、片側が平らで片側が丸いもの(1)と、両側が平らなもの(2)と、両側が丸いもの(3)と、3パターンあるんです。

(1)は平らな面が少ないので、刃を当てやすい側面部分を見つけ、形に沿ってぐるりと一周剥きましょう。(2)は平らな面が多く、一番刃が当てやすいです。(3)は丸い側面の境目に平らな面が少しあるため、そこをぐるりと一周すると剥きやすいですよ」

3. 残りの渋皮を剥く

側面の渋皮が剥けたら、面積が大きい表面の部分へ。平らな面の場合、小ぶりのものは一気に、大きいものは端から栗を回しながら剥きましょう。

一方で丸い面の場合は、頭から座に向かって数回に分けて剥きます。このとき、栗の形に沿ってふっくらと剥くと、きれいな栗の形に仕上がりますよ。

「ここでも、なるべく包丁を入れる数を少なくするのがポイント。そうすると凸凹の少ない、ツルッとした仕上がりになります。生栗は硬いですが、負けじと刃を入れ続けましょう!」

4. 渋皮をきれいに取り除いて水につける

剥き残しや深く入った渋は、じゃがいもの芽を取るように両側からV字状に包丁を入れて取り除きます。剥き終わった栗は水をはったボウルに入れ、アク抜きをします。

「栗は、じゃがいもと同じでんぷん質です。空気に触れると黒く酸化してしまうので、必ず水につけておいてくださいね」

編集部員も実際に剥いてみた結果…

まるでりんごの皮むきのように、スルスルと皮を剥いていく箱田さん。見ているととっても簡単そうですが、素人でも同じように剥けるのでしょうか。実際に編集部員もチャレンジしてみました。

編集部員「想像以上に力が必要ですね。でも鬼皮は最初の部分が剥けたらそこからペリッと剥けていくのが気持ちいいです。渋皮は……あれ、むずかしい。箱田さんのようなきれいに形が作れず凸凹になってしまいました……」

箱田さん「栗の形を大きく残したいという気持ちから、薄く剥こうとしてませんか?実はそれだと凸凹になりやすいんです。思い切って厚めに剥いたほうが、余計な手直しをしなくていいので結果的に大きく残りますよ。

それに、はじめてにしては上出来です。何個か剥いているうちに、上手に剥けるようになります♪ 」

自宅でも再チャレンジ!

箱田さんに教わったコツを意識し、自宅でリベンジする編集部員。10個ほど剥いた頃には、初回と見違えるほどきれいな栗の形に仕上がりました!自宅ならではの使い勝手&初心者目線から、編集部員が感じたポイントをいくつかまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。

・指サックは必須!滑り止め効果はもちろん、力が入れやすい
・包丁は絶対研いで。切れ味が良い包丁なら面取りもラクラク
・浸水時間は長めがおすすめ!ただし半日以上つけると傷みの原因になるので注意
・鬼皮を剥くときの最初の一刀は丸みがあるところに。包丁が入りやすくツルッと剥きやすい
・包丁の扱いが不安な方は、ピーラーでもOK!ただし身も削りやすいので仕上がりは小さめに

栗のおいしさをキープする方法は?

生栗はすぐ処理することが大切!

「生栗は日持ちしにくく、そもそも保存に向いていません。栗は木から落ちても生きている状態なんです。日ごとに変化するため、生栗はすぐに処理することが大切ですよ。農家でも、落ちた栗はその日のうちに拾うのが鉄則なんです」

■処理前の生栗を保存する方法
濡らした新聞紙を敷いたポリ袋に入れ、縛らずにチルド室に入れます。この場合、保管環境が良ければ7~10日ほど保存できますが、湿度が高いとカビの原因にも。2~3日の間に処理し、早めに食べきるのがベター。

■処理後の生栗を保存する方法
皮を剥いた栗は氷水の中に入れ、チルド室へ入れれば3日ほど持ちます。ただ、黒く変色しやすいのでこちらも早めに食べるのが良いでしょう。

長持ちさせるなら冷凍がおすすめ

「生栗もゆで栗も冷凍保存が可能です。食べきれない場合は、早めに処理して冷凍しましょう。どちらの場合も保存期間は約半年ですが、食べるのが早ければ早いほどおいしくいただけます」

■生栗・ゆで栗を冷凍保存する方法
皮を剥いた生栗の水分をよく拭き取り、チャック付きの保存袋に平らになるように入れます。しっかり空気を抜き、冷凍室へ。

■解凍方法
解凍する際は、沸騰したお湯の中に入れて元の状態に戻してから料理に使います。自然解凍は食感が悪くなるのでNG。必ず沸騰したお湯に入れて一気に解凍しましょう。

ていねいな手仕事がおいしさに繋がる

「鬼皮と渋皮をきれいに剥くことは、機械にはできません。栗の形を残して剥くのは手作業だからできることなんですよ」と箱田さん。自宅でもきれいに栗を剥けることにも驚きですが、市販の栗もひとつひとつていねいに手作業で剥かれていると思うと、感謝の念すら湧いてきます。

続く後編(9/26公開)では、「栗ごはん」のレシピをご紹介。栗の名産地・笠間市伝統の作り方で、栗をおいしくいただきましょう!


取材・文/鎌上織愛
撮影/宮本信義