タロットの歴史を解説! 15世紀から近代までの世界のタロット史を振り返る
「タロットカード」の絵柄が創り出す独特の世界観はいつの時代も人々を魅了します。タロットにはどのような歴史があり、それは今、私たちが楽しんでいる占いに、どのようにつながっていったのでしょうか? 世界のタロットの歴史を紐解いていきます。
■ヴィスコンティ家のタロット
現存する世界最古のタロットです。15世紀にイタリア・ミラノの領主であったヴィスコンティ家が、画家に描かせたと言われている手描きのカード。特に「ビスコンティ・スフォルツァ版タロット」は、現存する最古のタロットカードとして有名です。
こちらは1460年頃にミラノ公、フランチェスコ・スフォルツァが画家ボニファキオ・ベンボ(アントニオ・シコグナとの説も)に命じて作らせたそう。現在のスタンダードなタロットデッキとはデザインが異なります。それはすべて手描きの細密画として描かれ、庶民が入手できるような安価で手軽なものではありません。美術品としての位置づけに近いものでした。
■ジェブラン『原始世界』
18世紀のフランスの学者クール・ド・ジェブランが著した、タロットの起源はエジプトであるとした書物。彼は数千年前にエジプトの神殿が破壊された際に、密かに持ち出された秘儀がそのカードの絵柄として描かれていると考えました。それをジプシーたちがヨーロッパ中を旅する間に、各国に広まったと解説しています。ただ、この説には裏付けがなく、ジェブランのエジプト文明への憧れと、タロットの不思議な絵柄を合わせた壮大なファンタジーだという説も。
■レヴィ『高等魔術の教理と祭儀』
フランスの詩人、エリファス・レヴィの書物。タロットカードの1枚1枚は、ユダヤ教のカバラの教えにあるヘブライ語のアルファベットに対応したものとされています。さらにカードと天体を対応させ、今のタロットカードの原型のひとつにもなりました。
その考え方は後に多くのオカルティスト(神秘学者)や劇作家たちに影響を与えたと言われています。なお、レヴィの死後、パピュスが『ボヘミアンのタロット』という本を書き、レヴィのタロットとカバラの関係をより複雑で難解なものへと導いたようです。
■「黄金の夜明け団」設立
「黄金の夜明け団」とは、ウィリアム・ロバート・ウッドマン、ウィリアム・ウィン・ウェストコット、マグレガー・メイザースの3人が結成した、魔術研究のための秘密結社。19世紀最大の魔術集団と言われ、その魔術や文書は後世にまで大きな影響を与えました。「黄金の夜明け団」の教義は、薔薇十字団やフリーメイソン、神智学協会の教えを受け継ぎ、ヘルメス主義、エジプト魔術などが混ざり合っています。今もよく使われている「ウェイト版(ウェイト=スミス版/ライダー版)」のタロットカードは、「黄金の夜明け団」に所属していたアーサー・エドワード・ウェイトが考案したもの。絵柄を描いたのはイラストレーターのパメラ・コールマン・スミスです。
■ウェイト『タロットのカギ』
現在「タロットカード」と言うと、多くの人が思い浮かべるのが、アーサー・エドワード・ウェイトが考案したカードでしょう。『タロットのカギ』はそんな、世界で最も人気があるとされるウェイト版タロットの公式解説本。タロットカードの伝統や歴史・背景・図柄や記号の解釈などを紹介しています。この本は後に、カードの白黒の挿絵を入れて『タロットの絵の鍵(Pictorial Key to the Tarot)』へと改訂されました。現在のタロットカードの読み解き方は、これがベースになっていると伝えられています。
■クロウリー『トートの書』
イギリスの神秘主義者・魔術師であるクロウリーによるタロットの解説書。カードの意味だけでなく、その表象の由来となる神話学や占星学について書かれ、魔法に科学的な根拠を求めるところも特徴と言われています。
クロウリーが考案したタロットは「トート・タロット」。それまでのウェイト版のような親しみある絵柄とはまったく違い、独創的な絵柄で人気があります。
■70年代以降、タロットがブームに
70年代にアメリカ西海岸から始まったスピリチュアルな「ニューエイジブーム」の中で、タロットは新しい価値を与えるツールとして人気を集めます。ビートルズなどのアーティストが好んだり、レッド・ツェッペリンの『天国への階段』のアルバムに“隠者”の絵が描かれたりと、ブームが起こるのです。映画監督のホドロフスキーがマルセイユタロットの復刻を手がけたことも、これらのアーティストに影響を与えたと言われています。