●ASUSから、高性能で上質なChromebookが登場

ASUSから新作Chromebookが発売された。「ASUS Chromebook Flip C436FA」は、14型ボディに第10世代Intel Coreプロセッサを搭載したハイエンド帯の2-in-1 Chromebookだ。その性能もさることながら、ホワイトとクロームの配色、シャープなスクエアデザインで、オトナが「試してみたい」と思わせる製品に仕上がっている。

ASUS Chromebook Flip C436FA (2020年10月28日発売 税別104,364円から)


14型ボディの2-in-1 Chromebookだ


○Core i7のChromebookは新境地を切り開くか

Chromebookは、GoogleのChrome OSを搭載したクラムシェルあるいは2-in-1のノートパソコンだ。スマートホン用OSのAndroidと同様、動作が軽快でアプリの起動時間も速い。ネットワークに接続して使用するクラウド運用が前提という特徴もある。

2020年は日本国内においてChromebookが躍進した年と言える。文部科学省が推進するGIGAスクール構想などの後押しもあり、とくに教育分野においてここ数年Chromebookのシェアは急増している。ただしASUS Chromebook Flip C436FAは、よくある教育分野向けパソコンとは少し違う。

日本市場で販売されているChromebookを見ると、MediaTekのARM Cortex系CPUやIntel Celeron系CPUを搭載する製品が安いと2万円台からあり、GIGAスクール構想ではこうしたコスト重視の製品が採用されがちだ。Chromebookはほかのパソコン用OSと比べると動作が軽く、ハードウェアに求められるスペック要件が低いという要因もあるだろう。

一方のASUS Chromebook Flip C436FAは10万円を超える、Chromebookとしてはかなり高額な部類に入る製品だ。スペックの違いでいくつかのモデルが展開されるが、今回試す評価機はCPUがIntel Core i7-10510U、メモリ容量が16GB、SSDがM.2で容量512GB。WindowsのノートPCだったとしても上位クラスといえるスペックだ。

プロセッサはIntel Core i7-10510U


メモリは16GB、ストレージは512GB(利用可能な容量は457.02GBという表示)


OSはChrome OS バージョン:85.0.4183.131(64bit)


インストール済みアプリは基本的なもののみで、必要に応じてPlayストアからインストールする


Windows 10が快適に動作するハードウェアにChromebookをのせたらどうなるのだろうか。WindowsノートPCもここ数年はストレージの進化、とくにM.2 SSDによってレスポンスが高速化された。ハイブリッド スリープ機能によって液晶パネルを開けばすぐに作業が再開できるようになってきた。一方、C436FAは、Androidスマートホンがそうであるように、一瞬という時間すら感じないほどに再開できる。

ウィンドウを開いたりファイルを開いたりといった、普段のちょっとした動作も非常にサクサク快適だ。個々の動作はあくまでコンマ数秒の違いで、人によっては気にならないかもしれない。ただし、C436FAと普通のWindowsノートPC、2台を並べて比較すれば明確に速さの違いに気付く。そして快適だと思う。これを仕事に使ってみたらどうなるだろうかと想像してしまう。

○コストを度外視したデザインと機能性

C436FAは液晶天板がホワイト(エアロジェルホワイト)、パネル面はブラックでツライチ、キーボード側本体はシルバー、そしてヒンジや本体排気口部分はクロームという配色だ。天板のホワイトは特殊な塗装を用いており、普通に見れば純白だが、特定の角度から光を当てるとブルー〜パープルに見える。貝に見られる真珠層のようなものだろうか。そして角は丸めているがシャープなボディ。どの角度から見ても上質なデザインだ。

天板部はまぶしいほど白いホワイト


眼で見るよりも淡くなってしまっているが、光の角度によって青〜紫の光沢が現われる


ヒンジとその間部分にある排気口はクローム


液晶面のベゼル部分はブラック、本体部分は明るめのシルバー


液晶ディスプレイは14型だ。その上で本体サイズは319.5×205.3×13.7mm。ベゼルの幅を見ると、左右は当然として上部もそうとう薄い。いわゆる狭額縁ベゼルの採用によって画面占有率85%を実現している。解像度は1920×1080ドット。2-in-1としてタブレットモードでの利用も想定されるためグレアコートで視野角も178°と広い。その上で、色味に関してはsRGB比100%。この部分の品質も手を抜いていない。

狭額縁液晶パネルを採用し画面占有率が高く、パネルとベゼル間に段差はない


上部ベゼルも十分に幅が狭いが、この部分に92万画素のWebカメラを収めている


発色が良く視野角も広い


厚みは13.7mmと薄く、1.15kgと軽量だ。タブレットモードにした際、もちろん単体タブレットと比べれば厚く、重いことは当然だが、違和感は小さいように感じる。

キーボードをフリップしてタブレットモードにもなる


小さなテーブル上での映像視聴にはテントモードも便利


一部のモデルには4,096段階の筆圧検知対応のタブレットペン「ASUS USI Pen」が付属する。お絵かきはもちろん、電子サイン、デザイン分野の校正など用途は幅広い。そしてペンはマグネットによって本体側面に装着することができる。

ASUS USI Penは電池式で4,096段階の筆圧検知対応


タブレットモードでのお絵かきなどができ、感覚的には大きなAndroidタブレット


インタフェースは左右のみ。そしてUSBに関してはType-Cのみだ。USB Type-C端子は左右側面のヒンジ寄りに各1つ。この2つのUSB Type-Cは、データ転送のほかに充電(USB PD)と映像出力に対応している。そのほかには左側面にヘッドホン/マイクコンボ端子、ボリューム調節、電源ボタンが、右側面にmicroSDカードスロットがある。microSDカードスロットはカメラやスマートホンからデータの転送をしたり、本体ストレージを補ったりといった活用方法がある。そして先に紹介したとおり、ASUS USI Penの装着場所でもある。



左右側面にはUSB Type-Cをメインに最小限のインタフェースしかない


ASUS USI PenはmicroSDカードスロット部分に磁石で貼り付けることができる


harman/kardon認証を得た無指向性4スピーカー仕様とされる


周囲のWindows PCとの連係を考えると、外付けHDDやプリンタなどとの接続にせめて1つでもUSB Type-A端子があればよかったのにと思う。ただし、Chromebook自体がクラウド前提であり、これにのっとるならばストレージもプリントもクラウドないしはワイヤレスネットワーク経由というのがスマートなのかもしれない。

充電アダプタはUSB-C充電に対応した45Wのものになる。製品付属のものとしてはかなり小型と言えるだろう。持ち運びでかばんに収めても気にならないサイズと重量だ。ただしケーブルは直付けであり、プラグは収納できないタイプだった。

ACアダプタはUSB-C充電対応でまずまず小型・軽量


ACアダプタは5/9/15V×3A、20V×2.25A(最大45W)出力に対応。また、一般的なUSB PD対応充電器でも充電可能だった


なお、ChromebookのキーボードはPC/Macとは配列から大きく異なる。C436FAのキーボードは、左CapsLock/Shift/Ctrl/Altが大きくて指はこびはかなりゆったりとしている印象だ。キーはストロークが1.2mmとされるがやや浅く感じた。そして押下時にプチっとした感触の反発力だ。一方、タッチパッドは面積もまずまず広く操作性はよい。

78キー日本語配列のキーボード。バックライトも搭載している


パネルを開いた際、天板部分が底を押し上げるエルゴリフトヒンジ


キーボード面右上にあるのは指紋認証センサー


●ベンチマーク、ハイエンドスマホ級の性能

○ゲームは想定していないが、ハイエンドスマホに匹敵

ASUS Chromebook Flip C436FAのパフォーマンスをベンチマークで見ていこう。ここで利用したのはPrimate Labsの「Geekbench 5」と、ULの「PCMark for Android Benchmark」と同「3DMark」。

Geekbench 5のスコアではSingle-Coreが1076、Multi-Coreが3177だった。このスコアはSnapdragon 865 Plusよりもやや高い水準だ。

Geekbench 5


続いてPCMark for Android Benchmark。Work 2.0 performanceは12402、Computer Visionは8356、Storage 1.0は30668、Work performance 1.0は18862だった。ここもおおむねAndroidスマホのハイエンドに近い数値と言えるのではないだろうか。

PCMark for Android Benchmarkから、Work 2.0 performance


PCMark for Android Benchmarkから、Computer Vision


PCMark for Android Benchmarkから、Storage 1.0


PCMark for Android Benchmarkから、Work performance 1.0


3DMarkはSling Shotが4593、Sling Shot Extremeが4457。一部のAPIには非対応で実行できないものがあった。ここはC436FAがCore i7の内蔵GPU機能を利用している影響もある。3Dゲーム目的であればハイエンドスマホのほうが適している。

3DMarkから、Sling Shot


3DMarkから、Sling Shot Extreme


テストではChromebook用のベンチマークソフトを用いたが、同スペックのWindows 10搭載ノートPCと変わらない性能なのだと思われる。OSが異なることで操作のレスポンスは違うものの、ハードウェアは同じだ。ゲーム用途には向かないが、モバイルノートパソコンの代替という視点では十分にハイスペック、高性能であることは間違いない。

G Suiteを使って仕事をする程度だとここまでのスペックは使い切れないかもしれない。ラグを感じさせないほどの操作レスポンスはもちろんビジネスをもっとスマートにしてくれる可能性があるとして、ASUS Chromebook Flip C436FAに似合うのはもっとパフォーマンスを必要とする用途ではないだろうか。

たとえば写真編集、映像編集といったクリエイティブ用途だ。残念ながらAndroid用映像編集アプリのAdobe Premiere Rushは非対応だったが、同じカテゴリーではCyberlink Power Directorなどがある。またはChrome OS上でLinuxを運用することができるので、Linuxアプリを活用することもできるだろう。そうした意味では、C436FAをどう使いこなすかはアイディア次第、これからと言ったところだろう。

最後にPCMark 10でのバッテリ駆動時間テストでは10時間23分という結果だった。ワークロードが重いPCMark 10でこれだけの結果が出ていれば、実際の使用でもこれと同じかさらに長時間の運用が可能だろう。

PCMark for Android BenchmarkのWork 2.0 battery lifeの結果


○新領域を切り開く!? プレミアムな高性能なChromebook

ASUS Chromebook Flip C436FAはラグジュアリーなChromebookだ。MacBook、あるいは最近ではSurfaceのようなデバイスでモバイルワークをするのがステータスとなっているようだが、ChromebookではASUS Chromebook Flip C436FAの様な製品がそのポジションをになうかもしれない。そのくらいデザインと性能に関してはプレミアムを感じさせてくれる。

Chromebookの新領域を切り開くかもしれない1台だ


あくまでChromebookとして見れば価格は高く、安価なパソコン代替品を望むニーズからすれば用途は思い浮かばないかもしれない。パフォーマンスはChromebookにとっては過剰と思えるほどに高い。これは、これまでのChromebookではできないと思われていた用途を切り開いてくれる製品なのだろう。