さいたまスーパーアリーナでの発表会。「日野プロフィア=写真右」

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 「達成感がこみ上げてきた」。エンジン設計部の堀内裕史副部長は、さいたまスーパーアリーナ(さいたま市中央区)で5月に開かれた大型と中型トラックの新型車発表会での心境を思い起こす。

 堀内副部長が開発の当初から携わった大型トラック用の高性能2段過給エンジン「A09C」は、14年ぶりに全面改良した「日野プロフィア」に搭載された。従来の13リットルエンジンから9リットルエンジンにダウンサイズし、約300キログラムの軽量化を実現した。機械式自動変速機(AMT)「プロシフト」搭載車では、2015年度燃費基準プラス10%を達成。エンジンと排出ガス後処理装置の改良により、16年排出ガス規制に適合させた。

 トラックのエンジンは排出ガス規制への適合はもちろん、低燃費化や軽量化の要請が高まっている。ダウンサイズすることで、軽量化や低燃費化を図ることはできる。ただ、問題は小排気量化による動力性能だ。この課題を解決するために出した答えが、2段過給ターボと高圧・低圧の空冷インタークーラー(熱交換器)の組み合わせだった。過給効率が大幅に向上し、小排気量化しながらも高出力・高トルクなエンジンにすることができた。

 もっとも、開発が順調に進んだわけではない。エンジン動作テストを数千時間すると、ターボユニットを締結するボルトやガスケットなどの部品で熱疲労による不具合が出た。パワートレーン実験部第2エンジン実験室の川崎敏伸室長は「問題は一度に出てこない。“モグラたたき”のようだった」と当時を振り返る。

 課題は多くあったものの、新型エンジンを開発できた裏には「部品サプライヤーの協力があったから」(堀内副部長)と明かす。サプライヤーの技術者は日野自動車の開発部門に常駐して、問題が起きるたびに解決策を議論し合った。堀内副部長は「(人ごとではなく)主体的に情熱を持って、開発に取り組んでくれた。まさに“日本力”を痛感した」と強調する。

 日野自の製造や製造技術部門がエンジン設計の当初から携わったことも開発成功の大きな要因になった。エンジン設計部の佐野貴弘A系エンジン設計室長は「関係部門が大部屋に週1、2回集まり、効率的な製造工程のための部品形状などについても話し合った」という。企業や社内の部門を超えた連携が、新型エンジンを完成に導いた。

(文=尾内淳憲)