TBS「A LIFE〜愛しき人〜」公式サイトより

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 木村拓哉(44)主演のドラマ「A LIFE〜愛しき人〜」第9話が12日に放送され、平均視聴率は14.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となりました。裏にWBCがあったにもかかわらず、前回から1.0ポイントしか下がらなかったという安定ぶり。視聴者の心をガッチリとつかんでいるのは間違いなさそうです。

 これが、「SMAP解散後初の主演となった木村拓哉が視聴者の心をガッチリつかんだ」と胸を張って言えるなら素晴らしいのですが、そうでもないというのが「A LIFE」の悲しいところ。中盤以降は自室に閉じこもって深冬(竹内結子)の手術法を考える難しい顔の演技ばかりだった木村拓哉に比べて浅野忠信のほうが圧倒的に出番が多く、見せ場もたっぷり。浅野演じる副院長の檀上壮大は、院長(柄本明)には認めてもらえず、沖田医師(木村)にはコンプレックスを抱き、外科部長(及川光博)はいまいち信用ならず、愛人(菜々緒)には裏切られ、最愛の妻(竹内)は脳腫瘍に冒されるという四面楚歌ぶり。

 これに対して木村演じる沖田が抱えているものといえば、シアトルに行っている間に元恋人の深冬を親友の壮大に取られていたというもやもや感のみ。母親が病気で死んだことで医者を目指したというありがち設定はあったものの、特にトラウマを抱えているような描写もなく、毎日何事もなくひょうひょうと仕事をこなすような人物。

 一方、毎週毎週さまざまな困難に遭遇する壮大は、壁を殴って穴を開けたり、奇声を発したり、板チョコをバリバリ食べたり、渾身の顔芸を披露したりしながらその困難に立ち向かってきました。そのキレ芸に拍手喝采を送っていた視聴者も少なくないはず。ネットにあふれるこのドラマの感想の多くも「浅野忠信がおもしろい」といった内容のものでした。

 別に木村拓哉が嫌いなわけでもなければ浅野忠信が好きなわけでもありませんが、「次週は浅野忠信がどんなおもしろ演技を見せてくれるか」は気になっても、「次週木村拓哉はどれだけかっこいいか」はまったくと言っていいほど気になりません。そう考えるとこのドラマは「決して善人とは言えない1人の男(浅野忠信)が自業自得気味に様々な困難に見舞われながら生き抜いていく」過程を見るドラマとして視聴するのが正しいのかもしれません。

 第9話のラストでは病院を勝手に他の病院の傘下に入れようとした企みが院長にバレ、副院長を解任されることになってしまった壮大。最終回に待っている深冬の手術の行方については「失敗するはずないから成功するんだろうなー」としか思えませんが、壮大が今後どうなるのかはめちゃくちゃ気になります。

 第9話はいろいろツッコミどころのある回でしたが、時間を割いた割りに意味不明だったのがベルギーの王族を手術した医師に母親を診てもらいたいとこだわる子どものエピソード。そこまで知っているのに医師の名前を知らないのはまだわかるとしても、「そのお医者さんの名前を教えてください」と言わないのはあまりにも不自然。そして、かたくなにそれは自分だと名乗り出ない沖田医師も意味不明。結局井川医師(松山ケンイチ)が明かしてしまい、子どもが「マジですか」と驚くという水戸黄門的展開に。10分拡大して、いったい何がしたかったんでしょうか。

 目の前にいる人がテレビにも映っているという現象を理解できない壮大の娘もかなり変。今どきの子どもは赤ちゃんの時からスマートフォンに慣れているので、映像は実物とは別だとしっかり認識しています。どうでもいいはずのシーンなのに非現実的すぎて、何か意味があるのかと思ってしまいます。

 オペナースの柴田(木村文乃)についても、井川の話を徹底して無視する姿に「さすがにやりすぎ」との声が。当初はデキる女っぽくて人気がありましたが、最近は「嫌みっぽい」「鼻につく」「上から目線で偉そう」「人によって態度変えすぎ」と不評も多くなっています。いよいよ次週で最終回。果たして壮大は最後に幸せになれるのか、注目です。

文・中島千代