フジテレビ『嘘の戦争』公式ホームページより

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 草なぎ剛(42)が主演を務める「嘘の戦争」(フジテレビ系)第9話が7日に放送され、平均視聴率は前回より1.0ポイントダウンの10.5%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)となりました。裏にWBC初戦の中継があった中で、まずまず検討した格好。

 第8話のラストで、自分を育ててくれた園長・三瓶(大杉漣)が30年前の真相を知っていたのにこれまで口を閉ざしていたことを知り、復讐の炎をメラメラと燃やした一ノ瀬浩一(草なぎ剛)。ハルカ(水原希子)の静止も聞かず、何かに取りつかれたかのように園長への復讐を口にしていました。これを受けて、第9話は浩一が非道なことをしてしまう悲しいお話になりそうだと予想していた人も多いはず。

 予想通り、浩一はオープニングから三瓶を陥れるための準備を着々と進め、三瓶が娘の婚約者の両親と顔合わせをしている席で偽写真をバラまこうと計画。意を決して立ち上がり、写真の束を空中に放り投げてバラまきました。とうとうやってしまった……。恩をあだで返すような主人公に待っているのはバッドエンドのみか……と思いきや、それは浩一の頭の中で描いたシーン。実際には三瓶を恨むのは筋違いだったことに気付き、黙ってその場を立ち去りました。

 このドキドキさせる演出に、Twitterには「三瓶さんへの復讐が妄想で終わって良かった」「三瓶さんには復讐しない展開には結構ウルっときた」などの声があふれました。当初から主人公が善人でないことはわかっているのに、人の道に外れたようなことはしてほしくないという視聴者心理をうまく手玉に取ってくれた展開に脱帽です。

 この直前に、三瓶の娘の誕生日が自分と一緒であったことを知った浩一。本当は帰って娘の誕生日を祝ってやりたかったはずなのに、帰らずに自分の誕生日を祝ってくれていたのだと気付きます。浩一が三瓶の娘(国仲涼子)に言った「(三瓶)守さんの嘘にオレは救われた」の一言に、浩一の心情の大きな変化が表れています。

 楓(山本美月)からも、30年前に嘘の証言をしなければ殺されていたに違いないのだから、嘘をついた選択は正しかったのだと諭された浩一。自分が利用していた相手に澄んだ目で見つめられ、「許してあげて。9歳の千葉陽一くんのこと。あの嘘があなたを救ったんだから」と言われて、心が動かなかったはずはありません。嘘を付いた自分を許せず、嘘のせいで詐欺師となったけれど、本当はその嘘のせいで命を長らえ、園長の嘘のおかげで孤独から救われていたことに気付く。30年間真相を黙っていたことをあらためて詫びる三瓶に「もうオレ、大丈夫なんで」と泣き笑いして見せた一ノ瀬浩一の胸の内に去来していたものは、いったいどんな深い感情だったのでしょうか。

 このシーンでの草なぎ剛の演技についても、Twitterには「今まで自分を愛してくれていた三瓶さんを思い出し、愚かだった己を知ったような表情がほんと良かった」「今回は泣きながら笑う演技がスゴイ!「もう大丈夫」って言いながら泣きながら笑って、三瓶を許すところが印象的だった」「『もう俺、大丈夫なんで』って言うまでの複雑な表情と絶妙な間がとてもリアルで切なくなった」など、絶賛の声が多数上がっています。

 最後のターゲットを二科興三(市村正親)1人にしぼった浩一。謝罪会見を開かなければ興三の肉声テープと粉飾決算の証拠を開示すると脅迫するも、先手を打った興三は自ら過去の粉飾決算を公表。裏切ったバーのマスター・百田(マギー)とカズキ(菊池風磨)にマスターテープは盗まれ、データもすべて消去されてしまうという絶体絶命の展開に。さらには2000万円の詐欺の件で警察に追われるなど、もはやどこにも勝ち目がない様相を呈しています。百田とカズキは本当は裏切っていないんだろうとの予想もちらほらありますが、最後に視聴者に対して仕掛けられているのは、そんなに簡単に予想できる範囲の嘘ではない気がします。最終回はバッドエンドなのか、それとも……。

文・中島千代