年度末を控え、自動車業界も繁忙期を迎えると同時に、車検の混雑期も到来しています。一定の期間で受けなければならない車検、なぜ行われるのでしょうか。

「車検」と「点検」は別物

 異動や転勤が多くなる年度末は、自動車業界の決算シーズンとも重なり、自動車の流通が活発になります。また新年度に入った4月も購入が多くなる時期です。これと時を合わせるように、車検を迎える自動車も3月をピークに、2月から4月が1年で最も多くなります。

車検の前後には、「24ヵ月点検」などの法定点検も合わせて行われることが多い。写真はイメージ(写真出典:写真AC)。

「車検」といえば、自動車を業者に預けて点検整備を行うイメージがあるかもしれませんが、点検整備と「車検」は別物です。「車検」すなわち自動車検査は、その自動車が国の定める保安基準に適合しているかを、一定期間ごとに国が検査する制度であり、それに際して点検整備も行われることが一般的です。基準に適合した証である自動車検査証(車検証)には、車種に応じて有効期間が定められており、この期間を過ぎた自動車は公道を走れません。一般的な自家用の普通自動車における有効期間は、車両登録から初回車検までは3年、以降は2年です。

 車検は、車検証に記載された満了日までの1か月のあいだに受けるのが一般的です。この期間内であれば、早く受けても次の満了日が繰り上げられることはありません。しかし、1か月以上前に受けた場合、有効期限はその日から2年間になります(使用本拠地が離島である自動車などを除く)。

 車検が受けられる場所は、各都道府県にある国の自動車運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)、もしくは国に代わって自動車検査員による検査が可能な民間の指定整備工場です。自分で自動車を運輸支局に持ち込んで検査を受ける、いわゆる「ユーザー車検」のほか、ディーラーや車検業者に委託するなど、さまざまな方法が存在します。運輸支局でのユーザー車検は、受検日の2週間前から予約できます。

費用と時間はどのくらい? 「車検切れ」はどうなる?

 車検に際してかかる費用は、車種や車両重量、経過年数によって異なりますが、検査手数料ぶんと自動車重量税ぶんの印紙・証紙代、および車検とともに更新が必要な自賠責保険料が、法に基づく「法定費用」で、およそ3万円から7万円です。ユーザー車検であれば車検費用はこれだけですが、実際には法律で定められた「24ヵ月点検」などの法定点検を車検と同時期に行う必要があり、それを素人が行うことは困難です。このため、車検を業者や民間整備工場に委託する場合の多くは、法定点検や検査代行料などがセットになった価格が提示されます。

車検を業者に委託する場合は、自賠責保険、重量税、印紙代などの「法定費用」のほかに費用がかかる。写真はイメージ(写真出典:写真AC)。

 運輸支局での検査そのものは数分で終わり、合格すればその日のうちに車検証が交付されます。民間指定整備工場で検査を受けて合格した場合は、15日間有効の保安基準適合証と保安基準適合標章が発行され、一般的には工場側で後日、保安基準適合証を運輸支局に提出します。これにより、自動車を持ち込まずに運輸支局で車検証が交付されます。また保安基準適合標章の有効期間中は、その自動車を公道で走らせることも可能です。

 このことから、民間指定整備工場などでは法定点検と車検を含めて「1時間車検」などとうたうところもあります。ただし点検整備にかかる時間は、その自動車の状態に応じて異なるので、そうした「スピード車検」が必ずしも実現できるわけではありません。

 もしも車検証の有効期限が切れてしまったらどうなるのでしょうか。そうした「車検切れ」の自動車で公道を走行すると、違反点数6点、30万円以下の罰金が課されます。ほとんどの場合は同時期に自賠責保険も切れているので、さらに違反6点と50万円以下の罰金が課され、90日間の免許停止になります。車検切れの自動車を改めて車検に出すことも可能ですが、公道を走行できないのでトラックなどで取りに来てもらうか、仮ナンバーを取得する必要があります。

2017年2月から審査基準「厳格化」、どう変わった?

 2017年2月から、車検における保安基準適合性審査を担う自動車技術総合機構の基準が一部変更されています。メーターパネルにある5種類の警告灯(前方エアバッグ、側方エアバッグ、ブレーキ、ABS、原動機)が点灯したり、警報ブザーが鳴ったりしたままの車は、車検を受け付けてもらえなくなりました。

メーターパネルにはさまざまな警告灯がある。写真はイメージ(写真出典:写真AC)。

 自動車技術総合機構は、「5種類の警告灯については、法律で定められた車両の保安基準に記載がなかったり、車種や年式によって適合・不適合の基準が異なっていたりして、点灯していても車検に通るケースがありましたが、今回、一律の基準を定めました。これらに限らず警告灯の点灯は何らかの異常が生じていることを示しているので、点検整備したうえで審査を受けてください」といいます。

 この変更は現場にどう影響しているのでしょうか。民間指定整備工場のオヤマ(栃木県宇都宮市)は「警告灯が点灯している場合は、車検前の点検整備で解消するようこれまでも勧めていたので、特に変わったことはありません」といいます。ただ同社も、また自動車技術総合機構も口をそろえ、有効期限ギリギリを避けて「余裕をもって車検に臨んでほしい」と話しています。

【画像】点灯していると「車検NG」になる警告灯の種類

2017年2月から、エアバック類、ブレーキ、ABS、原動機の警告灯が点灯している場合は審査が行われなくなった(画像出典:自動車技術総合機構)。