歌いたいんだ。お互いに、どこまでも寄り添って――96猫 2ndミニアルバム『7S』インタビュー
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取材・文/照沼健太 デザイン/ないとうはなこ
メジャーデビューして半年。変わったこと、変わらないもの。
――今年6月にメジャーデビューされて、もうすぐ半年が経ちます。メジャーデビュー前後で、96猫さんを取り巻く環境は変わりましたか?
デビューしてからプロの方々とご一緒する機会が増えて、ちゃんとしなきゃと思うようになりました。チームで動くことが増えたので、今までできなかったことができるようになった反面、これまで以上に責任感が増しました。
――ファンの方の反応はいかがですか?
以前よりもたくさんの方に聴いていただいているなぁとうれしく思います。『Crimson Stain』で知りましたって、ツイッターにリプライをくださる方もいて。以前からのファンの方には、「メジャーデビューしても変わらないでいてくれてよかった」と言われることも多いので、それはよかったと思っています。
――11月23日には、『Crimson Stain』に続く2ndミニアルバム『7S』をリリースされますが、リリースが決まったときの気持ちは?
正直、「えっ、もう次回作ですか?」って思いました(笑)。6月にデビューして、夏はイベントに出演させてもらって、9月にようやく落ち着いてきたかな…ってところで今回のお話をいただいたんです。
――たしかに早いペースですよね。
これがプロの世界なのかと思いましたね。でも、戸惑いながら「何するんですか?」って聞いたら「96ちゃんがやりたいことをやればいいよ」と言ってくださって。それならば!と、ずっと前からやりたかったコラボCDを作らせていただくことになりました。
――コラボCDは、96猫さんたっての希望だったんですね。コラボ相手のアーティストの方々も、96猫さんが人選を?
はい、そうです。人選も選曲もパート分けも、私がしました。最初はフルアルバムになっちゃうくらいたくさんの人の名前を挙げてしまって、「ミニアルバムだから」とスタッフさんに諭されたんですけど(笑)。
――おぉ、それだけコラボに対する熱意が…! では、リード曲である『ブラックペッパーwithろん』からお伺いします。この曲は、ニコニコ動画で活躍されている歌い手・ろんさんとのコラボですね。
ろんさんは……ただのファンです(笑)。私が「歌ってみた」の活動をはじめて2〜3年後に、ろんさんの『ジュブナイル』という曲に出会って、そこからもうずっと目がハートですね。
――目がハート(笑)。
「なんなの、このかわいい声! この表現力は!」って(笑)。そこからハマってCDを買って、Twitterもフォローしてっていう、本当にただのファンです。
――コラボのオファーをする以前に、ろんさんと交流はあったんですか?
ろんさんは、Twitterであまり人をフォローされない方なんですけど、ある日、ろんさんからフォローを返してもらってるとファンの方に教えてもらったんです。
――おぉ!
最初は「なりすましじゃないの?」って思いましたが、本当にフォローされていてうれしかったですね(笑)。そこからろんさんと一緒に何かやりたいとずっと思っていたので、今回お願いしたところOKしてくださって、感涙でした。それとスタッフさんのサプライズで、私の誕生日にろんさんから電話をいただいて、そのときも泣いちゃいました。
――スタジオには一緒に入ったんでしょうか?
いえ、一緒には入ってないです。ろんさんはどこにも姿を見せないんですよ。ファン心理的には、ここまで来ると、姿を見せないことを貫いてほしいと思ったり(笑)。
――(笑)。できあがったものを聴いてみて、いかがでしたか?
これまでろんさんが生放送で歌っていたものに、自分で勝手に歌を重ねたりしていたのですが、実際のコラボはそれとは全然違いましたね。って当たり前ですけど(笑)。自分が歌っているところにろんさんがハモってきたり、自分が歌うのをやめたところからろんさんが歌い始めたりとか、ザ・コラボって感じでうれしかったです! 自分で言うのもなんですけど、ふたりの声が合っているなと思いました。
あこがれの人と、念願叶ってコラボが実現。
――続いて『鬼KYOKAN with 下田麻美』は、声優・下田麻美さんとのコラボです。
下田さんが3〜4年くらい前にアニメイトさんでイベントをしていたときに、96猫と囚人PさんでやっていたCLΦSHというユニットのCDを耳にして、スタッフさんに買ってきてもらったそうなんです。もともと私は鏡音リン・レンやTHE IDOLM@STERで下田さんのことを存じ上げていたので、そんなスゴい人が自分の歌を聴いてくれていることにとてもビックリしました。
――うれしいですよね!
その後、囚人Pさんが「僕、今度下田さんと会うけど来る?」って声をかけてくれて。そこで初めてお会いしたんですが、お互い歌うことが大好きという共通点があり、すっかり意気投合して、一緒に何かやりたいねって盛り上がって。あれから時間が経っちゃいましたが、今回ようやく念願が叶いました。
――とてもインパクトがある曲ですよね。
テンポも早いし、聞き取るのも大変ですよね。今回、お互い前半と後半で声を変えて歌ったんですけど、下田さんはスイッチの切り替えがプロだなと思いましたね。声優さんならではの表現力にも感動しました。歌うっていうよりは演じるっていう感じなのかな。たぶん、キャラクターがもう本人の中でできあがっているんでしょうね。
――声優ならではですね。
そして下田さんは、踊りながら身体全部を使って表現される方でした。その姿にも感動したし、歌詞を間違えたときに「にゃにゃにゃにゃー」ってごまかすのもかわいかったし、レコーディングでは終始悶えてました(笑)。ホントに楽しかったです。
――そして『フタリボシ with 伊東歌詞太郎』のコラボ相手は、シンガー・伊東歌詞太郎さんです。
歌詞太郎くんとは、歌い手さん何人かと遊ぶときに一緒だったりと、もともとプライベートで会う機会も多かったんですけど、一緒に歌ったことは一度もなくて。今回コラボCDを出すということで、初めて一緒にやることになりました。
――『フタリボシ』という曲を選んだ理由は?
私も歌詞太郎くんも40mPさんにお世話になっているので、初めてのコラボだし共通部分のある楽曲にしたいと思い、この曲を選びました。
――歌詞太郎さんと初めて一緒に歌ってみて、いかがでしたか?
歌詞太郎くんは“芯があってまっすぐ”という歌い方を持っていますが、それに対して私はふわふわした歌い方をしがちなので、「大丈夫かな?」という不安も正直ありました。で、レコーディングが始まって、歌詞太郎くんは最初、声を張った「これぞ、伊東歌詞太郎だ」という歌い方だったのですが、私のパートを聴いたあとに私に合わせるように優しく歌ってくれて。
――コラボということで、歌い方をガラッと変えてきたんですね。
「スゴいな。数々の経験をしてきたんだな、この人は」と思いましたね。でも、お互いの個性はどうしても消したくなかったので、サビの部分は、歌詞太郎くんにガツンと声を張って歌ってもらって、今度は逆に私がそれに合わせていくようにしました。お互いがお互いに寄り添った曲になったんじゃないかと思います。
カッコつけない、素の自分で向き合いたかった。
――『MOTHER 〜7S Ver.〜 with 奥華子』では、2013年に奥 華子さんが96猫に楽曲提供したバラードソング『MOTHER』を本アルバム用にリアレンジしていますね。
『MOTHER』は、私が20歳になったときに奥 華子さんに書いていただいて母にプレゼントした楽曲で、思い入れがすごく深い曲です。今回3年ぶりに奥 華子さんとコラボできると決まったとき、ぜひリトライしたいと思ったんです。
――リトライ?
当時は20歳になりたてで、世間からカッコよく見られたいという意識が強くて……カッコつけて歌ってる部分があったんです。そのことが、歳を重ねるごとに気になって仕方なくて。だから、カッコつけない、素の自分でもう一度向かい合いたいと思っていました。
――歌い方のほかにアレンジも変わっていますね。
今回は弦楽器のカルテットのみなさんにも参加していただいて、奥 華子さんにもピアノのメロディーラインを変えてもらいました。レコーディングも同じスタジオに入って、みんな同時に録ったんですよ。
――同時収録! めちゃくちゃ緊張しそうですが……。
それはもう(笑)。でも、とても貴重な経験でしたね。私も奥 華子さんも弦楽器の方々も、それぞれが満足のいくテイクがなかなか録れなかったんですけど、最後に「指揮者なしでアイコンタクトしながら自由にやってみよう」ということになって。そしたらみんながそのテイクがいいと意見が一致したので、それを収録させていただきました。
――奥さんとは、どういうお話をされましたか?
猫の話(笑)。
――やっぱり猫なんですか(笑)。
はい(笑)。猫の話で盛り上がったおかげで、緊張が和らぎました。今回はコーラスのガイドメロディーがなくて、奥さんがその場でリアルタイムに作っていったんですけど、目の前でコーラスがどんどん重なってキレイなメロディーになっていく様子は、自分のためだけのコンサートが開かれているみたいで感動しましたね。とってもステキな時間でした。
――さまざまなコラボレーションによって作られたこのミニアルバムですが、『7S』というタイトルにはどういう思いが込められているんでしょうか?
96猫、ろんさん、下田さん、すこっぷさん、湯汲さん、伊東歌詞太郎さん、奥 華子さん、7人のアーティストとのコラボによる7曲なので、「7」という数字を入れたかったんです。シンプルに『7』とか『七人十色』とか、いろいろなタイトル案が出たのですが、悩みに悩んだ結果、“満足のいくものを作って、より多くの人に届ける”みたいな意味の言葉が全部「S」から始まることに気づいて。たとえば「Satisfy(満足)」もそう。それで『7S(セブンズ)』にしました。
――佐藤おどりさんが描かれたジャケ写もとっても可愛いですね!
今回は誰にでも手を取りやすく、それでいて世界観のあるジャケットにしたかったんです。いろんなイラストレーターさんが載っている資料を見させてもらったのですが、私もスタッフさんも息を合わせて「この人がいい!」って。それでこの方はTwitterをやってないのかな?って調べたら、最新の投稿が「レタスもらった」っていうレタスの写真で(笑)。「なんて可愛い人なんだろう!」ってすごく惹かれてお願いしました。
――あがってきたジャケ写をご覧になって、いかがですか?
96猫のモチーフである猫が中心にいて、さらにコラボを象徴するように、いろんな女の子や街並みが広がっているんですけど、よく見るとチェス盤の上にお酒があって、グラスの中に女の子が浮かんでいるという不思議な世界観ですよね。こんな構図、思いつかない!(笑)
――たしかに(笑)。
とってもステキで、トートバックとかグッズにしたい!!って思っちゃいました。通常盤もかわいいんですけど、私は初回盤がすごく好きです! ぜひ手にとってくださいね。