なぜ豆乳では効果がないのかが気になるが

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妊娠中の大豆摂取量が多かった女性は、妊娠中うつ症状の有症率が低下していたとする研究結果を、愛媛大学、国立保健医療科学院、東京大学、琉球大学による共同研究チームが発表した。

大豆などに含まれるポリフェノールの一種、「イソフラボン」は、女性ホルモンとも呼ばれる「エストロゲン」に構造が似ており、近い作用があるとされている。

これまでにイソフラボン摂取によって更年期障害の軽減やうつ症状予防の可能性を指摘する研究は存在していたが、妊娠中の女性に対する大豆製品由来のイソフラボン摂取と、うつ症状の関係を示した研究としては世界初となるという。

女性は出産前後や閉経期の卵巣ホルモンが大きく変動する時期に、うつ症状を発症しやすくなる。

研究チームは、妊娠中の女性と生まれた子どもの健康状態や生活習慣の関係を追跡調査している「九州・沖縄母子保健研究」から、1745名の妊婦を対象に、大豆製品の摂取量とうつ症状の関係を分析した。

大豆製品は豆腐や豆腐由来製品、納豆、大豆煮物、みそ汁などを含み、うつ症状の判定は、20問の質問に回答することでうつ状態の度合をスコア化する「CES-D(うつ病自己評価尺度)」に基づいている。

年齢や妊娠週、居住地域、家族構成、うつ既往歴、うつ家族既往歴といった、うつ症状に影響を及ぼすと考えられる複数の条件はもちろん、魚介類やヨーグルト、海藻、カルシウム、ビタミンDといった栄養成分の摂取状況も調整している。

その結果、妊娠中の大豆製品摂取が多いほど、妊娠中うつ症状の有症率が低下しており、総脂肪及び飽和脂肪酸摂取が多いほど有症率は上昇していた。ただし、大豆製品であっても味噌の摂取が多いと有症率は高まっており、豆乳は有症率に何も影響していなかったという。

大豆製品由来ではなく、サプリメントなどでイソフラボンを過剰摂取することについては、健康に悪影響を与える可能性もあるとされ、食品安全委員会より、1日の摂取限度量は30ミリグラムとされているため注意が必要。

発表は、2016年10月15日、栄養科学分野の論文誌「European Journal of Nutrition」オンライン版に掲載された。

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参考論文
Soy isoflavone intake and prevalence of depressive symptoms during pregnancy in Japan: baseline data from the Kyushu Okinawa Maternal and Child Health Study.
DOI: 10.1007/s00394-016-1327-5 PMID:27744546

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