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人気オンラインゲーム『モンスターハンター フロンティアG』(カプコン)で、ゲームのデータを改変する「チート行為」をおこなったとして、通信制大学3年の男性が10月上旬、私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで奈良県警に逮捕された。

報道によると、男性は今年4月、ゲームを有利にすすめられるように改変する「チート行為」をネットオークションを通じて請け負い、愛知県の男性と千葉県の男性のデータにアクセスして、キャラクターを強くするデータ改変をおこなった疑いが持たれている。

今回、オンライゲームのチート行為の摘発は全国で初めてということだが、チート行為の法的位置づけはどうなっているのだろうか。インターネット問題にくわしい深澤諭史弁護士に聞いた。

●「チート行為そのものを直接取り締まる法律はない」

「まず、前提として『チート(行為)』とは、英語で『cheat』、つまり「いんちき」という意味です。特に、インターネットで『チート』といった場合は、ネット上のゲームにおいて、『いんちき』をおこなうことを指します。ネットスラングで『升(チートと見える)』などともいわれています。

具体的には、ステータスやスコアを改ざんしたり、通常見えない者を見る(麻雀における対戦相手の牌など)などして、不正に有利にゲームをプレイする行為です。ネットゲームにおいては、各人が公平・平等にプレイできるのが大前提で、その前提が崩れるとゲーム世界そのものの成立が危うくなるので、プレイヤー、ゲーム会社の双方から忌み嫌われています」

チート行為を取り締まる法律はあるのだろうか。

「日本の法律上、チート行為そのものを直接取り締まる法律はありません。

したがって、チート行為が結果的に何らかの犯罪にあたる場合に、今回のように処罰される、ということになります。

今回適用された私電磁的記録不正作出・同供用罪は、おおざっぱにいえば、コンピュータを誤作動させる不正なデータを作ったり、それをコンピュータにあたえる罪です。

今回の事件は、詳細が報道されていませんが、『キャラクターデータを改変してアイテムを入手させた』などとあり、この点が犯罪と判断されたと思われます」

●自分の人生が「ゲームオーバー」にならないよう心がけて

なぜ、今回初めて摘発されたのだろうか。

「一般に、チート行為の摘発は、法的にも技術的にも容易ではありません。法的には、チート行為一般を処罰する法律はなく、技術的にも、チート行為はゲームソフトの『穴』を突く行為ですから、性質上、痕跡が残りにくいからです。

今回、摘発できたポイントは、キャラクターデータの改変行為を請け負っていたため、問題となる不正なデータが何か、どこを改造したのか、それらの特定が容易であったことにあると思います。

なお、チート行為の態様によっては、電子計算機損壊等業務妨害罪が成立することもあります。それによって、賞金・賞品を得れば、詐欺罪になる可能性もあります。

また、犯罪にならなくてもゲームの規約違反になります。利用停止になるだけではなく、ゲーム会社が莫大なコストを投じて作った『ゲーム世界』を破壊したとして、高額の賠償責任を負担することもありえます。

当たり前ですが、不正に手を染めて、自分の人生が『ゲームオーバー』にならないよう、ゲームの世界でもスポーツと同様にフェアプレーを心がけることが大事です」

深澤弁護士はこのように警鐘を鳴らしていた。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
深澤 諭史(ふかざわ・さとし)弁護士
ネットやコンピューターにまつわる法律事件を中心に取り扱う。ネット選挙の法務では関係者向けの講演などを実施するほか、ウェブサイト「IT法務.jp」で情報発信も行う。著書に「その『つぶやき』は犯罪です(共著、新潮新書)」がある。
事務所名:服部啓法律事務所
事務所URL:http://hklaw.jp/