2カ月に一度、三軒茶屋のバーに東京在住の静岡県西部出身者が集まるサークルがあります。私(浜松市出身)もそこに顔を出している一人なのですが、その会には話のタネとなるような地元名物の食べ物が出てくることもしばしば。この日も浜松に帰省してきた先輩が「アレ持ってきたのよ〜」と荷物の中をゴソゴソと探っていました。そして、そこで出てきたのはコチラ。



知る人ぞ知る半世紀越えの超ロングセラー!


ここで「浜松だから、やっぱりうなぎパイでしょ!」って思ったアナタは不正解(笑)。一見、何かのフライなのかお菓子なのかすら見分けづらい見た目ですが、こちらは「あげ潮」という浜松名物のクッキーなのです。



販売元は、浜松市中区に本社を置く「まるたや洋菓子店」。全国区の知名度では「うなぎパイ」に劣る「あげ潮」ですが、浜松市民にはおなじみのお菓子で、発売から半世紀以上たつ超ロングセラー。ちなみに、いまや浜松市民の誇りとなった、ももクロの百田夏菜子さんもかつてテレビ番組であげ潮を紹介していたそう。
持ってきた先輩によれば、「職場におみやげで持っていくと、その日の昼までには“瞬殺”」だそう。

口の中に広がるのは、サクッ、甘っ、フルーティーの三重奏!





さて、随分久しぶりの食べる私も、あらためてその味を確かめてみます。
人差し指と親指でつかんで、口の中にポイッ! すると、かんだ瞬間にコーンフレークのサクッとした食感と香ばしさがやってきます。次にじんわりと甘さがやってきて、時おり歯にぶつかるレーズンの粒からフルーティーな甘みと酸味があふれ出します。そんな風に、サクッ、甘っ、フルーティーが交互に伝わってきて、いわば“味の三重奏”的な味わいが繰り広げられます。

さらに、袋に書かれた材料表示によれば、オレンジピールや洋酒などが含まれているとのこと。濃厚な甘さながら、後味がさっぱりしているのは、柑橘系の爽やかさがあるからなんですね。
こんな複雑な味のお菓子が昭和中期から売られていたとは。きっと発売当時はハイカラなお菓子だったに違いない!
「お煎餅のようなシンプルな見た目だけど、東京の人からは『フランスのお菓子みたい』って大人気。実はお酒にも合うんですよ」という、地元男性の声もありました。



ちなみに「あげ潮って名前なのに甘いお菓子?」と多くの方がツッコミそうなところですが、そんな世間の疑問を見越してか、袋の裏には、
「浜名湖に潮が満ちるように、あげ潮を召し上がっていただいた方の運気が上がりますようにという思いを込め命名いたしました」
と名前の由来が書かれていました。なるほど、縁起の良いネーミングなんですね!

販売元のまるたや洋菓子店にいろいろ聞いてみた


さて、ここまで書いたら「あげ潮」についてますます知りたくなってしまい、販売元のまるたや洋菓子店にいろいろ聞いてみました。答えてくれたのは広報担当の野口さん。

――「あげ潮」のロングセラーの秘訣(ひけつ)ってどんなところにあると思いますか?

野口さん 気をてらわずというか逆に素朴すぎる見た目で何となく食べてみると「あれっ?」と感じるギャップではないでしょうか。生地にレーズン、オレンジピール、クルミが入っていて香りも良くサクサク感もあり軽い食感があとを引くからとも思われます。

――「あげ潮」のおいしい食べ方や美味しいアレンジ方法を教えてください!

野口さん 料理研究家の方が牛乳をかけて食べるとおいしいと本に書いていただいたので試してみましたがやはりそのまま食べていただくのが一番おいしいと思います。

――静岡県以外で「あげ潮」が買えるリアル店舗はありますか?

野口さん 県外に支店はありませんが、秋葉原の日本百貨店ちゃばらさんのおいしずコーナー、池袋の西武百貨店さんの諸国銘菓コーナーに置かせていだだいております。

――季節限定商品などはありますか?

野口さん バレンタインの時には「チョコあげ潮」を販売します。また、ハロウィンの時は通常のあげ潮をハロウィン仕様のパッケージを用意しています。

う〜ん、チョコあげ潮も食べてみたい…。なお、「やはり『うなぎパイ』はライバル視されてますか?」という質問も聞いてみたのですが、「うなぎパイは浜松が誇るお土産ですのでライバルというレベルではありません」というお答えをいただきました。何とも謙虚。

あげ潮はまるたや洋菓子店のオンラインショップから通販でも買えるので、地元民お墨付きのおやつをぜひお取り寄せしてみてはいかがでしょう。

まるたや洋菓子店 神田本店
静岡県浜松市中区神田町367
電話番号/053-441-9456
営業時間/9:30〜17:00
定休日/なし

(鈴木翔)