今年のセンバツもクライマックスへ。すでに敗退したチームでも印象に残る学校があった

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 連日熱戦が繰り広げられる選抜高校野球。各選手の一生懸命なプレーは、いつもながら心打たれ、観る者に感動を与えてくれる。

 この高校野球は、選手たちにとっては、野球技術の向上だけでなく、人間形成するという教育を目的とするものでもある。

 今回の出場校のなかで、ユニークなパフォーマンスを魅せた、2つの高校を追いかけてみた。

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■“強制”と“競争”の精神を貫く、開星高校

 開会式の入場行進でひときわ目立った集団が開星高校(島根)だ。

「1、2、1、2」の掛け声は他の高校を圧倒し、両腕は顔の当たりまで振り上げ、目いっぱい足を上げ行進する。

 球場内の観客は、その度が過ぎたパフォーマンスに、自然と顔がほころび、じっと行進を見守っている。

 気恥ずかしく行進する選手が多い中、見ている方も何か心地いい気分で爽快感さえ生まれる。

 開星高校は、「末代までの恥」発言で監督職を辞した、野々村直通元監督の意思を受け継ぎ、当時コーチだった山内弘和監督が指揮をとっている高校だ。

「教育とは“強制”と“競争”である」という、野々村イズムを引き継ぎ、行進のパフォーマンスを「強制」して選手たちを律する。

 また、試合前守備練習のノッカーの最後の1球を、内野手全員で「俺のところに打ってください!」と手招きし、大声を上げ、懇願するパフォーマンスは、「競争」の精神の表れと見える。

■微笑ましい“儀式”を行う、小豆島高校

 反対に、試合前守備練習で微笑ましいのは、小豆島高校(香川)のパフォーマンスだ。

 各選手が守備位置につくと、マウンドから投手が投球の動作をする。ノッカーが空振りをすると、あたかもボールが飛んできたごとく、守備に散った各選手はダイビングして捕球動作のパフォーマンスを繰り広げる。

 杉吉勇輝監督曰く、この“儀式”を「オープニングセレモニー」と呼び、選手たちが自分たちで練習の一環として考えだしたもののようだ。

 緊張を和らげるためなのか、体をリラックスさせるものなのかは不明だが、選手たちの自主性を重んじ、ダイビングの仕方も選手たちが思い思いに考えパフォーマンスする。

 言うまでもなく、これを目の当たりにした球場内の観客は、一斉にどよめき拍手が巻き起こった。

 島国ならではの一体感とチームの和を感じるパフォーマンスであった。

■大切なのは一生懸命にやりぬくこと

 一言で教育とは何たるかを語ることは非常に難しい。

 今回の開星高校のように、選手たちに行動を強制し正しい道を示すことも必要であろうし、時には小豆島高校のように自主性を重んじて、自ら考え行動させることも必要だろう。

 選手同士が競争しあい、自らを高めることも必要であれば、チームの和を重んじることも生きていく上で必要なスキルに違いない。

 ただ、両校に共通して見えたものは、各選手が一生懸命、決まったパフォーマンスを力いっぱいやっていることだ。方法は違えど一番大切なことは、結果的にこの一生懸命さなのかも知れない。

 残念なことに、両校とも初戦で敗れ、すでに今大会から姿を消してしまった。

 是非、夏の大会を勝ち抜き、もう一度磨きがかかったパフォーマンスが見られることを楽しみに待ちたい。

文=まろ麻呂

まろ麻呂

企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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