ネットニュースについて語りつくす三者

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山本一郎×中川淳一郎×漆原直行のイニシャル鼎談vol.1

 2016年は新年早々、大きな芸能ニュースが舞い込み、ネットニュース業界を賑わせている。そこで、ネットのトレンドを知り尽くしたブロガーの山本一郎氏、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏、編集・ライターの漆原直行氏の3人にご登壇いただき、トークイベントを開催。ヤバい箇所はイニシャルで伏せながら、いかにネットニュース読者がゲスな芸能ニュースを好んでいるかを掘り下げてもらった。今回はトークイベントの第一弾「ベッキー騒動」についてだ。

■ベッキーの”下半身事情”がユーザーに読まれる理由

山本一郎(以下、山本) 今回は『デイリーニュースオンライン』とコラボということで、同サイトで配信された記事を例に挙げながら、ネット界ではいかにゲスな話題が注目を集めているのか、みんなで見ていきたいなと考えております。まず取り上げるべきは、やっぱり「ベッキー不倫騒動」でしょうね。

漆原直行(以下、漆原) 新年早々、ぶっこまれましたね。

中川淳一郎(以下、中川) 本当は、マクドナルドの成功戦略などの記事を全国2億人に読んでもらいたいんですよ。でも、圧倒的にベッキー下半身事情とかの記事の方が読まれるんですよ。

山本 ベッキーは、すごかったですよね。現在進行形なんですけど、ネットニュース業界の救世主とも言われてるくらい。普通のスキャンダルとは、また違う趣のヤバさがありますね。

漆原 そのヤバさ、具体的には?

山本 まず底が知れない。CMもいっぱい出てますしね。

中川 名だたる有名企業、10社らしいですよ。

漆原 しかも、いわゆる「健全」みたいなキーワードが必須の企業ばかり。

中川 広告代理店にはキャスティング局という部署があって、そこにはタレントの様々なデータがあるんです。そのデータによって、「清廉潔白タレント」「ファミリー向けタレント」など、ジャンル分けされ、さらにランキング化もされている。CMに抜擢するタレントを選ぶ際には、クライアントにランキングを見せて選んでもらうんですよ。

漆原 じゃあ、ソフトウエアメーカーのS以外は、全滅してしまうわけですね。

中川 あそこは悪い顔をしてるよね。

山本 Sはいろんなテレビ局をスポンサードしているから「◯◯を抱かせろ」とか社長の秘書から連絡が来るらしいんですよ。先日、ちょっと前に出産されたアナウンサーのZさんとご一緒する機会があったんですが、周辺の広告関係者から「Sと知り合いですか? あそこの社長とだけは絶対に付き合わないでください」って念を押されたんですよ。

漆原 やんわりと「距離をおきましょう」じゃなくて、付き合っちゃいけませんってはっきり言われたわけですか?

山本 ブラックリストですよね。しかもパッシブなブラックリストじゃなくて、アクティブなやつ。積極的にこいつら退治するべきだみたいなね。そういう意味では、ベッキーの抜擢は合ってると思いますよ(笑)。

中川 ベッキーのことを矢口真里2世となんて言う人もいますけど、オレはそうはいかないと思いますね。矢口はもともと、「私○○にハマってます」って何に対しても言っては調子よく仕事を獲得する「21世紀の佐藤藍子」的な適当キャラで売ってたわけですよ。だから男女関係も適当でいいっていう業界の暗黙の了解があった。なので、まあ、おもしろキャラで今も生き残っているけど、ベッキーは超優等生だから難しいと思いますよ。ちょっとしばらく使えない。サンミュージックは、クライアントに対して非常に誠意のある会社なんですけどね。

山本 真面目ですよね。

中川 そう、真面目。

漆原 サンミュージックで嫌な思いしたことないですよ。取材の打診とかで。教育がちゃんとしてる。だからベッキーはすっげー怒られてると思うんです。

山本 でもさ、この川谷さんとの関係って、結構前からなんでしょ。

漆原 2015年11月くらいから、深い関係になったって話ですね。こういう話になっちゃいけないのかもしれないけど、一言で言えば、川谷絵音がバカだと思うよ。アイツが一番悪い。そもそも、ゲスの極み乙女。の売れ方がおかしかったんだよ。あまりにも急に売れたからね。もともと川谷はインディゴ ラ エンドってバンドで活動してて、インディーズ界隈では割と人気もあった。そんなときに、川谷が「遊びでもう1つ、別のバンドやりたいです」という感じで始まったのが『ゲスの極み乙女。』なんですね。たぶん、ゲス極は、事務所的には「インディゴを売る一つのとっかかりとして、ゲス極が注目されるのもいいんじゃない?」くらいのノリでバックアップしていたんじゃないかな。なのに、サイドプロジェクト的な活動だったはずのゲス極の方が売れちゃったので、急に方向転換した形になったと思うんですよ。

■ベッキー擁護は炎上の元…触れられる芸能人もごく少数

山本 しかし『週刊文春』の取材力は強力ですね。

漆原 強力ですよ。

中川 武藤貴也のときも、そうでしたしね。

漆原 週刊誌の中でも、意地でも毎号何かしらのスクープを投入してくるような攻めの姿勢を感じます。もちろん、『週刊現代』や中川さんが「ニュースポストセブン」の編集として関わっている『週刊ポスト』などもそれぞれ違った持ち味があって売れてるんだけど、文春は「スクープ抜いてやる」っていう、気概とか執着心があって面白いんですよね。

中川 当て方(ネタの取り方)もむちゃくちゃで、オレがよく一緒に飲んでた、女性記者がいるんですけど。大物バンドグループのメンバーPが覚せい剤で捕まって保釈された後に、どうせ「またやってるに違いない」って仮説を立てるんです。それで、Nがどこにいるんだって探しはじめて、某地方都市ででバーをやってることを突き止めたら、そこに通い始めるんですよ。東京からですよ。覚せい剤をやってるかどうかを、毎日通って確かめる。結局はやっていなかったんですけど、そこまで金かけて執念深くやるわけです。

山本 ある意味で、ベッキーも大物ですよね。あれだけのCMに出ているし。

中川 サンミュージックには上品さがあって、(マスコミを)恫喝しない。だから酒井法子が逮捕されたときも、みんな好き放題できたってことなんですよ。

漆原 芸能事務所のBみたいな戦法は使わない?

中川 ない。ない。全然ない。

山本 逆に言うと、守ってくれないってことなんじゃ。

漆原 そうは言っても、会見が早かったじゃないですか。いわゆる最低限のリスク回避はしておこう、いまできることはきちんとやろうというスタンスは感じましたよね。うまくいったかはさておき。

山本 それでも止められるものは非常に少ないですけどね。LINEが漏れてたし。

漆原 離婚届を「卒論」と表現していた、アレね。

山本 だけどさ、7月に籍を入れたばかりで、普通に考えたら、年末は奥さんと一緒に地元帰るのが相場じゃないですか。僕が親だったら、たぶん息子のことしばくと思うんですよ。おまえらがそういう気持ちになってんのはそれはそれでよしとしても、やっぱり社会通念上、もしくは人の道としてそういうのはどうなんだって。

中川 この場合、川谷の親父がベッキーのファンだったとかそんな理由ですよ。いきなり来たら、嬉しいに決まってますわ。まぁ、今は「元気の押し売り」「よく見りゃブス」という彼女のあだ名ですが、次の彼女のあだ名がどのように変わるか、有吉(弘行)に期待したいところでございますけどね。

山本 有吉も触りづらいんじゃないの?

漆原 そこまでいじるかね? 有吉。空気読むでしょ彼は。

中川 いま芸能界全体でベッキーを擁護してる方向に向かってるんだけど、多分CMスポンサー的にはナシだと思ってるんですよ。擁護すればするほどサノケン状態になっちゃう。彼を擁護すればするほど、炎上するというね。

漆原 奥さんに関していうと、それこそインディーズで川谷が全く売れてなかった頃からスタッフ同然に関わっていて、川谷を支えてきた女性なんだよね。

山本 売れると、派手なものが好きになるのかな?

漆原 かもしれない。川谷はまだ売れる前の2011年頃に、当時売れていたバンドに対して「ジャニーズみたいなライブパフォーマンス。ああはなりたくない」と揶揄しつつ意識しまくりだったり、「そのバンドの誰々は、芸能人と付き合ってる」なんて嫉妬心をチラつかせたりして、“俺も売れたい。俺もいいオンナ抱きたい”みたいな自意識をこじらせた、ルサンチマンむき出しのツイートをいっぱいしていたんですよ。彼は、そういうワキが甘い男なんです。いっぺんに売れたら、そりゃ勘違いするよねって話ですよ。

山本 なんか同情するな。そこは同情する。

漆原 自分の立場を自覚して、それをわきまえた上での行動が追いつかなかったのかもしれないね。売れたことで、おれもベッキーみたいな芸能人抱いたぜ、みたいな。そのサクセス感が、彼を勘違いさせたんじゃないかな。

(写真提供/『ホウドウキョク』)


プロフィール

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/

プロフィール

ライター/編集者

中川淳一郎

一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社しフリーライターに。『テレビブロス』編集者、企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)など多数

プロフィール

ライター/編集者

漆原直行

1972年東京都生まれ。編集者・記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中より若手サラリーマン向け週刊誌、情報誌などでライター業に従事。ビジネス誌やパソコン誌などの編集部を経て、現在はフリーランス。書籍の構成、ビジネスコミックのシナリオなども手がける。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』『COMIX 家族でできる 7つの習慣』(シナリオ。伊原直司名義)など多数

次回告知/デイリーニュースオンラインPresents『山本一郎・中川淳一郎・漆原直行トークイベント』

【日時】2月4日(月)19時30分スタート(18時30分開場)
【場所】阿佐ヶ谷ロフトA