川崎の移籍にトロントのファンは悲観に暮れている

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 1月21日、トロント・ブルージェイズからFAとなっていた“ムネリン”こと川崎宗則選手が、シカゴ・カブスとマイナー契約を交わしたことが明らかになった。ブルージェイズのファンは「Nooooo Mune nooooooo!!」と悲鳴を上げる一方、“トロントの爆笑王”を獲得したカブスのファンは喜びの声を上げている。

■爆笑がとれる稀代のムードメーカー 

 メジャーリーグに挑戦して早5年。コミカルなダンスやオモシロインタビューで絶大な人気を博す川崎。今季はカブスとマイナー契約を交わし、ア・リーグからDH制(指名打者制度。投手の代わりに別選手が打席に立つ制度)のないナ・リーグに戦いの場を移す。

 このニュースに日本のファンが反応したことはもちろんだが、古巣となったブルージェイズの現地ファンからも「娘になんて説明しようかしら」「嘆かわしい日だ」と悲しむ声が出ている。さらにはなんと、トロント市長のジョン・トリーも「クラブハウスに多大なる力をもたらしてくれた。カブスでの最高の幸運を祈っている」とコメントを送っている。

 一方で喜びに包まれているのは、昨年、リーグ優勝決定シリーズにも駒を進めたカブス。今年はワールドシリーズのみならず、108年ぶりの世界一も狙う強豪だが、川崎の加入について「ラストピースが揃った」「最高の補強だ」という声が少なくない。もちろん「試合後のインタビュー、すごいの期待してる」と爆笑王としての活躍も望まれている。

「川崎の役割は『メジャーリーグ2』に出演した石橋貴明(タカ・タナカ役)のようなカンフル剤の立ち回り。チームが暗いときでも、底抜けの明るさでチームを元気づけることができます」(スポーツ業界関係者)

■根っこにカッコよすぎる生き方あり

 2012年12月に海外FA権を使って、尊敬するイチローを追うようにして福岡ソフトバンクホークスからシアトル・マリナーズへ移籍した川崎。メジャーリーグ挑戦時は「成功しない」と予想されていた。実力だけを見れば、昨年は23試合に出場して打率.214。メジャーとマイナーを行ったり来たりする予想どおりの展開だが、アメリカ現地での愛され方は、イチローや松井秀喜に並ぶと言っても過言ではないだろう。

 もちろん日本でも人気は健在だ。スポーツ番組「S☆1」(TBS系)を通じて「野球選手になって腐っているとかもったいない」「野球選手になりたいという友達がいたけど、なれなかった人を何人も知っている」「(アメリカでマイナーにいることについて)マイナスなんてない。悲観することなんて無い」と男前なコメントも残しており、日本人メジャーリーガーとして前例のない歩み方が注目を集めている。

「オモシロ外国人の印象を超えて、チーム全体にポジティブな影響を与えています。プレーオフの緊張感あふれる場面などでナインを鼓舞する姿勢には、ソフトバンク時代に主将としてチームを引っ張り、日本一を味わった経験も垣間見えますね」(同上)

 メジャーリーグトップクラスの愛されキャラとなった川崎。カブスの悲願である世界一に貢献するべく、ラストピースとして活躍が期待される。

(取材・文/蒼木学)