橋下徹オフィシャルサイトより

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 大阪都構想を問う住民投票で敗北した橋下徹大阪市長は、そのまま政界から引退することを宣言していた。ところが、一転。維新の党を割って、新党を立ち上げることを表明している。

 政界引退を表明した政治家が新党を立ち上げると宣言したことは前代未聞だが、タレントに戻れば活躍の場が用意されている。それだけに政治家にことさら執着する必要はない。

内閣改造で橋下市長が起用されるとの噂

 そんな中、永田町では橋下市長が退任するタイミングに合わせて、内閣改造がおこなわれるという情報が流れてきている。その内閣改造の目玉人事と噂されているのが、退任したばかりの橋下徹市長の起用だ。

 これまで、橋下市長は選挙演説などでも与党なのか? と思えるほど、安倍政権寄りの意見を開陳してきた。IR法案では、内密に官邸と連絡を取り合い、大阪都構想でも対立する自民党大阪市議団の親分でもある安倍総理や菅偉義官房長官に秋波を送ってきた。

 それだけに、橋下市長の入閣もあり得ない話ではない。本来、橋下市長を入閣させるにしても、来夏の参院選に橋下市長が当選し、連立政権を組むまで待てばいいだけのこと。市長を退任したばかりの民間人を閣僚として迎え入れるのは時期尚早ではないか……。その裏事情を永田町関係者はこう話す。

「いちばん大きな理由は、何と言っても安保法制です。賛成している人の自民党支持層でも、今回の法案成立は拙速すぎるとの意見が強く、反対派まで含めると安倍政権はかなり苦しい立場にあります。来夏の参議院選まで時間があるので、安倍総理はそれまでに支持率を回復させたいという思いがあるのでしょう。そこで橋下市長を味方につけようと水面下で動いているのです。維新の党から分離した橋下市長を支持する“維新の党 大阪派”を取り込めば、議席数でも憲法改正も視野に入ってくるわけです」

 来夏の参院選で自民党が勝利すれば、憲法改正も現実味を帯びてくる。憲法を改正すれば、後付けながら“集団的自衛権の行使容認”に対する異論も封じ込められる。

 そんなシナリオが進む中、自民党関係者は「橋下市長が、なに大臣になるか?」ということに気を揉んでいる。大阪都構想を悲願にしてきた橋下市長だけに、安倍内閣で閣僚に就任するとしたら地方自治体を所管する総務大臣が有力と報じられてきた。しかし、総務大臣はあり得ないと永田町関係者は一笑する。

「総務大臣は重要閣僚です。いくら橋下市長が人気だからと言って、そんな重要ポストに就けたら自民党内の閣僚待機組議員がそっぽを向いてしまうでしょう。そうなったら、自民党内で反安倍の声が強くなる恐れがある。せっかく人気回復策として橋下市長を取り込んでも、自民党内部からの支持を失ったら意味がありません」

 そこで、飛び出すウルトラCが「橋下オリンピック担当大臣」だという。現在、東京オリンピックは新国立競技場やエンブレムで問題が相次ぎ、所管官庁の下村博文文部科学大臣や遠藤利明オリンピック担当大臣は対応に四苦八苦している。

「いくら閣僚ポストがほしくても、今のタイミングでオリンピック担当大臣になりたいと思っている議員は誰もいません。しかも、オリンピック担当大臣は東京オリンピックを裏で仕切る森喜朗元総理大臣のクビを切る役割も負わされている。自民党議員には、しがらみがあってそれができない。橋下市長をオリンピック担当大臣に祭り上げて、それをやらせてしまおうという魂胆もあると思います」(前出・永田町関係者)

 橋下市長は政治家の中でもトップクラスの発信力をもつ。そうした才能はオリンピック担当大臣に就任したら存分に発揮される可能性はあるだろう。また、橋下オリンピック担当大臣が、東京オリンピックゴタゴタのA級戦犯とも言われる森喜朗元総理大臣に引導を渡せば、国民の拍手喝采を浴びることは間違いない。

 いまや、オリンピックは何をやっても炎上必至の案件。橋下市長は火中の栗を拾わされるオリンピック大臣に就任するのか? そして橋下オリンピック担当大臣の誕生で、東京オリンピック開催に光明は見えてくるのか?

(取材・文/小川裕夫)