蓮舫オフィシャルサイトより

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 国立競技場の建設予算が、法外ともいえる2500億円ということで世間の耳目を集めている。通常のスタジアムは建設費が300億円程度。ロンドンオリンピックのメインスタジアムでも900億円(現行レート)というから、新国立競技場の予算が飛び抜けて高額であることがわかる。

 新国立競技場の建設予算は内部では周知の事実だった。ところが7月7日に開催された有識者会議で、新国立競技場の建設予算が2520億円になる見通しが伝えられると、テレビや新聞が「税金の無駄遣いだ!」と批判の槍玉に挙げた。当初、政府などはそのまま押し通す姿勢を見せていたが、世論の反発を受けて態度を一変。

 麻生太郎財務大臣は「それを決めたのは民主党政権時代のこと」と責任転換を図った。しかし、2012年に民主党から政権を奪還した自民党は、民主党時代の政策をことごとく白紙に戻している。それにも関わらず、自民党が国立競技場のデザイン案をなかったことにしていないのだから、自民党が新国立競技場の計画案を追認していたと受け取られても仕方がない。

 さすがに新国立競技場を民主党のせいにするのは、無理筋だった。なにより、民主党時代に決まったのは新国立競技場のデザインだけであり、そこから建設費をはじめとする議論は何回もなされている。

 新国立競技場問題は責任者が不明確なため、森喜朗元総理大臣や建築家・安藤忠雄氏など記者会見などで自分の責任を否定し、責任の押し付け合いが始まった。その様子が国民感情に油を注ぐ結果を招き、とうとう安倍晋三総理大臣がゼロベースで見直すことを発表した。

 他方で、民主党にまったく瑕疵がなかったとはいえない。民主党が政権政党から転落した後も、国立競技場の建設費を糺す機会はいくらでもあった。民主党が野党として役割を果たさなかったことは、民主党が国立競技場問題でも攻め切れない足かせになっている。

公共事業再検討本部の本部長に蓮舫議員が抜擢

 しかし、2500億円の建設費が発表された後の民主党の動きは素早かった。民主党は公共事業再検討本部を立ち上げ、本部長に蓮舫議員を抜擢。自民党を徹底的に追及していく構えを見せている。

 蓮舫議員は「漏れた年金情報」でも調査対策本部の本部長に抜擢されている。蓮舫議員といえば、事業仕分けの印象が強烈に残っているが、もともとニュースキャスター出身という華やかな経歴もあって、いまだ有権者からの人気は高い。蓮舫議員が街頭演説に来れば、通りがかかりの人が足を止め、握手や記念撮影を求めて黒山の人だかりができる。以前ほどではないにしろ、その人気ぶりは民主党議員の中では群を抜いている。

 その一方で、民主党は蓮舫議員に頼り過ぎている事実も否めない。民主党関係者からも「蓮舫議員よりも適任の先生が、民主党にはいる。それでも蓮舫議員が起用されるのは、発信力が大きい」という声が聞かれる。そこには、ほかの議員ではテレビや新聞が取り上げてくれないという思いがにじむ。

 漏れた年金問題にしても新国立競技場の問題にしてももっと専門知識のある議員が民主党内にはいる。蓮舫議員は大臣経験があるとはいえ議員歴は11年。決してベテランではないが、民主党は蓮舫議員を前面に押し出している。

「いくらなんでも、蓮舫議員に頼りすぎなのでは?」(民主党関係者)との声もあるが、蓮舫議員で民主党は勢いを取り戻せるか?

(取材・文/小川裕夫)