新国立問題で森喜朗氏にも注目が

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 やまもといちろうです。無用な放言はしないタイプです。

 ところで、昨今の元首相にして東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗さん、大ブレイク中であります。中でも、多額の税金を突っ込むメインスタジアムがらみでは言いたい放題。実に香ばしくも微笑ましい日本政治の伝統老害芸を披露されており、読む者の心を暖めてくれる珠玉の言葉運びに感嘆の声が上がっています。やはり世の中こうでなければなりません。

 さらには「新国立 森喜朗=蜃気楼古墳か」と名言を超えた逸話も飛び出し、取り上げるメディアの側も森さん発言に乗っかって、これまた旨い発言を繰り出しまくって大喜利状態になっています。

 確かに遺物=古墳と言われるといろいろとピンとくるものがあります。たいしたものです。かつて古代の日本人が感じていたであろう徒労感が凄いのは、まさに「なんで俺たち権力者の墓場をこんな苦労して建設してんだ」というイメージにぴったりです。よく考えたら森喜朗さん自体は時の権力者でもなく、天皇のような高貴な存在でもない単なる元首相にして自称ラガーマンであることを考えると、多額の税金がどうのこうのというより、世の理不尽をすべて体現しているようにも思うわけですね。

 また、ゴシップ気味ではありますが文科相の下村博文さんにも惜しみなく火の粉が降り注いでいます。

 イベントの会合を途中で退席した下村さんに対して、森さんが「極めて非礼」とDISるという、かなりハイアングルな大技を事も無げに繰り出すシュールな状況です。その下村さんもよりによって日刊ゲンダイにA級戦犯呼ばわりされるという、A級戦犯の皆さんにも非礼な文言が並んでいるという。大丈夫なのでありましょうか。

 さらには「そもそも森さんのラグビー人脈だから据えた」はずの遠藤利明五輪相さえも槍玉に。

 もっとも、遠藤五輪相に関しては官邸主導で新国立競技場計画を再検討する中心人物になっているというお話もあるようで、大変ごもっともな内容ですのでたぶん事実なのでしょう。記事は伊藤博敏さん。

 このあたりを並べてみると、森さんというのがいかに日本政治の伝統を受け継ぐ立派な老害であり、事業を切り盛りするにあたって使い物にならない無能であるかをつくづく感じさせる逸話ばかりです。

 一方で、森さんという人は素晴らしい人間性として知られ、気配りの人であり、ほうぼうに顔の利く優しいお爺ちゃんであるのもまた分かるんですよね。調整型のリーダーであり、現場の隅々にまで口を出すマイクロマネジメントをする一方、矢鱈大御所になってしまっていることもあって「鈴のついてない猫」みたいな状態だったのでしょう。

 まずは安倍晋三首相もどうにか英断できたようですし、これで少しでも日本国民にとって良い方向に物事が進むよう祈るばかりであります。

著者プロフィール

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

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