42年ぶり映画出演 園まり「70代の今がいちばん」

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「映画では、これまでの人生経験で蓄積してきたものを、監督に引き出していただきました。白髪のウイッグこそつけて老けメークをしていますけれど(笑)。私自身、ありのままの自然体でお芝居ができました。42年ぶりの映画なんですよ」

 6月13日から公開中の映画『道しるべ』に出演している園まり(71)。彼女は、この作品で振り込め詐欺に巻き込まれそうになる老婦人役に挑戦した。

 園は’60年代、中尾ミエ(69)、伊東ゆかり(68)とともに“3人娘”と呼ばれた国民的アイドル。『何も云わないで』(’64年)、『逢いたくて逢いたくて』(’66年)は大ヒット曲となった。

「私にとってアイドル時代の歌は、父や事務所の“お仕着せ”でした。表情もなく、歌の意味もわからないまま歌っていただけ。そのころの人生は全部そう。敷かれたレールの上を走っていただけ……」

 そう言って、遠くを見るような目をした彼女は、少し間を置いてから、こう言葉を継いだ。

「でも、70代のいまがいちばん、充実しているんですよ!」

 一時引退していた歌の世界に、’03年から本格復帰。’04年には“3人娘”としての活動を再開。以後、年間に約20本のライブをこなしている。

 ステージパパだった父親が倒れたのは’99年。駆けつけると末期の肺がんと知らされた。園に多額の医療費がのしかかる。

「今回の映画にも、天国に行くか地獄に行くかという道しるべが象徴的に使われていますが、あのときの私には、同じように父を“放っておく”か“尽くす”か、という選択肢があったんです。そのときに選んだのが尽くすことだったんですね。死の床で父は私にこう言いました。『毬子(園の本名)、歌は毬子の天命だから、歌うことを忘れちゃいけないよ』って……」

 ’08年には、乳がんと診断された。幸い、早期発見で右乳房は切除せずにすんだ。その3年後、かつて女優・深山ゆりとして活躍していた姉が、くも膜下出血で急逝。傷心の彼女にのしかかったのは、母の介護だった。心労のため自律神経症になり、帯状疱疹も発症した。

「現在、母は98歳で車いす生活。要介護5で、自宅の近くの介護付きマンションに住んでいます。毎日、母の所に出かけては食事の世話をしたり泊まったり。この程よい“距離”が生まれたことで、気持ちが少し楽になったのかも。私には歌手活動があったから、外でいろんな人と接する機会がありました。どんなことでもいいから、人と会う時間を作り気分転換をすることで、心と体のバランスを保ってこられたのだと思います」

 乳がんを乗り越え、母の介護を続ける彼女を支えているのは、いまも続く“3人娘”の友情だという。みな独身。“おひとりさまの絆”で結ばれた3人は、お互いを頼りにしている。

「とにかく、持つべきものは友ですね。3人で活動を再開してから、もう11年も続いているんですからね。もう、あうんの呼吸でしょうか」

 彼女は70代の人生を輝かせる秘訣を、こう明かした。

「とにかく、ときめくこと。何事もあきらめちゃいけない。何かを始めるのに年齢は関係ないということですね。《人生、投げない、捨てない、あきらめない》。これが私の好きな言葉ですね」

 そう、園の人生の最終列車は、まだ出発していないのだ。