国光宏尚・gumi社長のTwitter

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 2014年12月18日に東証1部へ上場したゲーム開発会社gumiの株価が、値崩れを起こしている。上場してわずか2カ月半後に、15年4月期業績見通しの営業損益を13億円の黒字から4億円の赤字へ大幅下方修正したため、売り注文が殺到。3月6日、9日に2日連続してストップ安(500円安、2日で合計1000円安)。この暴落を交えて、その後も株価は下落し続けた。

 gumiは同期決算が上場初年度の決算になる。当初予想は連結売上高309億7200万円、経常利益12億7700万円だったが、それが今年3月5日になって突如、大幅下方修正し、売上高は265億円、経常損益は6億円の赤字(前期は1億6800万円の赤字)とした。ゲームの課金収入が海外で伸びていないというのが理由だ。

 gumiは昨年末の目玉IPO(株式公開)案件として、東証第1部へ直接上場した。上場当日につけた高値(3340円)を一度も上回ることなく、株価はずっと調整を続けてきた。上場時の1000億円規模という高水準の資金調達の根拠となった、業績急拡大というシナリオが狂いつつある。市場関係者の間では國光宏尚社長ら経営陣への不信感が強まっており、國光社長は3月から8月まで6カ月間、役員報酬を全額返上する。

 gumiはコロプラなどに続くスマートフォン(スマホ)ゲームの「勝ち組」といわれてきたが、公開価格の想定が不透明だった。1株3300円で決まったが、昨年9月に無料対話アプリのLINEがgumiの第三者割当増資(33億円)を引き受けた際の1株当たりの発行価格は1362円。わずか3カ月で株価が2.4倍に大化けしたことになる。「LINEと提携したことで企業価値が上がった」という主張は説得力に欠けた。上場時は公開価格と同値でスタートし、一時は3340円をつけたが、すぐに3070円まで下げた。上場初日は3165円で終わったが、初日から公開価格を下回り、以降一度も公開価格を上回ったことがない。

●2日連続のストップ安

 業績下方修正後の週明け3月9日も、gumiは大量の売り物を浴びストップ安(500円安)の1581円で終わった。LINEに第三者割当増資を行った1362円が指呼の間となった。

 gumiにはさらなる悪材料が出た。同社の韓国子会社で「役員が数十億ウォン(数億円)を横領した可能性がある」と韓国メディアが3月19日に報道。同日、東証での取引が終わった後で会社側は「役員ではなく、従業員が数千万円を横領した疑いが強まった」と公表。管理体制の甘さや内部の混乱ぶりが、投資家の失望売りに拍車をかけた。3月20日は49円安の1290円まで下落し、前日(3月19日)つけた上場来安値1282円に接近した。

 この時点で、LINEに第三者割当増資で引き受けてもらった価格(1362円)を6%近く下回ったことになる。公開価格3300円の半値以下、60%強安くなる格好となった。

 gumiの公募・売り出し株数は1100万株以上だった。時価総額は約945億円に上り、14年に78件あったIPOの中でも際立って大型だったため、株価暴落で損失を被った投資家が多数出た。

●株価暴落の過程で経営幹部が株売却

 社長の國光氏の行動を疑問視する見方も多い。3月5日の下方修正発表の翌日になって、1月30日に30億円を無担保で借り入れしていたことを公表した。運転資金に充当するためだったとしているが、借り入れから1カ月以上たってその事実を明らかにしたわけだ。

「IPOを行い潤沢に資金があるはずのgumiが、運転資金を急遽借り入れたことが1月末段階で公表されていれば、個人投資家は早くgumi株式を見切り売りしていたかもしれない。そうしていれば、投資家たちの損失はまだ少なくて済んだ。運転資金を借り入れたということは、年明けからの業績悪化を見通していたことの傍証になる」(市場関係者)

 上場時の会見で國光氏は「オンラインゲームで世界一を目指す」と豪語したが、四半期ベースの売り上げは14年5-7月期をピークに減少していた。上場時点で明らかにした業績見通しに確信があったわけではないことを、数字が裏付けている。「超楽観的な業績の見通しを出して株価を高くしようと意図したと酷評されても仕方ない」(アナリスト)との厳しい声も聞かれる。

 3月16日付ダイヤモンド・オンライン記事『「上場ゴール」の最悪IPO “gumiショック”の波紋』をはじめとして、メディアでも上場をめぐるgumiの一連の動きに対し、批判が強まっている。暴落の過程で、財務担当責任者ら経営幹部が持ち株を売っていた事実も発覚している。

●他の上場案件に深刻な影響

 そのgumi上場の主幹事証券会社を務めた野村證券が再び主幹事を引き受けたAiming(東証マザーズ)が、3月25日に上場する。3月のIPOの目玉銘柄だ。Aiming はMMO(大規模多人数同時接続型)RPG(ロールプレイングゲーム)と呼ばれるスマホ向けオンラインゲームを開発している。『剣と魔法のログレス〜いにしえの女神〜』『ロードオブナイツ』などが看板タイトルだ。野村が主幹事で、ジャフコ・スーパーV3共有投資事業有限責任組合が筆頭株主である点などが、gumi上場とそっくりであり、幹事証券に三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券、マネックス証券が入っているところもgumiと同じ構図だ。想定発行価格は920円。15年12月期予想利益を基準にするとPER(株価収益率)は24.4倍。58億円の資金を吸収する予定で、マザーズ上場案件としては大型だ。gumi(1株3300円)に比べてAimingの想定発行価格は920円と相対的に安いが、「gumiの連日ストップ安、株価急落の影響が出る可能性もある」(市場関係者)。

 野村が主幹事証券を務めたジャパンディスプレイ(JDI)は、昨春に公開以来、株価が低迷している。シャープが経営危機に陥り、競合であるJDIの株価は少し持ち直し400円台に戻ったが、公開価格の半値以下でずっと低迷している。「gumiはJDIの二の舞いか」という指摘が早くから出ていたが、その通りになった。

 3月16日に始まる週には1週間で5社が新規上場したが、上場後の記者会見ではgumiを連想させるような質問が相次いだ。「15年3月期の業績予想は確かか」と聞かれたある企業のCEO(最高経営責任者)は「ゲーム会社とは違う。黒字予想が一転して赤字になることはない」と皮肉まじりに答えていた。「上場がゴールにならないか」と聞かれた経営者もいたが、「上場はスタートにすぎない」と反論していた。

 gumiは上場予備軍に冷や水を浴びせ、投資家はIPO案件に距離を置き始めた。上場時の公開株価算定に幹事証券会社もシビアになっている。ここ最近、公開株価はバブルの傾向が強かったが、一時より下がっている。そしてなにより、東京証券取引所が上場候補企業の業績下方修正、特に赤字転落に敏感になっている。

 今年は上場企業が100社前後に上るとされていたが、gumiショックにより証券取引所の審査が厳格化されることは確実視されており、IPOを諦めざるを得ない企業も出てくる可能性がある。

 gumiショックの波紋が広がる中、Aiming上場初日、3月25日の同社株式初値に注目が集まっている。
(文=編集部)