「プリンセス・テンコー」として世界的な知名度を誇る二代目引田天功(53)が、詐欺まがいの話で訴えられていた。その訴訟の内容を探ると、故・マイケル・ジャクソンの名前やら、加害者とは言いがたい事情も飛び出す。まさに“イリュージョン”な話なのだ。

 発端は11年5月に遡る。今回、引田らを訴えている神奈川県の不動産会社社長のもとに、知人の紹介で1人の男性が現れた。

 訴状によれば、その男性は09年に亡くなったマイケル・ジャクソンの46点の遺品を展示するイベントに絡んだ関連商品の販売事業を持ちかけ、ついては「権利取得のため」として6500万円の融資を申し入れてきたという。

 そのイベントは「MJ46ジャパンツアー2011」と題され、引田がプロデューサーを務めるなど中心的役割を果たしていた。その社長も4カ月という短期融資で、その関連事業は大きな利益が見込めると考えた。そして、融資に応じたものの、しだいに返済は滞り、男性とも連絡がつかなくなる。そこから融資話はややこしい展開を見せる──。

 その前に、この男性の説明が必要だろう。実はTBSの木村郁美アナ(40)の元夫・杉澤修一氏(45)なのだ。06年の結婚時には、有名アスリートのマネジメント会社を経営する杉澤氏との「玉の輿」婚と話題となったが、会社経営を巡る金銭トラブルから「旦那の借金で激ヤセ」などと報じられる中、あえなく09年には離婚に至っている。

「同時期、杉澤氏の会社経営の内情を示すものかどうかは断定できないものの、杉澤氏の会社の未公開株が、ブローカーなどを通じて販売されていたこともあります」(経済誌記者)

 話をややこしい融資の件に戻そう。担保として、社長への事業権利の譲渡を約束されていたのだが、複数の関係者が介在する権利であり譲渡は進まない。そうした中、イベント自体も企画段階で、曖昧としたものにすぎないと判明。果ては、事業権利譲渡の交換条件のような形で、歌手の河村隆一(43)のコンサートグッズ販売事業への参加も飛び出したのだ。結果、一度掛け違えたボタンは元に戻ることなく、法廷の場に持ち込まれる。12年2月に社長は東京地裁に提訴したのだ。

 原告の社長の訴えによれば、引田は事業の中心的人物で、全てのトラブルも共謀して指示されたものであり、使用者責任は免れないと主張。訴状の被告の欄には引田、杉澤氏以外にも複数の会社や個人の名前が並んでいる。

 その後、公判では杉澤氏側からは「(杉澤氏の)弱みにつけ込んで虚偽の借金の書類と領収書を作成された」と反論。さらには、「あまりに高利の借金は刑事罰の対象になる」と真っ向から対立している。一方の引田側も、「(原告である社長が)勝手に誤解しているかあるいは、引田らを訴訟に引き込むため」の一方的な主張で「名誉毀損甚だしい」と強い主張を展開し、審議は平行線のまま、現在も係争中である。

 本誌の取材に対し、引田のマネジメント会社社長と杉澤氏本人は係争中であることを理由に、ともに「コメントは差し控えたい」と答えている。

 引田は仕事のキャンセルは生じていないが、一部のマスコミに報道されたため、「精神的苦痛は拭えない」と主張。複数いる被告の中には名前も顔も知らない人もおり、少なくとも共謀の事実はなかったとしている。

 一方で、イベント「MJ46」の当事者であることは認めつつも、引田の関与しないところで勝手に融資話が進んでしまったものだという。

 真っ向から原告・被告間で食い違いが生じており、道義的な面も含めて、裁判の中で引田はみずからの立場を主張し、裁判所の判断に委ねるつもりだという。

 観客を魅了するステージよろしく、泥沼の法廷劇からの華麗なる「大脱出」を果たせるのだろうか。