休日の公園に「SNSだけイクメン」増殖中 〜「いいね!」の前に子どもが「あぶないね!」〜

写真拡大 (全2枚)

「今日はチビと公園に来ています。足が速いので追いかけるのが大変!」

スマホで写真を撮り、その場でコメントを書いてFacebookの投稿ボタンを押す。
3歳と5歳の兄弟は、すべり台に向かって駆けていった。



「ふぅ」

ベンチを見つけて腰を下ろし、再びアプリを立ち上げる。
すでに「いいね!」が17。うん、悪くない。

コメント欄に並んだ「かわいい!」「○○さんって子煩悩なんですね」「お子さんも嬉しそう!」の言葉をニヤニヤと眺める。そして1つ1つに「いや〜僕に似ちゃったんですけどね」「かわいい時期は短いからね〜」「ハイテンションです!」と答える。

その間、「僕に似たかわいい時期のハイテンションな子どもたち」は、すべり台から転げ落ちて号泣中……。

ネットでは饒舌な「SNSだけイクメン」


私がよく行く公園は収容力があるため、かなりの数の父親×子どもセットを見かける。1枚だけ写真を撮った後、下を向きっぱなしの父親が日々増殖している。

子ども同士がトラブルを起こしても、気づかない。コメント書きなのか、せっせと指は動いている。一方、TwitterやFacebookには休日になると男性陣からの子ども写真投稿が増える。リアルタイムでコメントに返しをしている父親に出会うと、「お前、子ども見てねーだろ」とツッコんでしまう。

名付けて「SNSだけイクメン」。

寝かしつけも仕上げ磨きもやらないくせになにが「いいね!」だ、とSNS好きの夫を持つ知人がぼやいていた。大きな子どもも入り交じる休日の公園は、とくに幼児にとって危ない場面がある。そばについて、一緒にすべり台を滑ってこそのイクメンじゃないのか。散々スマホをいじったあげく、子どもがいないのに気づいて慌て出す父親も何度か見た。

「ほめられ願望」が育児のモチベーションになる


普段から料理を作る人は、写真をわざわざネットに載せない。高級レストランに行きつけている人は、いちいち自慢はしない。SNSやブログは、「非日常を嬉しがって報告したくなる」ツールなのだ。私も手のこんだ料理を作った時はついアップしてしまう。普段はパエリヤなんか作りません。ごめんなさい。

芸人の柳原可奈子に「ブログママ」というネタがある。子どもに決めポーズをさせて写真を撮り、行事やイベントはブログを書くためと割り切る母親像で笑いを取っていた。家事や育児は基本的に人にほめられない。

だからこそ、あえて主張する。露出する。家族にほめられなくても、ネット上のコメントで救われる人もいる。またほめられたくてがんばるうちに、習慣化する。私も元塾講師として、そうやって生徒を伸ばしてきた。大人だって一緒だ。

ここに「SNSだけイクメン→ガチイクメン」に変えるヒントがある。家族が対面でほめて、ようしオトウサンはりきっちゃうぞぉ!状態を作ることだ。ネットの会話より、家族でしゃべる方が「いいね!」にしてしまおう。時にはあえて、掲載用のパパ&子ども写真を撮ってあげるのもいい。一緒にお風呂に入ってる写真、絵本を読んでやっている写真。育児自慢のアシストをすることで、モチベーションを上げてもらう。

この記事を書いている今日は、日曜日。

Twitterのタイムラインには「家族サービスなう」があふれ、Facebookには子どもの写真と「いいね!」が降り注ぐ。

あなたの子どもは目の前にいる。

仕事で疲れているのに、全力で遊べとは言わない。せめてスマホから顔を上げて、事故やケガのないようにくれぐれも気を配ってほしい。

そしてできれば、子どもたちからたくさんの「今日のパパ、遊んでくれていいね!」をもらってほしい。


山口照美
広報代行会社(資)企画屋プレス代表。ライター。塾講師のキャリアを活かしたビジネスセミナーや教育講演も行う。妻が家計の9割を担い、夫が家事育児をメインで担う逆転夫婦。いずれ「よくある夫婦の形」になることを願っている。著書に『企画のネタ帳』『コピー力養成講座』など。長女4歳・長男0歳(2012年現在)