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 ──最初に大雑把に感想を??

 予選から何がしたいんだかわからないと言われ続けてきたオリンピック代表でしたが、岡ちゃんと同じように、いきなりの変貌を遂げました。自分たちで作るよりも、ボールを放棄して守備から試合に入る。4-4-2で高い位置からのハイプレスとハーフラインからのプレッシングを使い分けることで、スペインの攻撃を阻害することに成功したと思います。

 ──話はそれますが、岡ちゃんにしろ、セッキーにしろ、なぜあのような形に落ち着くんですかね。

 世界大会で自分たちのボールを保持した状態からのアクションで試合を進めてくというのが、現実的に無理だという分析の結果なんだと思います。無理だという分析の原因は、そこまでに至る過程で何も積み上げられていないからじゃないか!!という指摘は真っ当かもしれませんが。

 ──相手がボールを持たせるチームだったら、どうなるんですかね??

 ワールドカップのパラグアイ戦みたいになるんじゃないんですかね。ホンジュラスもモロッコもボールを持つことは嫌いではないように見えたので、予選ではそういう光景に出くわさないと思います。なので、余計な色気を出さなければ、いい結果が出るかもしれません。永井のスピードにしろ、前線には長所を持った選手がいるので。

 ──スペインがぐだぐだに見えたんですが、その要因は何だったのでしょうか??

 スペインは予選でもフル代表ほどのポテンシャルを見せていたわけではありません。でも、今日よりは間違いなく強かったです。それは、単純に出ている選手が違います。ムニアイン、チアゴ、エレーラとマタが組んだときのオリンピック代表はなかなかの迫力を見せていました。エレーラは途中から登場しましたが、マタが孤独に戦っているのが印象に残ったと思います。

 ──イスコやコケが代わりの仕事をできなかったということでしょうか??

 簡単に言うと、そうなります。ただ、イスコやコケのプレースタイルがチアゴたちと違うのは当たり前の話なので、チームの機能性が変わってくるのは当たり前の話です。なので、代わりの仕事ができなかったというよりは、代役として自分たちの長所を発揮できなかったといったほうが適切だと思います。

 ──イスコたちが自分たちの長所を発揮できなかったのはなぜなんでしょうか??

 最初にイスコの長所はわかりません。マラガでトップ下で起用されていて、技術のある選手だなくらいの印象しかないので。ただ、前述の選手に比べると、個で仕掛ける判断が多い印象はありました。この試合ではサイドに流れて、そこから仕掛ける場面が多かったと思います。ただ、ほとんど止められていましたが。

 酒井が頑張っていたとも言えますが、ジョルディ・アルバのフォローがなかったから、上手く仕掛けられなかったとも言えます。

 コケは後方でバランスを取るのが上手い選手なのかなと後半のビルドアップを見て感じました。ロメウが入ってからは、ロメウの上下動で出来たスペースを見つけてボールを受ける場面が何度も見られたので、周りの運動量に依存する選手の可能性が高いです。

 前半のスペインは後方の選手、CBとハビマルがほとんどリスクを冒しませんでした。楔のパスを狙ったり、ドリブルでボールを運んだりせずに、デ・ヘアに無駄に頼る場面が多かったと思います。恐らく、そおういうゲームプランだったのでしょう。だから、ハビマルはそんなに動きません。となると、前半のコケが機能しないのもよく分かる話です。

 ──やたら推されていたジョルディ・アルバの名前も途中から完全聞こえなくなりましたね。

 前半のスペインはボールを自分たちの形で運べませんでした。1つは前述した後方の選手がリスクを冒さなかったこと。もう1つは、コケとイスコがハビマル周りのスペースでボールを受けにこなかったことです。もともとそういう場所でボールを受けるのが得意でないのかもしれません。なので、マタがその役目を引き受けていました。

 ただ、マタだけではなかなか状況が変化しません。全体で押し上げられないので、SBが高い位置に進出できない。だから、ジョルディ・アルバたちが目立たない。さらに、前線の選手が単独に仕掛けるしかない。で、単独で試合を壊せそうな選手はいないというスパイラルになります。

 ──10人になったけど、後半のほうがまだボールをスペインらしい形で運べていたと思います。

 エレーラとロメウの登場が大きいです。最初にエレーラはスペースを見つけられる選手です。いわゆる相手の隙間が見えるということです。そして、ロメウはそういうポジショニングをとっている選手を見逃しません。マタもそういうことができるので、いわゆるスペインらしい選手が増えたわけです。

 また、10人だけど、失点をしているわけだから、後方の選手もリスクを冒す必要があります。ただ、あんまりリスクを冒していませんでしたが、前半よりはましになった印象です。特に3バックに変化することで、SBを高い位置に送り出せたのは計算通りだったと思います。ついでに、コケも復活しましたし。

 ──確かに後半のほうが、DFラインの近くにスペインの選手が多かった気がします。

 ビルドアップは数的優位を維持したまま、相手の陣地に侵入していくためにやる、またはオープンな状況の選手を作るためにやるものです。なので、どこで数的優位を作って、どこからボールを運んでいくかという基準が必要になります。後半のほうがそういう価値観が一致している選手が多かったから、単純によくなったとも言えると思います。

 ──日本について少し。

 本当は5-0くらいにできたんですけど、デ・ヘアのファインセーブの残像でも頭に残ったのかもしれません。日本からすれば、自分たちのプランを確実に遂行しての結果なので、最高の気分だと思います。ただ、予選でやってきたよくわからないけど、ボールを持ちたがるサッカーを本番でもやりたがるのは間違いないので、そこんところをどう折り合いつけるかになると思います。

 ──確かに、本番のたびにこの現象が起きて、最終的にPKで終わるなんて結末が繰り返されるのは、切ないですね。

 問題は積み上げられないということなんですけどね。こういう大会で勝つために、あらゆる手段を厭わないのはまったく問題無いですし、帰るべき場所があるというのは色々なチャレンジを可能にすると思います。

 ■独り言

 というわけで、スペインに勝った日本。イタリアと同じように、日本も誰にも期待されないほうが結果を出せるのかもしれない。ここでスコアがもっと開いていれば、得失点差争いで優位に立てたわけなので、それが今後に響かなければいいなと。それにしても、永井は速くて、蛍は守備で存在感を発揮して素晴らしかった。