正直、今回の更新は気が進まない。埼玉西武ライオンズからポスティング・システムで米メジャーリーグ挑戦を表明していた中島裕之の交渉権を、よりによってあのニューヨーク・ヤンキースが落札してしまったのだ・・・。

 スポーツニッポン紙によると、ヤンキースはデレク・ジーターのバックアップとして中島に注目。中島にとって、どこまでレギュラーに近い保障を得られるかが交渉の焦点となる。交渉期間は30日間。

ヤンキースは1901年に設立された、メジャーきっての名門球団。27回のワールドシリーズ制覇は、11回セントルイス・カージナルスを抜き、ダントツの1位だ。
 近年は、豊富な資金力でメジャーの他球団はもちろん、南米、アジアからも有望な選手をかき集めることで有名。野手ではA−Rodことアレックス・ロドリゲス、投手では今季アメリカンリーグ2位の19勝をあげたC.C.サバシアなどがその最たる例だが、わが国からも、かつては伊良部秀輝松井秀喜がプレーし、現在は傘下のマイナー球団に井川慶が所属している。
 また、先日発表された球団別の平均年俸でも、ヤンキースの654万ドルは1位。最下位カンザスシティ・ロイヤルズ134万ドル5倍にも及んだ。
 米経済誌Forbesの4月の発表によると、球団の資産価値17億ドル。もちろんメジャー1位だが、世界のスポーツチームランキングでも、イングランドのプレミアリーグに属するマンチェスター・ユナイテッドFC、米NFLのダラス・カウボーイズに次いで3位だ。

 日本人には、ヤンキースは、お家騒動に揺れるわが国のあの球団のスケールを何倍にも大きくした存在と紹介した方がわかりやすいと思うが、全国区で知られている半面、アンチファンも多いのも、あの球団と同じだ。

 レッドソックス・ネーションと呼ばれる、ニューイングランド地方一帯のボストン・レッドソックスのファンは、まさにアンチファンの代表。レッドソックスは1918年から2004年まで86年間もワールド・チャンピオンの座から遠ざかっていたが、そのきっかけがベーブ・ルースのヤンキースへの移籍にあるのだから、ヤンキースへの敵愾心はひとしおだ。
 2004年、2007年と、21世紀に入り2度もワールド・シリーズを制しても、ヤンクス(ヤンキースの愛称)憎しの精神は残っている。今でも、「レッドソックスが勝ち、ヤンキースが負ければ最良の日」と言われれいる。
 これまでにも4度、レッドソックスの本拠地、フェンウェイ・パークを訪れたが、レッドソックスの試合中にも関わらず、ヤンキース敗戦の一報が流れれば、ファンはレッドソックスの試合に関係なく拍手喝采。逆にヤンキースが勝利していれば大ブーイングだ。
 球場までの道中、誰かがふざけて「レッツゴー・ヤンキース」など言おうものなら、夜中にも関わらず応援合戦が始まる。
 ボストンでは、大の大人がヤンキースファンの子供に、いかにヤンキースが酷いチームか延々と話し込むと言われているが、あまがち冗談ではないだろう。
 さらに2005年には、ヤンキースのファンがレッドソックスのファンと激しい口論の末、1人を殺害し1人を負傷させる事件も起きたのだから、わが国のジャイアンツ(言っちゃった)と阪神タイガースの両ファンのいざこざなど、かわいいものである。

 レッドソックス・ネーションで市民権を得るには、レッドソックスを愛し、ヤンキースを憎むことと言われている。ボクも松坂大輔の入団を機に洗礼を受け、レッドソックスに忠誠を誓った身だが、よりによってわがライオンズの中島の交渉権を、あのヤンクスが獲得するなんて・・・
 しかも、前日には「レッドソックスが交渉権獲得か」との一報が流れただけに、レッドソックス・ネーションの言葉を借りれば、「野球人生で最悪な日」だ。