レイソル、昇竜のJ1優勝(続)
Jリーグ34節 浦和 1−3 柏
(12月3日 埼玉スタジアム)

★「レギュラーは11人ではない」
 「レギュラーは11人ではないと自分は考えている」。 
 柏レイソルのネルシーニョ監督は、J1優勝を決めた試合のあとの記者会見で、こう語った。チーム全員がレギュラーで「状況に応じて起用する」という意味である。
 「状況」には三つの場合があるだろう。
 第一は、試合ごとに一人一人の体調、あるいは精神状態のいい者を起用する、という意味である。スター選手であっても調子が悪ければ遠慮なく外す。
 第二に、相手チームによって違うことである。たとえば、相手に強力なストライカーがいれば、それを押さえる方策をとり、その方策に適した者を起用する。
 第三に、試合の状況によってである。相手が守りを固めているような場合、こちらが1点リードされているような場合など、いろいろな状況がある。

★スタンダードの試合
 ネルシーニョ監督は「試合のスタンダード」という言葉を使った。
 2対0とリードして前半を終わったとき、ハーフタイムに「後半もスタンダードの試合を続けよう」と指示したという。
 記者会見で、その意味を聞かれて「成功しているやり方を変えることはない、ということだ」と説明した。その「やり方」とはパスミスをしないこと、また守りのバランスを崩さないようにすることだという。
 つまり、2点リードしているからといって、守りに入ったり、反撃に出る相手の裏を狙ったりする必要はない。前半と同じように、ふつうの試合をしよう、ということのようだ。
 こういう言葉に「一つのチームになって頑張ろう」とか「自分たちのサッカーをすれば勝てる」というような精神論の匂いはない。

★緻密な「戦術家」
 ポルトガル語(ブラジル語)の通訳を通じて聞く話だから、ネルシーニョ監督の真意を、こちらが、どこまで理解できているかは分からない。
 しかし、記者会見で聞いた限りでは、ネルシーニョ監督は緻密な「戦術家」のようである。選手の状態、試合の状況を見る目が的確で、その対応に誤りが少ない。
 経歴や風貌や話ぶりで選手を引き付け、チームをまとめるようなカリスマ的雰囲気は感じられない。そういう点では、オシムやザッケローニとはタイプが違う。
 納得できる起用、適切な指示による勝利の積み重ねが、選手たちの信頼を得て、J1復帰、即優勝へつながったのだろう。
 ブラジル人選手を使いこなし、育成組織から上がってきた若手にもチャンスを与えた。細部にまで目の行き届く監督だろうと考えた。