岩手、宮城、福島の東北3県の陰に隠れて、目立たない存在ながら、実は北関東の茨城県も被害が兆円単位に及ぶ。地震による被害が最も大きかった北茨城市、津波に襲われた大洗町をはじめ、被災地の住民は終わらない余震に不安を募らせている。橋本昌知事に話を聞くと、被害の広がりには驚きを禁じ得ない。特に、収束時期すら判然としない原発事故被害の根は深い。そうした困難な状況にあって、ベテラン知事が、復興に取り組む茨城県の姿勢と、国に対する要望を忌憚なく語った。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原英次郎)


はしもと・まさる/1945年生まれ。茨城県出身。東京大学法学部卒。69年自治省入省、福井県財政課長、山梨県総務部長、自治省消防庁消防課長、財政局公営企業第一課長などを歴任。93年茨城県知事に当選、就任。2009年同県知事に再選し、5期目を迎える。

――現在までの茨城県の被害状況は、どうなっていますか。

 死者行方不明者は25人、一部損壊も含めた家屋の被害は13万戸に達しています。

 日本政策投資銀行の推計によれば、被害額は宮城が一番大きくて6兆5000億円、岩手県が4兆3000億円、福島県が3兆1000億円。これに対して茨城県は2兆5000億円で、実は、福島県とあまり変わらない被害が出ています。

 もう1つは、茨城県は海岸線が長いので、港湾や漁港がかなりやられて、この修復だけでも1000億円前後かかる。こうした直接的な被害に加えて、港湾や漁港が使えないことによる企業活動への影響なども出ています。

 それからいま必死で整備に取り組んでいますが、鹿島の臨海工業地帯が被害を受けた影響は大きいです。実は、鹿島は川上から川下まで連続した産業構造になっていて、中核の鹿島石油が被災したので、他の産業の操業率も落ちている。このように茨城県も、相当な被害が出ています。

 ただし、被害ばかりを強調していると、注文が来ないという面があるので、我々としても被害は大きかったけれども、企業活動、県民の日常生活が、早期に日常に戻るように頑張っているところです。

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