対外金融資産が年々増える一方で、対外債務の収益率は対外資産の収益率を大きく上回っている。中国国家外貨管理局が5月30日に発表した2010年末時点の対外資産負債残高で、この矛盾が再び浮き彫りとなった。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

 国家外貨管理局の発表によると、2010年末時点の中国の対外金融資産額は4兆1260億ドルで前年比19%増、対外金融負債額は2兆3354億ドルで同20%増、対外金融純資産は1兆7907億ドルで同19%増だった。

 「中国の対外債務の収益率、すなわち債務コストが対外資産のそれを大きく上回っていることが最大の問題。学者と機関の調査で、外国企業による対中投資の年間平均収益率は20%前後であることがわかっている。しかし2002年から2009年の中国の外貨準備投資の名目収益率は平均5.72%で、米ドルの下落とインフレの影響を考慮した場合、その収益率は大幅に縮小する」と、社会科学院の世界経済政治研究所国際金融研究室の張斌研究員は述べている。

 「貧乏人が金持ちを養うようなもの」

 2010年末の中国の「その他の投資」の項目の負債額は6373億ドルで、前年末より1957億ドル増加し、増加幅は44.3%に達した。これについて丁志傑氏は、外貨準備高が3兆ドルもある国で、機関と企業が外からドルを借り入れるというのは非合理的で、変える必要があると指摘する。

 「スティグリッツの非安全圏」

 あるアナリストは次のように見ている。中国の債権国としての地位は防御的な側面をもった「官制債権国(対外投資は貯蓄資産を主な形式とする)」で、主体的な「個人債権国(対外投資は直接投資を主体とする)」でないため、中国は「スティグリッツの非安全圏」に陥っている。「スティグリッツの非安全圏」とは、新興国が貿易黒字を政府の外貨準備に転換させ、収益率の低い米国債を購入して米国資本市場に資金を回し、米国はさらに資金を新興市場に投資して高額のリターンを得るというものだ。(編集担当:米原裕子)



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