アジアカップの初戦、ヨルダン戦は1−1の引き分けだった。終了間際にかろうじて追いつく、非常に厳しい戦いだったね。スタートとしては、悪いと言わざるを得ないだろう。
 
欧州や南米との戦いと、アジアでの戦いとの違いを痛感させられるものだ。日本相手にべったり引いて、球際が激しく、一点集中でカウンターを繰り出す。ワールドカップでは日本がヨルダンの立場になるが、アジアでは逆になる。これがまさにアジアの厳しさだね。日本は何度かチャンスを作っていたけど、試合を通じて相手の出方に戸惑い、相手を意識しすぎて、横パスやバックパスが多かった。
 
ザッケローニ監督をはじめ、このチームにアジアを知っている選手が少ないことも大きかったね。ワールドカップとは異なる種類のプレッシャーに対する答えを、チームとして持てていなかった。その中で、期待された欧州組の選手たちも本来の力を発揮できなかった。
 
後がなくなった時間帯にようやく吹っ切れて放り込み、吉田が同点ゴールをあげた。この最後の5分間の気迫、姿勢を、もっと早い時間帯から見せてほしかったと思ったのは僕だけじゃないだろう。
 
頭が痛いのは、ベストな選択が見えなくなったことだ。苦しんで苦しんで、最後に生まれたゴールは放り込みからのディフェンダーのヘディングだった。スタートしたときの布陣がいいのか、ビハインドになってからの布陣がいいのか。香川はサイドなのか中なのか。本田圭の使い方は? FWのファーストチョイスは? 大会を通じてチームを作っていければいいという意見もあるが、そんな悠長なことを言っている暇はない。ザッケローニ監督は眠れぬ夜が続くだろうね。
  
同じ組のもう1試合、サウジアラビア対シリアがシリアの勝利に終わったことも、今後の日本の戦いをますます苦しいものにするだろう。最後まで団子状態になることが予想され、勝てば突破、負ければ敗退というような状況でサウジアラビアとの最終戦を戦う可能性も出てくる。

ヨルダン戦は、2010年のワールドカップフィーバーから目を覚まさせる、強烈なビンタだった。次戦のシリア戦では確実に勝ち点3をもぎ取ってもらいたいね。(了)