大根仁監督

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 テレビ東京の深夜ドラマ「モテキ」がDVD‐BOXになって、11月26日に発売される。

 ドラマは、恋愛偏差値が低い主人公(森山未來)に、ある日突然「モテ期」が到来し、野波麻帆、満島ひかり、松本莉緒、菊地凛子が演じる4人の女性と急接近していくものの、やること全てが裏目にでてしまう…という内容。原作は、久保ミツロウの人気コミック。

 深夜枠ながら、既存曲をふんだんに使用した音楽や、デジタル一眼レフカメラを使用した撮影手法などで、ネットを中心に話題を呼び、ギャラクシー賞月間賞にも選出された。

 今回のDVD‐BOXには、未放送シーンを含むディレクターズカットの全12話と、オンエア版の最終話、メイキング映像、森山、野波らキャストのインタビュー、満島らの貴重なカラオケシーン等、異例のボリュームの特典映像が収録されている。

 26日の発売を前に、脚本・監督を務めた大根仁氏に、DVDの買いどころや、ドラマ制作の裏側について聞いた。

――ドラマ「モテキ」がDVD化されて、11月26日にリリースされますが、DVDの見どころ、買いどころを教えてください。

大根仁(以降、大根):放送で楽しんでいただけた方は、放送バージョンから更にアップデートした全編ディレクターズカットになっていて、特に最終回は全く印象の違う話になっていると思いますので、その辺はぜひ。あとは、テレビドラマのDVDとしては、尋常ならざる特典映像の量、バリエーションですね。

音楽という部分が、このドラマでは非常に大きな比重を占めていたんですが、テレビドラマでは音声、音量の規制っていうのがあって、大きな音で聞かせたいというところが抑えられてしまっていたので、その部分を音の仕上げの作業をやり直して、よりダイナミックな音で楽しんでいただけます。

――なるほど。音楽の選曲には大根監督の趣向が反映されているのでしょうか?

大根:もともと原作本は、過去の話ごとにJ-POP、J-ROCKの名曲のタイトルが、そのまま漫画のタイトルに使われていて、原作の久保(ミツロウ)さんと僕の音楽的趣向とか、サブカル的趣味が非常に近いということもあったので、大きくずれることもなく、原作の音楽の曲タイトルをそのまま使ったのもあるし、僕が新たに足したのもあるし、森山未來君っていうのが、若いんですけど、僕や久保さんと音楽的趣味がほとんど一緒だったので、未來君も何曲かピックアップしたりとか。

――森山さんも制作の方にかなりコミットした作品なんですね。

大根:そうですね、最初3、4話くらい脚本ができたときにキャスティングの話をしに行って、じゃあ、ちょっと一回話しましょうかってことで、飲みの場の6時間くらいで、結構内容について話しましたね。

――今回のドラマを作る上で、一番大変だったのはどんなところですか?

大根:脚本、原作があるとはいえ、ドラマで人動かして喋らせたり、動かしたりっていうのは全く別のものなので、原作のいいところを壊さずに、どう役者が動くドラマにするかという脚本化する部分が一番大変だったんですが、まあまあ現場に入ってしまえばストレスはなく、そこから先のストレス、お金のことや音楽の権利関係では、テレビ東京さんに頑張っていただきました。

あまり世間一般には知られていないんですが、テレビで放送した音楽っていうのは、放映するときはそんなにお金がかからないんですが、ソフト化するときには著作権使用料の問題がでてきまして、その作業にお金がかかったりします。

――それを今回の「モテキ」ではクリアしている。

大根:そうですね。ほぼクリアしている。

――なるほど。特にこだわったのは音楽ということでしょうか?

大根:こだわったところは、撮影のワンカットに至るまで全部なんですけれども、あんまり、頑張っていますよって見えないように努力したっていうのが、こだわったところですかね(笑)。

――特に監督が好きなシーンは?

大根:それはちょっと言いづらいですね。全話、全シーン、全カットに思い入れはあるので。もちろん失敗したなって思うところはあるんですが。でも、1話のファーストカットと最終話のラストシーンはうまくできたなと思っています。

――ラストシーンっていうのは、今回の特典映像に入っているDVDにだけ収録されているラストシーンですか?

大根:そうですね。放送バージョンも一応入っていますが、ラストシーンは、DVDのディレクターズカットだと、またちょっと印象が違うかなという。

――逆に、もうちょっとこうしたらよかったな、というところは?

大根:それはシステムの問題で、伝わるかどうか分からないんですが、パナソニックの「LUMIX」というデジタル一眼レフカメラのムービー機能を使って撮ったんですが、

――それは、全編ですか?

大根:はい、ほぼ全編。それで成功した部分もあるし、今までのドラマに無い画質が撮れたと思うんですけど、やっぱり初めてやったことなので、もうちょっとこうすりゃよかったなという部分があったので、その“デジイチ”でドラマを撮るというシステムをもうちょっと構築したい。

――デジタル一眼で撮影した理由は?

大根:予算的なところが1つと、新しいドラマ作るときに今までやったことないことをテクニカル的に必ず1つ入れると、決めているんですが、今回に関しては、普通に暮らしてる人の生活感なり、セリフの言い方なり、人間同士の関係性なりっていうのを描きたかったので、あんまり仰々しくするよりは、もうちょっとラフな形で撮影したいと思ったんですよね。

照明をバチっとたいて、でっかいカメラ構えて、監督がモニターをじっと見て、みたいな感じじゃなくて、自主映画みたいなスタイルというか、実際に僕もカメラ回してるんで。だから、芝居をしてる現場で、そのOKを出す人が、役者に一番近い場所にいる形でやりたかったんですよ。

――今回それをやってみて、今後もそれを継続して追及していく?

大根:内容にもよるんですが、このやり方は、せっかく作ったシステムなので、もうちょっと追求したいかなと思う。仕上げの手間は普通のドラマの仕上げより二度手間、三度手間がかかるというデメリットもあるんですけど。

――なるほど。ちょっとまた話が変わるんですが、今回、魅力的な4人の女性が登場されますが、野波(麻帆)さん、満島(ひかり)さん、松本(莉緒)さん、そして菊地凛子さん。皆さん実際には、どんな方なんでしょうか?

大根:各キャラクターにどっかしら近いところがあるんじゃないかっていう人をキャスティングしたので、土井亜紀(野波)、中柴いつか(満島)、小宮山夏樹(松本)、林田尚子(菊地)というキャラクターに若干近いところはみんなありますよ。

野波さんだったら、本当はこういう人が一番楽なんだろうなっていうような部分とか、満島は、原作のキャラクターから、実はちょっと素の満島寄りにアレンジはしてるんですけど、ちょっとぶっとんだ、ああいう所はあるし、莉緒ちゃんは、小悪魔的なお酒飲むとほんのりしちゃうみたいなのはあるし、凛子ちゃんは本当に分け隔てなく、誰とでも仲良くできる人間的にすごくさばけた人ですね。そりゃ、スパイク・ジョーンズも惚れるわっていう(笑)。

――ブログやツイッターを利用されていますが、ドラマを作る上でもネットを活用したりしますか?

大根:はい。映像をやっているので、分かりやすいところで言えば、YouTube以降は、あからさまに作るものへの影響は大きいですね。

――YouTubeはよくチェックされている。

大根:YouTubeだけじゃないですが、映像サイトってたくさんあるじゃないですか。投稿だけじゃなくて、選りすぐりのかっこいい映像作品ばかり紹介しているところとかもあるし。

――なるほど。この人のブログはチェックしているというものはありますか?

大根:グラビアアイドルのブログとか、たまにチェックしてますけど(笑)。あんまり意識して誰かのブログをチェックしているということはないですね。

情報収集という意味ではやっぱりツイッターに行ってますかね。ただ使いやすい分、ちょっと危険なメディアでもあるとは思っているので、上手く使えるとこは使って、あんまりハマりすぎないようにしています。

ちょっとね、勘違いしちゃうじゃないですか。そこで行われてることが全てというか。ものすごく小さな世界の話のはずなのに、10人くらいにその話題についてリツイートされていると、ものすごく大きな事件のような気がしてしまうというか。

でも、深夜だし、大きな宣伝予算もなく、渋谷駅前に大看板が出るドラマではないので、弱者の宣伝ツールとしてはものすごく強い武器だなと。ゲリラとかが地べたからヘリを打ち落とすみたいな、ああいう武器って感じがしますけどね。

――なるほど。

大根:例えば、DVDだったら、お客さんの顔が見えやすい。感想とかも、メールとかブログとかコメントとか、掲示板に投稿するっていうよりも、もっと気楽になっているから、そういう人達に対して直接打てるじゃないですか、手間と時間さえかければ。こういうドラマって、買うか買わないかレンタルで済ますか迷っている人が結構いて。

でも、公式アカウントで、「観てね」とか「買ってね」みたいなことを直接言われたら、それは嬉しいだろうし。ちょっと迷っている人の背中を直接押すことができるというのは、ツイッターならでは、今の時代ならでは、な気がします。

――今後、監督の中でやりたいと思っていることは?

大根:具体的にはまだ決まってないんですが、さっき話したドラマにおける音楽の使い方みたいなものは、今まで誰もやってこなかったようなことが確立できたと思うし、その辺をもうちょっと追求したいなと。ミュージカルというわけではないんですが、音楽を割合活用した内容にリンクしたようなドラマ。

――それはアーティストとのタイアップですか?

大根:そこまではいかないと思うんですけど、既存曲をうまく使って。知ってる曲がドラマ見てて流れるっていうのは嬉しいし、楽しいんですよ。それをもうちょっと追求したいなと。今回は20代後半から30代を中心にミドル層の男女に向けて作ったんですが、それをもうちょっと幅広い年代に伝えられるようなドラマを作れればいいなと思います。

――これからDVDのプロモーションでイベントも予定しているんですよね?

大根:はい。12月3日に、代官山UNITというクラブで「モテキナイト」という打ち上げパーティーみたいなのがあります。

関係者:詳細は公式ホームページに。あと12月5日に渋谷のタワーレコードで野波さんと、浜謙(浜野謙太)さんでDVD発売イベントを行います。

大根:あとは、インディーズ的に全国各地を回ってDVDキャンペーンをしてきます。

――大根監督のツイッターで見ました。お一人で回るんですか?

大根:そうですね。地元の人とやりとりしながら。テレビドラマってね、多分普通の中規模の映画よりもたくさん見られているのに、観ている人の顔って全然分からないっていうのが今までジレンマだったんです。今回は、観て楽しんでくれてたいる人の顔を見てみたいなと思ったんです。

■作品情報
「モテキ」DVD-BOX 11月26日発売 15,960円(税込)
発売元:「モテキ」製作委員会 販売元:東宝
(C)「モテキ」久保ミツロウ/講談社  (C)「モテキ」製作委員会

■イベント情報
11月28日(日)14:00〜 札幌HMV 野波麻帆&大根仁監督
12月 5日(日)14:00〜 渋谷タワーレコード 野波麻帆&浜野謙太&大根仁監督
12月11日(土)17:00〜 大阪タワーレコードNU茶屋町店 森山未來&大根仁監督
12月19日(日)17:30〜 新宿タワーレコード7F 満島ひかり&大根仁監督

■関連リンク
ドラマ「モテキ」公式サイト
大根仁のページ