日本のスタメンは、川島、駒野、闘莉王、中澤、長友、阿部、遠藤、長谷部、松井、大久保、本田。岡崎、内田、俊輔の岡田三銃士がスタメンから外れた。今回の教訓としては、アジア予選とワールドカップは別物であり、予選で貢献したからって本戦に出られるわけではないわってことだろうか。いろいろいわれていたが、内田が本当に外れることになるとはちょっと予想していなかった。

　カメルーンのスタメンは、ハミドゥ、エムビア、エンクル、バソング、エコト、マティプ、マクン、エノー、モティング、ウェボ、エトー。まじでカメニとソングがいない。これが日本にとって、吉と出るのか凶と出るのか。この試合で、日本の色々なものがきまる、そんな大事な90分であります。

　　■現実の続き、夢の終り。

　日本のシステムは4-1-4-1。攻撃の約束事として、右サイドを中心に攻撃を仕掛けるというものがあるように見えた。右サイドを中心に仕掛けるために、キープ力と仕掛けられる松井が起用されたのだろう。いざとなったら、独力で何とかできるよねって選手は、ベンチを眺めると松井しか見当たらない。サイド攻撃を中心に考える場合、普通はSBを攻撃参加させることで、攻撃に厚みを加えることが多い。

　しかし、日本は違った。左サイドに位置している大久保を右サイドまで移動させることで、攻撃に厚みを加えていた。まさかのセビリア殺法である。アウベスを失ったセビリアは、サイド攻撃に厚みを加えられなくなってしまった。しかし、ナバスが独力でどうにかできたけど、それじゃ物足りないわってことで生み出されたのが、逆サイドのペロッティがナバスに近寄る作戦である。まさか、日本で見られるとは思わなかった。

　必要は発明の母だよってことで、恐らくこんな思考回路だったのだろう。いくら松井でもすべてを背負わせるのは自殺行為に近い。なので、誰かを近くによらせる必要がある。定石はSB。しかし、SBを攻撃参加させることで、自分たちの守備ブロックに穴を作るのは怖い。長谷部や遠藤は相手にマンツーでついているので、SBのカバーリングをさせたくない。阿部にもバイタルをケアさせたい。なら、大久保しかないみたいな。大久保のスペースなら空いてもそんなに問題はないだろうと。

　また、この右サイド攻撃にはエトーを試合から追い出すことと、エコトを狙う意味合いがあったのだろう。エトーサイドから攻めて、ボールを奪われる→エトー起点のカウンターが発生するのは、日本からすると避けたい事態である。なので、逆サイドから攻める。いくら鬼プレスのエトーさんでも、逆サイドまでボールを奪いに来ることは、たぶんない。

　で、エコト。いつからこんな髪型になったのだろうか。カメルーンは右SBにCBもできる選手を起用しているので、狙うならエコトである。途中から本田も気づいたようで、後半の日本はハイボールをエコトと競り合うようにしていたし、本田もエコトに仕掛けていく場面が非常に増えていった。もしも、エコトの位置に守備力のある選手がいれば、かなりまずいことになっていたかもしれない。それか、エトーが左サイドにいれば。これはカメルーンが修正するチャンスだったと思うのだけど。

　次に日本の守備について。イングランド戦から見せているように、相手のボールホルダーにとにかくプレスをかけるような戦術はやめている。自陣に守備ブロックを作って、相手の攻撃を待ち構える形に変貌した日本は、カメルーンの攻撃を冷静に防いでいった。ネタとしてはエトーにボールが渡らないようにプレスをかけること。具体的にいえば、エトーサイドの方向をきりながら相手に寄せたり、エコトサイドの選手へのマークをちょっと甘くすること。

　エトーを試合から追い出すために、攻守にかなり練られている日本の戦術であった。さらにマンマークの鬼である長友が対面に控えているのだから、エトーからすれば悪夢である。そんなエトーは自分のゾーンからはみだしてチャンスメイクをする場面がちらほら。其の場面が証明したことは、やっぱりエトーを抑えれば、カメルーンはなんとかなるという確信。時間が経つに連れ、日本は自分たちの正しさを実感していったに違いない。

　カメルーンのシステムは4-1-2-3。日本がCBにボールを持たせる守備をしてきたので、ボールを落ち着かせることはできた。しかし、ソングがいないので、ゲームを自分から作ろうって意欲をもった選手がいるようには見えなかった。そして、ボールを持たされたCBがゲームを作れるでもなく、消極的なロングボールが何度も見られた。

　エトーを中央で起用しない理由はこんなところにあったのかもしれない。いざとなったら、ハイボール。エトーに何度もハイボールを競らせることが必ずしも正解とは言えない。なので、ゲームを作れないCBは必然的にハイボールが増える。さらに、ソングもいない。よって、空中戦に強い選手を中央で起用する。で、その結果は散々だった。日本のCBに競りかてないし、ボールの精度も悪かった。コートジボワールも見せたが、地上戦で勝負できないCBはほったらかしにしておいても、今大会においてはいいのかもしれない。

　日本側からみても、リスクを取るような攻撃を見せるようなことはなかった。攻撃は前線と中盤の選手におまかせで、DFラインの選手が味方を追い越すようなことはあまりなかった。それは、この試合をスコアレスでもいいよって姿勢が影響していたのだろう。それは第三者から見れば消極的に映るかもしれないが、当事者から考えれば、そんなことは知ったことではないってことだろう。

　試合展開をおっていくと、エトーがボールに触ればチャンスになりそうなカメルーン。しかし、エトーは日本の戦術によって追い出されている。なので、日本が徐々にカメルーンのゴールに迫っていく場面が増えていった。それは狙い通りの右サイドからの攻撃で、松井のクロスが何度も見られた。そして本田もボールを受けに来ることで、数的優位が出来ていたのがボールをちょこちょこ繋ぐことができた原因だろうと。

　そんなクロスの連続から日本が先制点を得ることに成功する。松井のクロスから大久保が潰れて、本田が押し込んで先制。何度も繰り返された形であった。攻撃の時は幅広く動いて、守備の時は懸命に自分のサイドに戻っていく大久保のハードワークにはためらいもなく賞賛ができるだろうなと。

　後半のカメルーンは前線がボールを引き出す動きを多少はするようになったが、そんなに大きな影響はなかった。なので、基本的には前半と流れが変わらない。日本は左サイドからも攻めようぜって指示があったのだろうか。まれに、左サイドからも攻撃を仕掛けるようになった。

　そして、SBも前半に比べると飛び出す回数がほんの少し増えたと思う。それらは、この守備から繰り出されるカウンターについて、岡田監督が考えている証拠なのかなと。ただし、日本がカメルーンに時々しかカウンターを許さなかったように、日本は安全に攻撃をしていたので、それらが実現しそうな雰囲気はなかった。2点目を強引に取りに行く気配はなかったが、前半に比べて攻撃の手を緩めましたってこともなかったと思う。もともとあれくらいでしか攻める気がなかったってほうが正しいのかなと。

　カメルーンはエマナを投入することによって、徐々に攻勢を強めていく。アンカー潰しに選手をぶつけてくる作戦は今後もやられるのだろうなと。それでも、カメルーンの攻撃は特攻がメインなので、分厚い守備を形成する日本の守備網に引っかかっていくばかりであった。なので、イドリスとジェレミが出てくる。パワープレー要因が登場。なので、日本も理不尽な負担を強いられていた松井と大久保を交代し、守備要員を投入。FWが守備要因って面白い話だけど。

　で、あとは耐えしのびながら、たまに攻撃を仕掛けていく日本。また、時間をかせぐために要所で潰れ役を担う本田。本田がかつての師匠ばりにファウルで時間を稼いでくれたことは日本にとって大きいと思う。ただ、審判がかなり日本の意図通りに笛を吹いてくれたことも見逃してはいけないかなと。たまに、ファウルを取ってくれない人もいるだろうし。

　4年前を思い出すパワープレーの連続だったが、中澤と闘莉王を中心にがんがん跳ね返す日本。周りの選手もセカンドボールに集中していたことで、日本は相手の攻撃を冷静に跳ね返し続けることに成功した。その中で、強烈なミドルがバーにあったたのは幸運だったと思う。途中でエトーがフリーダムな動きを見せて怖さを証明するが、シュートは日本の体をはったDFの前にふさがれてしまう。

　こうして日本は1-0で勝利をすることに成功。まずは日本を驚かすことに成功した。次はオランダである。この相手に何かをしでかせば、世界を驚かせることにも成功するだろう。そのためには、カメルーン戦とは異なる戦い方を選択する必要があるだろう。それについては後日に考える時間があったらいいな。

　■独り言

　日韓戦を境に日本は監督が変わっているのと同じである。夢から目の覚めた岡ちゃんは言葉では夢みたいなことをまだ語っているような気もするが、ちゃんと現実を生きているのだなと。懐かしいチャンピオンシップのマリノス対浦和の試合や、先日のカタール戦で見せたように、現実的なサッカーを選択すれば、かなり恐ろしいものを見せてくれることを、この試合で証明した。過程はめちゃくちゃだったが、あの過程がなければ、ここにたどり着くことはできなかったんだろうな、この人は、、と思う今日この頃でした。

・記事をブログで読む