[前編の続きから] 試合終了後のロッカールームから出てくるル・マンの選手たちは、苛立ちや落胆を隠すことが出来ない様子だった。そんな中、松井が姿を見せた。日本人記者が囲む。「0−2となった時点で勝てると思っていたし、本当に悔しい。失点をして衝撃を切り替えることができなかった。僕が3点目を外してしまったことも大きい」

 唇を噛んだ。04−05シーズンにル・マンに移籍加入し、1部昇格に貢献した松井は、05−06シーズンも果敢に戦った。05年秋にはジーコジャパンにも招集され、ハードなプレーにも動じない強さを魅せた。

 しかし、目標だったドイツワールドカップメンバーには残れず、迎えた06−07シーズンは、なかなか本調子を出せずに、苦しんだ。ベンチ入りすら出来ない試合も少なくなかった。「カウンター攻撃ばかりで、なかなかボールを触れない。自分の頭上をボールが越えてばかり……」とチームの戦術への不満をもらすこともあった。ましてやその戦術では結果も出ていなかったのだから、松井の不満にも納得が出来る。

 06年春に見た試合では、絶好の位置にポジションを取る松井に対して、パスがでることもわずかで、アフリカ系の選手が個人技で突破しては、相手DFにつぶされるシーンばかりが目立っていた。しかし、今回見たル・マンでは、松井のボールタッチ数は格段に増え、得意の個人技でリヨンDFを翻弄するシーンもあった。左アウトサイドでスタートしたポジションも試合中に右アウトサイドへ変えたりと運動量が増えた松井は、相手の嫌がるスペースを見つけては顔を出し、攻撃のアクセントとなっていた。

 ル・マンのサッカーが変わり、松井は活きていた。チーム内でもベテラン組に入る松井は、精神的な強さも感じさせてくれた。ル・マンは契約の延長を望んでいるという。それはル・マンの戦力として欠かせない存在ということの証でもある。
[後編に続く]