航空業界にはアライアンスという航空会社同士のグループがあり、日本のANAやJALもそれぞれのグループに加盟しています。加盟する航空会社はグループ内で業務提携やマイルサービスの連携などをしていますが、そもそもどのような経緯で生まれ、なにを目指すのでしょうか。

そもそもアライアンスとは?

 航空会社専用ラウンジの利用や優先搭乗など、その恩恵に与れるマイレージサービス。マイレージサービスは加盟するアライアンスが同じ航空会社であれば、同様のサービスを受けることができるため、アライアンスを基準に利用する会社を選ぶ人も多いと思います。

 そもそも、アライアンスとは何でしょうか。


スターアライアンス塗装のシンガポール航空機(石津祐介撮影)。

 アライアンスとは、航空会社間の連合組織で、別名「航空連合」とも呼ばれています。1990年頃から、コードシェア便やマイレージサービスの共有化など航空会社同士の業務提携が行われてきましたが、航空業界での規制緩和や競争の激化により世界的な規模でグループ化が進み、現在では大きな枠組みとして3つのアライアンスが結成されています。

 最も歴史が古いのが、1997(平成9)年5月に結成されたスターアライアンスで、ルフトハンザ航空(ドイツ)、ユナイテッド航空(アメリカ)、エア・カナダ(カナダ)、スカンジナビア航空(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク)、タイ国際航空(タイ)の5社によって設立されました。現在は28の航空会社が加盟しており、世界約190か国で、約1300か所の空港、4657機の航空機を運用し、1日あたり約2万1000便を飛ばす世界最大のアライアンスです。


スターアライアンス塗装のユナイテッド航空機(石津祐介撮影)。

ワンワールド塗装のフィンランド航空機(石津祐介撮影)。

ワンワールド塗装のキャセイパシフィック航空機(石津祐介撮影)。

 次いで、1999(平成11)年2月にアメリカン航空(アメリカ)、ブリティッシュ・エアウェイズ(イギリス)、キャセイパシフィック航空(中国)、カンタス航空(オーストラリア)、カナディアン航空(カナダ)の5社によってワンワールドが設立されます。現在、15の航空会社が加盟し、世界約150か国で、992か所の空港、3324機の航空機が運用されています。

アライアンスの始まりとは?

 2000(平成12)年6月には、デルタ航空(アメリカ)、エールフランス(フランス)、アエロメヒコ航空(メキシコ)、大韓航空(韓国)によってスカイチームが設立されます。現在、20の航空会社が加盟し、世界約187か国で、1064か所の空港、2,819機の航空機が運用されています。

 日本の航空会社では、ANA(全日空)が1999年にスターアライアンスに、JAL(日本航空)が2007(平成19)年にワンワールドへ加盟しています。


1999年にスターアライアンスに加盟したANA(石津祐介撮影)。

2007年にワンワールドに加盟したJAL(石津祐介撮影)。

 現在はこの3大アライアンスが世界の航空連合の主流を占めますが、1989(平成元)年にKLMオランダ航空(オランダ)とノースウェスト航空(アメリカ)が結成した国際的な提携が、今日のアライアンスの始まりと言われています。

 2社間でコードシェア便による共同運航や設備の共有、ビジネスクラス「ワールドビジネスクラス」の統一、株式の持ち合いなど様々な提携を行い、成功を収めました。その後、コンチネンタル航空(アメリカ)も加わり、アリタリア航空(イタリア)も参加を表明し「ウイングス・アライアンス」の設立を目指しますが、運航方針の違いでアリタリア航空が脱退しスカイチームへ加盟した事などもあり、2004(平成16)年にはKLMオランダ航空とノースウェスト航空、コンチネンタル航空もスカイチームに参加し、アライアンスは消滅しました。


アライアンスを結んだKLMオランダ航空とノースウェスト航空が、それぞれ片面ずつに塗装された記念塗装機(画像:スカイチーム)。

「ウイングス・アライアンス」以外にも1992(平成4)年にスイス航空(スイス)が中心となって設立された「クオリフライヤー」がありましたが、加盟していたサベナ・ベルギー航空(ベルギー)の倒産やスイス航空の経営悪化により消滅しました。

LCCにもアライアンス? 今後の展望は

 主要な航空会社が加盟するアライアンスですが、実は格安航空会社、いわゆるLCCにもアライアンスが存在します。2016年5月に、スクート(シンガポール)やノックエア(タイ)などアジア地域6カ国、8社のLCCが加盟してバリューアライアンスが設立され、日本からバニラ・エアが参加しています。

 共通のマイルサービスやラウンジはありませんが、付帯サービスや、それぞれ個別に予約が必要だった路線をまとめて一括購入できるなどのサービスを展開しており、今後、ますます増え続けるであろうLCCの新たな展開として注目されています。


LCCの航空連合、バリューアライアンスに加盟しているバニラ・エア(石津祐介撮影)。

 最近では、アライアンスをまたいだ業務提携の動きも見られます。

 2016年にANAはベトナム航空(ベトナム)との間に資本と業務提携を結んでいます。ベトナム航空はANAとは異なるアライアンスのスカイチームに属していますが、コードシェア便の運航やマイル加算を行っています。

 また、中東のドバイに拠点を置くエミレーツ航空の「スカイワーズ」やアブダビに拠点を置くエティハド航空の「エティハドエアウェイズパートナーズ」など、3大アライアンスに加盟せず、独自のアライアンスを持つ航空会社もあります。


独自のアライアンスを展開するエティハド航空(石津祐介撮影)。

 利用者側もさる事ながら、航空会社にとってもメリットのあるアライアンス。今後、この枠組みが新たな再編を迎えるのか、さらなる新しい連合が誕生するのか気になるところです。

【写真】成田空港のJALサクララウンジを利用するには


成田空港のJALサクララウンジ利用資格を得る方法のひとつとして、JALが加盟するワンワールド各社の上級会員になる、という手段もある(画像:ワンワールド)。