画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●銀行の街からベンチャーの街へ

かつて、大手町や丸の内といったビジネスの中心ともいえる地区は、銀行の“天下”だった。こうした地区に本店・支店をかまえていなくては“銀行にあらず”といった雰囲気すら漂っていた。だが、この“銀行天下”は、バブル崩壊で一変する。

バブルの崩壊は、銀行の統廃合を急速に推し進めた。当然、銀行の数が減れば大手町・丸の内地区のオフィス需要は減衰し、ビジネス街としての価値は下がってしまう。三菱地所はこの難局に、レストランや高級ショップを迎え入れることで対応した。結果、ビジネス街としての大手町・丸の内は風貌が変わり、ショッピングやデートスポットとしても楽しめる街になった。

ちなみに三菱地所は、大手町・丸の内・有楽町にある120棟以上のビルのうち、約30棟ものビルを所有・管理する“大地主”ともいえる存在だ。同社では大手町・丸の内・有楽町、いわゆる“大丸有”地区を“丸の内”地区と呼んでいる。本稿でもそれにならってこれらの地区を丸の内地区とする。

○レストランやショップの増加で休日も楽しめる街へ

さて、高級ショップやレストランのほかに、三菱地所が注力したのがベンチャーの育成。2000年11月にベンチャー支援組織「丸の内フロンティア」を立ち上げ、イベントや勉強会などを通じ、企業同士の交流を図った。この動きはやがて「東京21cクラブ」という、会員制ビジネスクラブへと発展する。

ベンチャー向けのオフィススペースの提供も進められた。2007年には新丸の内ビルディングに「EGG JAPAN」を、2016年7月には大手町フィナンシャルシティ グランキューブに「グローバルビジネスハブ東京」をオープンした。

つまり、前者はオープンから10年、そして後者はオープンから1年を迎えたことになる。

●ベンチャーと大企業の協業を促進

東京21cクラブのネットワーキングパーティは、毎年2回行われているが、こうした節目も重なったため、非常に熱気あふれるものになった。

会の冒頭にあいさつに立った三菱地所 執行役社長 吉田淳一氏は、「4,300社、28万人ものビジネスパーソンが集まる丸の内地区は、まさにビジネスの集積地」と前置きし、「ベンチャーと大手企業を結びつけるのに、これほど適した地区はない。また地下鉄やJRなど交通が集約しており、さまざまな場所に移動しやすいのも魅力」と話した。

東京21cクラブのネットワーキングパーティに初めて参加したが、吉田社長の話を裏付けるかのように、多くのベンチャー、そして大企業からの参加者が集まっていた。

また、吉田社長は「弊社もベンチャーと協業することで、さらなるイノベーションを生み出したい」と意欲をみせた。

○ベンチャーをテーマにした基調講演やトークセッション

そのほか、ネットワーキングパーティでは、セールスフォース・ベンチャーズ 日本代表 浅田慎二氏による基調講演が行われた。浅田氏はCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)運営時のポイントなどについて語った。CVCでは「トップのコミットメント」「専門組織・専門人材」「権限付与(スピード)」が大切だとした。特に「ベンチャーは動きが早い。古くならないうちに投資を行うことが肝要」とスピードの重要性を強調した。

また、Tech In Asia 日本支社代表 ディビット・コービン氏をモデレータに、ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏、Rapyuta Robotics 共同創業者兼COO Arudchelvan Krishnamoorthy氏によるトークセッションも行われた。テーマはベンチャーと大企業の協業についてだ。

これらのキーノートやセッションを聴いているうちに、以前取材したある大企業役員の言葉を思い出した。「新規事業を立ち上げる際、ベンチャーの“アイデア”“早さ”“小回り”に頼らざるをえない」ということだ。ベンチャーは、まさにビジネスの主役ともいえる存在ともいえる。

ネットワーキングパーティ後半ではお酒がふるまわれ、参加者たちが懇親を深めていた。ひょっとしたらひょっとすると、“新たな協業の芽”が生じたかもしれない。いや、動きの早い彼らのことだ。きっと新事業の芽がこの場で生じたにちがいない。